福井鉄道株式会社(ふくいてつどう、FUKUI RAILWAY Co.,Ltd. )は、福井県越前市に本社を置き、福井県内でバス、鉄道などを運営している企業である。福鉄と略される。 2009年2月に国の「鉄道事業再構築実施計画」の第1号認定を受け[3]、現在、活性化・再建を進めている。営業収益(売上高)で見れば、運輸事業ではほかの多くの地方ローカル私鉄と同様、鉄軌道事業部門より自動車事業(特にバス事業)部門の営業収益の方が多くなっている。直近の平成23年度(2012年3月期)決算によれば、自動車事業部門の営業収益が福鉄単体で見れば約75%[4]となっているのに対し、鉄軌道事業部門が占める売上割合は、福鉄単体で見ると約23%[5]である。 鉄軌道事業は1963年以降赤字が続き、バス事業や不動産事業などで上げた利益により赤字を補填する形で維持してきたが、規制緩和による貸切バス事業における他社との競争の激化、長引く不況による出控えなどによりバス事業部門の採算が悪化、バス事業部門自体が赤字となり収益構造に問題を抱えることとなった。福井鉄道は平成19年度末(2007年3月期)ですでに累積損失約22億円、累積債務約30億7000万円を抱えていたが、国は都市銀行の準拠する基準を国内基準から国際基準に切り替えるために会計制度を変更、福井鉄道はそれに伴う減損会計の導入により、線路用地が“赤字を生む資産”として評価替えを義務付けられた結果、新たに9億7000万円の減損損失を計上することになった。これは貸借対照表では、固定資産の減少とその見合いによる累積損失の増加で、借入資本・負債が相対的に大きくなることを意味する。それにより、「経営上の重大な疑義が生じた」との判断がなされ福井鉄道へのこれ以上の銀行融資が困難になった。 2007年9月、福井鉄道は、自主再建は困難とし、県、沿線3市に支援を要請した。同月、県は、沿線3市、福井鉄道、株式の33%を保有する名古屋鉄道(名鉄)に呼びかけ、「福井鉄道福武線存続協議会」を設置、2007年2月、「第5回福井鉄道福武線存続協議会」において県は福武線の存続スキームを提示した。「福井鉄道福武線存続協議会」において存続スキームへの検討が進む一方で、連合福井の地域協議会(当時の鯖丹地域協議会・南越地域協議会)が自治会組織(鯖江市区長会連合会・越前市区長会連合会)やNPO等に勉強会開催の呼びかけを行ったことが起点となり、合意形成が進められていったが、2008年3月、鯖江市区長会連合会の呼びかけで沿線3市住民代表が合同会議を開催、続いて「福井鉄道福武線の存続に向けた沿線三市住民レベル合同会議」が開催され、3市で合同のサポート団体を立ち上げていくことで合意した。2008年3月の「第6回福井鉄道福武線存続協議会」では福井銀行がオブザーバーとして参加し、債権放棄はしないもののつなぎ融資を実行することを明言した。 2008年5月、「第7回福井鉄道福武線存続協議会」において、上下分離方式による再建スキームでの路線維持存続方針が確認され、沿線3市は「福井鉄道福武線活性化連携協議会」(法定協議会)を設置した。また、沿線3市で、それぞれの市を事務局とするサポート団体が設立され、2008年6月には3市のサポート団体による「福井鉄道福武線サポート団体等協議会」が設立されている。2008年11月25日に開催された福井鉄道の臨時株主総会では、福井銀行出身で元福井鉄道顧問の村田治夫が新社長に選任された[7]。これらを受け、2008年12月29日、昭和30年代以来福井鉄道の株式を保有していた名鉄が「福鉄が1株を新規発行しこれを10億円で引き受ける」という形の第三者割当増資を引き受けた上で、増資された1株を含む保有全株(合計24万6,899株)を地元自治体の出資するTMOや3市のサポート団体、商工会議所等へ1株1円で全面譲渡し、経営から撤退した[8][10]。 地元資本・地元出身経営陣による経営体制が確立した一方で、2009年2月24日には、国土交通省に申請していた「鉄道事業再構築実施計画」[3][11][12]が地域公共交通活性化法に基づき全国初の認定を受けた。