旧車會 – Wikipedia

ナンバーを隠し集団で群れながら走行する。
大きな騒音を撒き散らしながら走行する

旧車會(きゅうしゃかい)とは、旧車と呼ばれる古いオートバイを入手して昔の暴走族を模した改造を施し、コールと呼ばれるエンジンを高回転でリズミカルに空ぶかしさせる行為や、ミュージックホーンと呼ばれる複数の警笛装置を組み合わせたラッパを鳴らしながら集団走行などを行う団体。「」の字に旧字体である「」を用いることが多く[1][2][3]、クラシックカーや旧型のオートバイなどを愛好する旧車とは意味合いが異なる[1][2][3]#「旧車会」との混同節を参照)。

旧車會は従来の未成年者が主体となる暴走族よりも平均年齢が高く、普段は会社員など仕事をしている傍ら休日に朝から集まることが多いため、ヘルメットを装着しない等のノーヘル運転や、信号無視などの交通違反を堂々と行うことはないものの、路上でコールやラッパを鳴らしながら迷惑運転を繰り返す傾向がある。これはノーヘル運転や信号無視等のあからさまな暴走行為を行わない限り共同危険行為として警察に検挙され難くする為の工作である[4]

旧車會に集まる車両の多くはマフラーを消音効果が少ない大きな音がする物に交換または改造されていたり、ナンバーを見え難く隠蔽する等の暴走族と同様の改造が施されていることが多い[5]。コールやラッパ等の騒音に対する近隣住民の苦情や公共の駐車場等を長時間占拠する等の行為から、警察へ110番の通報が入る場合も多い。警視庁では当初は共同危険行為の有無と、他者へ直接の危害を与えない年齢層から大目に見られていた時期もあったが、苦情が多く寄せられるにつれて、たとえヘルメットを着用していても、目に余る迷惑運転を行う者に対しては暴走族と同様に共同危険行為として取り締まるケースが見られるようになった。旧車會イベント時の大規模な集団になるとパトカーが付き添う形で監視する場合が多い。近年では一斉検問を行う等の取り締まりも見られ、警察でも暴走族の一形態として取り扱われるようになってきている[6][7]

旧車會は主に成人した大人で構成されており、未成年の暴走族とは違い、集団走行は主に週末や休日の真昼に行われる事が多い[8]。当初は少年期に暴走族経験のある成人が主体となっていた。近年ではネットが普及した事で地元のチーム形式ではなく県外からも広く仲間を募る事が多くなってきている。近年では顔見知りでない者と一緒に走行する事も珍しくはなく、少年期に暴走族経験のない参加者も存在する[8]

また一部の旧車會は、違法走行を行わないことを装いながら、警察の目の届かないところでは、暴走族と変わらない違法走行を敢行している者もいる。そのほかに、最近は改造車両が参加する大規模な集会が、広場や商業施設等の駐車場で管理者の許可無く行われている場合もあり、警視庁は旧車會に対しても暴走族と同様に取り締まりを強化する様になってきている[9]

縮小傾向にある国内のオートバイ事情に活気をもたらすのではないかと期待する声もある[8]が、道路交通法違反(料金所の突破[10]や迷惑走行[11]など)で逮捕される事例も発生している[12]。暴走族OBである旧車會メンバーが、後輩である現役暴走族メンバーに指示を出していた事例も確認されており[12]、暴走族との関連は深いという指摘もある[12]

2005年の時点で全国に約200団体[12]、2011年の時点では約650団体があり[10]、増加傾向にある[10]。旧車會の摘発事例は2015年には1771件に及んだ[11]。そして、検挙件数の推移に関しては、統計がある2014年以降は、2015年まで増加していたが、2016年以降は減少傾向にある[13][14]

人数に関しては、警察白書より違法行為を敢行する者として警察が把握した数で、2020年時点で5,583人であり、統計がある2011年の7,033人をピークに2015年~2017年の間に増加していた時期を除き、減少傾向である[13][15]

メディアによる報道[編集]

2011年2月、改造バイクに乗り、集団で高速道路の料金所を突破したとして、大阪府警高速隊は1日、道路整備特別措置法違反(料金所突破)容疑で、バイク販売修理店経営(34)=大阪市東淀川区大道南=と、生コン会社員(27)=大阪府岸和田市八阪町=の両容疑者を逮捕した。2人はそれぞれ元暴走族で、改造した旧型バイクを連ねて走る「旧車會」のメンバー[16]

