屋根裏部屋の影 – Wikipedia

屋根裏部屋の影』(やねうらべやのかげ、原題:英: The Shadow int the Attic)は、アメリカ合衆国のホラー小説家オーガスト・ダーレスによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つ。

ハワード・フィリップス・ラヴクラフトとの死後合作というスタイルをとっている。1964年のアーカムハウスの単行本『August Derleth ed. Over the Edge』に収録された。

東雅夫は、本作品を同工異曲的なパターン作品と評するも「主人公の恋人の女性が積極的に怪異に立ち向かうという展開は、ラヴクラフト作品では考えられないことだろう」と述べている[1]

あらすじ[編集]

アイルズベリイ・ストリートの屋敷に独居するウライア・ギャリスンは、親族からも忌まわしく思われていた。ウライアはわたしの大伯父にあたるが、わたしの父や叔母は、大伯父に逆らった末に不可解な死を遂げている。そのウライアが亡くなり、遺言には相続人としてわたしが指名されていた。土地と財産を相続するにあたって大伯父が添えていた条件は「死後一年目の夏の3ヶ月間、屋敷に住むこと」。わたしは結婚を控えており、土地や家具類を売却して新生活の資金にしたい。3ヶ月という期間も博士論文を書くには丁度いいと判断し、滞在することを決める。翌日、婚約者のローダがやって来て、屋敷が薄気味悪いと感想を述べる。ローダを泊めた夜、わたしは屋敷内で女の気配を感じ取る。翌朝ローダに問い詰められ、気のせいではなかったと判明するも、誰なのかわからない。大伯父の家政婦だろうかと疑うも、雇い主が死んだことを知らないはずもないだろうと、わたしとローダはいぶかしむ。ローダは不吉を感じ取り、一緒に帰ろうと言い出すが、わたしは断る。

大伯父の禁断の屋根裏部屋に入ってみたところ、女の衣服とゴム製の仮面があり、天井と壁には「歪んだ人型に見える跡」がみられ、また赤い線で奇怪な模様が書かれていた。理論的を自認するわたしは、調べてみようと決意する。近隣住民に大伯父の家政婦について尋ねてみたところ、どこから通って来ていたのか誰も知らず、大伯父が屋敷に住みこませていたのだと思われた。大伯父の所有していたオカルト本には、憑依や転生などについて記されており、わたしはいかにも死の差し迫った老人らしいと感想を抱く。

一方ローダはボストンのワイドナー図書館に出向いて妖術について調べており、わたしに電話をかけてきて、すぐに家を出るべきだと警告してくる。彼女の話によると、屋根裏部屋の影は、穴からやって来た異界のものが焼き付けたシルエットなのだという。馬鹿馬鹿しい。

夜になると、わたしは大伯父の幻覚か幽霊のようなものが見えるようになってくる。また台所には邪悪な目をした家政婦がおり、彼女は20年以上前に見たことがある家政婦と同一人物としか見えなかった。死んだ大伯父となんらかの関わりを持ち、今もなお屋敷にいて務め事をしている彼女は何者だろうか。また屋根裏部屋の鼠穴から謎の青い光が漏れ出てきている。ようやくわたしは、頭では屋敷を離れるべきだと悟るも、わたしに流れる血の呪縛がわたしを屋敷にとどめようとする。説得にやって来たローダを、わたしは帰ってくれと冷たく突き放す。

そして再び夜になると、青い光が射し、女と大伯父が見えるようになり、わたしに向かって何か蛇のようにのたくる物が伸びてくる。絶体絶命の正にそのとき、煙の臭いと炎の燃え盛る音が響き、窓の外からはローダがわたしを呼ぶ声がする。幻覚は消えた。ローダが立てかけた梯子を伝うことで、わたしは焼け落ちる屋敷から無傷での避難に成功する。遺言は履行され、わたしは地所を相続して売却し、ローダと結婚する。ローダは、大伯父が妖術でわたしの肉体を奪おうとしていたのだと言う。わたしは、女ならではの妄想を根拠に火を放った彼女に半ば呆れつつも、彼女の考えよりも合理的な説明がつけられないことを悩ましく思う。

主な登場人物[編集]

  • アダム・ダンカン – 語り手。英語学科の助教授。己が理論的であることを誇りに思っている。
  • ローダ・プレンティス – 婚約者。言語・考古学の講師。ウライアの悪霊がアダムを狙っていると結論付ける。
  • ソルトンストール – ウライアの顧問弁護士。
  • ウライア・ギャリスン – 大伯父。世捨て人の秘密主義者。アーカムのアイルズベリイ・ストリートの築200年の屋敷に住み、屋根裏部屋を自分の特別な部屋として用いていた。
  • 家政婦 – 夢魔。20年前から姿が変わらない。
  • 「屋根裏部屋の影」 – 謎のシルエット。

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 学研『クトゥルー神話事典第四版』454ページ。