この計画は、安全対策の強化(各種設備の維持・改修・更新)、営業強化・ソフト面での利便性向上(運賃や運行形態の見直しなど)、ハード面での利便性向上(新駅設置やパーク・アンド・ライド促進に向けた駐車場促進に向けた駐車場設置など)の3点を目標の柱に掲げ、10年間というスパンで輸送量増加と経営改善を目指すものである。本計画では、施策実施に必要な財政支援策も併せて示され、総額55億2,700万円の財政支援が必要と算出された。その内訳については、沿線3市による鉄道用地の取得費が12億円、設備更新の費用が10年間で計31億2,700万円、設備の維持修繕費が10年間で計12億円とそれぞれ見積もられており、このうち土地取得費については県と沿線3市が、設備更新費については県と法定協議会が、維持修繕費については沿線3市がそれぞれ分担して負担することが決まっている。また、設備更新費のうち10億円が国庫からの補助金によって賄われること、固定資産税の優遇措置を受けること[13]もあわせて決定した。 財政面での裏付けを得て再構築計画は着々と進められており、特に営業施策の強化や利便性向上策が大きく進められている。営業施策については企画乗車券の発売やイベント列車の運行、沿線自治体と連携した観光客誘致策や地元住民の利用促進策に多数取り組んでいるほか、利便性向上策については新駅4駅の設置、パーク・アンド・ライド(P&R)駐車場の設置・拡大を進めている[12]。このうち新駅については、2009年度(2010年3月25日)にスポーツ公園駅が、2010年度(2011年3月20日)には泰澄の里駅と清明駅がそれぞれ開業しており、P&R駐車場についても「全区間あわせて393台」という増強目標に対し、2012年4月時点で387台にまで増強が進んでいる。また、鉄道設備の更新については、信号保安設備や線路設備の更新が徐々に進められている[14][15]ほか、車両面では4編成の新型車両の導入が盛り込まれ、2016年度までに導入された[16]。 こうした様々な施策もあり、2008年度(平成20年度)に160万5千人であった乗車人員数は、2014年度(平成26年度)では193万4千人へと20%増加している[12]。 2016年(平成28年)3月27日には、「フェニックス田原町ライン」として福井鉄道福武線越前武生駅とえちぜん鉄道三国芦原線鷲塚針原駅との間で、田原町駅を介して相互直通運転を開始した[17][18][19]。同時に、福井駅前電停への支線を福井駅西口広場まで延伸し同電停を広場に移設した[17][18]。狭い電停の拡幅改修、PTPS(公共交通優先信号)の設置も進められた。 なお、えちぜん鉄道との相互乗り入れ計画開始当初は、直通区間を福井市内で完結する形態となる、福武線の浅水駅 – 鷲塚針原駅間で福井鉄道車両のみの片乗り入れとする計画であったが、福井鉄道側の施設面やダイヤ面、および旅客の利便性を向上させる目的から、当初計画を変更し、起点の越前武生駅からの直通およびえちぜん鉄道側も車両を用意しての相互直通運転とした。一方で、えちぜん鉄道側は、相互直通列車の折返し駅は当初の計画通り鷲塚針原駅のまま(ただし厳密には一度西長田駅までの直通に計画変更をしたものの、再度の計画変更で当初計画に戻った)としたため、えちぜん鉄道直通列車はあわら湯のまち・三国港方面には設定されていない[21]。 また福井県議会では、福井鉄道とえちぜん鉄道、ならびに北陸新幹線の開業にともない西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線が経営移管される福井県並行在来線準備の3社での経営統合も含め、福井県内の第三セクター鉄道3社のありかたについて検討している[22][23]。2020年6月には、線路の保守にかかわる資材および工事を福井鉄道とえちぜん鉄道が共同で発注することについて合意が成立していることが報道された[24]。 1945年(昭和20年)8月1日 – 福武電気鉄道株式会社と鯖浦電気鉄道株式会社が合併、福井鉄道株式会社が設立。 1948年(昭和23年)8月
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