2011年10月、旧型のバイクなどの車両を不正に改造し、休日などにツーリングと称して集団を走行する「旧車會(きゅうしゃかい)」と呼ばれるグループのうち、千葉県浦安市内を拠点としていた2輪車の旧車會「都會(みやこかい)・絆」と「ドラちゃん一家」の解散式が30日、市川市の行徳署敷地内で行われた。旧車會は各地に存在するが、解散式を行うのは珍しい。 双方の一部のメンバーが共謀して複数件の自動車保険金詐欺事件を起こしたことから、解散を決めた。解散式では、絆のリーダー(67)が「不正改造や爆音走行などの不法行為をやめ、社会に貢献することを誓う」と話した。[17]

2014年9月、大阪府内の飲食店従業員の女(39)=恐喝罪で有罪確定=はバイクで爆走する音泥棒麗心愚(おどろぼうれいしんぐ)のグループの集団走行に10代の娘と一緒に参加し、グループのメンバーとともに大阪府茨木市のファミリーマートに立ち寄った。そこでメンバーの男が、持ち込んだ容器に無料で水を入れるよう要求し、店長と口論になった。容疑者達は「謝って済むもんちゃうで」「こんな店、潰してしまったらええやん」と罵声が倉庫内に響き、店長らは何度も土下座を強要させられるコンビニ土下座強要事件が起こった。「うちの若い衆が店に車突っ込む言うてんで。知らんでー」と脅しその場に有ったタバコ6カートン(2万6700円相当)を脅し取り、さらに別の男がコンビニを管轄する営業所長に示談金名目で金銭を要求し恐喝は長時間にわたり続いた。店員に缶コーヒーを投げつけ暴行する様子や仲間達が恐喝する様子は携帯で動画撮影されており、それが動画サイトにアップされた事により事件が発覚。公判での供述などによると過去にも別のコンビニで妻の肩にぶつかった詫び料としてクオカードを受け取ったこともあった。かつてコンビニで賞味期限切れの食品を購入して体調を崩した旨を伝えたところ、現金10万円を受け取ることができた経験を思い出した。経営者の立場から店側の態度がおかしいと思った。200万~300万円は受け取れると思ったと供述[18][19]

2014年12月、コンビニの店員に土下座を強要したとして、北海道警釧路署は12月29日、釧路市に住む38歳の男3人、21歳の女1人を逮捕した。発表によると4人は12月28日午前5時5分ころ、釧路市武佐1丁目にあるコンビニエンスストア「セブンイレブン釧路武佐1丁目店」で、セルフサービス式のドリップコーヒーを購入。そして、10代の女性店員に操作を依頼しましたが、女性店員がホットコーヒーを出したところ「アイスコーヒーを頼んだだろ!」などと激怒、容疑者らはその後も因縁をつけ、最終的に「若いやつ何十人も連れてくるわ」などと脅して土下座を強要。この際、約25分間にわたり正座を強要しており、容疑者らが土下座をさせている時に訪れた客が騒動に気付き、近所の住民を通じて110番通報したことで事件が発覚。容疑者はFacebookに大量の写真を投稿しており、中には旧車會のメンバーと思われる人物らとツーリングに行っている様子も多く含まれていた。[20]

2015年6月、旧車會、昭和倶楽部(しょうわくらぶ)が初日の出暴走と呼ばれる、元旦に初日の出を目指し集団で暴走行為をしたとして、警視庁交通執行課は1日、道交法違反(共同危険行為)容疑で、埼玉県狭山市根岸の会社員(40)ら男3人を逮捕した。同課によると全員容疑を認め、容疑者は「若いときの暴走行為が忘れられない。パトカーに追われて昔の血が騒いだ」と話しているという。20kmほど逃走するも自分のバイクから漏れたオイルで滑って転倒し身柄確保された[21]

2017年7月、千葉県警交通捜査課は27日、オートバイで集団をしていた「旧車會」のグループをヘリで追跡、神奈川県に住む男3人を道交法違反(共同危険行為)の疑いで逮捕した。県警によると、逮捕されたのは川崎市幸区、内装工の男=当時(40)=と同、会社役員の男=同(40)、横浜市鶴見区、会社役員の男=同(37)。県警は昨年12月18日午前、神奈川県からアクアラインを通って走行してきた37台を県警航空隊のヘリで富津市の富津竹岡インター付近から約10分間にわたって追尾。10時35分ごろから1分間、同市の国道127号で並進走行、蛇行運転などを繰り返した疑いで、3人を今年6、7月に逮捕した。同課によると、上空からカメラの映像などを使用して違反事実や車体の特徴、着衣を特定。地上の捜査でオートバイのナンバーを把握し、逮捕につなげた。木更津簡裁は同日までに、3人に罰金30万円の略式命令を出した。いずれも既に納付され、同課は捜査を終結した。[22]

2017年10月、旧車會、気分爽快軍団(きぶんそうかいぐんだん)を名乗るオートバイグループが集団暴走したとして、神奈川県警は3日、防水工(21)=大阪府東大阪市=、無職(37)=横浜市泉区=、塗装業(40)=茨城県取手市=の3容疑者を道路交通法(共同危険行為等の禁止)違反の疑いで逮捕したと発表した。容疑者らは暴走行為の様子を自ら動画撮影しツイッターに投稿していた事により事件が発覚[23]

2018年10月、暴走族の新旧リーダーが、ドスを利かせ、知人男性のAさん(21)を脅した。容疑者の暴走族「国心会」現リーダー(24=東京都調布市)と、前リーダー(31=同稲城市)が21日、恐喝の疑いで警視庁に逮捕された。Aさんは「旧車會」と呼ばれる旧式の自動車やバイクを愛好するサークルで容疑者と知り合い、一緒にツーリングをする仲だった。当時、Aさんは調布市内の飲食店でアルバイトをしていた。その店を訪れた容疑者の知人に「彼(容疑者)と一緒に走ったよ」事を話したという。Aさんは暴走族には入っておらず、国心会がどうのとチラつかせるつもりは全くなかった。ところが、この知人が容疑者に「Aが国心会のヤツらと走ったと自慢してたよ」し話した事から容疑者が逆上。無断で国心会の名前を使われていると勘違いし、調布市内の公園にAさんを呼び出した。容疑者と一緒にいた初代リーダーの容疑者はAさんに詰め寄り、「テメエ、勝手に国心会を名乗ってんじゃねえぞ!」と言い放ち「ボッコボコ」か「カネ」か「入会」を迫った。Aさんは泣く泣くカネを払うことを選択。昨年9~10月にかけ、3回に分けて現金計15万円を脅し取られたという[24]

2021年12月30日午前1時頃、圏央道の高尾山トンネルで、2人乗りで蛇行運転をしていたバイクが転倒、後続の車が女性(20代)をひいた。この事故により、女性は意識不明の重体となり、バイクを運転していた男(50代)は重傷を負った。バイクの後方で車を運転していた男(20代)が、過失運転致傷の現行犯で逮捕された。警察によると、3人は旧車會のメンバーだった[25]

人気の高い車種[編集]

主体となるのは暴走族全盛期に流行った1970年代から1980年代に製造されたオートバイ、特にカワサキ・Z400FX、KH250・400、スズキ・GT380、GSX250E・400E、ホンダ・CB400TホークII、CB400NホークIIIなどである[8]。なかでもホンダ・CBX400F、スズキ・GS400Eは最も人気がある車種であり、販売当時の新車価格をはるかに上回る高値で取引されるため盗難被害率が高く、ホンダ・CBX400Fについては盗難保険の加入を拒否されたことで話題となった。

こういった旧車と呼ばれる古い時代の希少車をベースに、マフラー、三段シート、ロケットカウル等を装着し個性的な“族車”に改造して使用される[8]

「旧車会」との混同[編集]

旧車会」と呼ばれる古い自動車やオートバイを愛好する一般の集まりとは、旧車を用いる点では共通するものの、旧車は暴走族や不良を意識した集団であり、一般のオートバイ愛好家から成る旧車とは異なる。両者は旧字のと新字のの使い分けで区別される[1][2][3]。ただし旧車のことを「旧車」と表記する報道(例えば[12][26])も見受けられ、こうした漢字の使い分けによる区別が広く徹底されているわけではない。一般人の旧車が混同されて迷惑に感じていると報じられており[12]、旧車の側で名称を変更するケースも見られる。

関連項目[編集]

  • チャンプロード – 暴走族・旧車會を主に取り扱う専門雑誌。誌名で直接的に「旧車會」を謳った別冊ムックも刊行している。
  • 旧車会 – 「旧車會」以前より存在する旧車の愛好家の集まり。
  • 旧車 – クラシックカー・ビンテージカー・絶版車などとも呼ばれる古い車両。オートバイだけでなく自動車も含めて呼ばれる。

外部リンク[編集]