県域放送 – Wikipedia

県域放送(けんいきほうそう)とは基幹放送の種別の一つである。

文言としては、総務省令放送法施行規則第60条に基づく別表第5号の表の第8項放送対象地域による基幹放送の区分(3)にある。定義は、同表の(注)11に「一の都道府県の区域又は二の県の各区域を併せた区域における需要にこたえるための放送」とある(北海道・東京都・京都府・大阪府の各域それぞれのみを放送対象地域としている場合でも県域放送と呼ぶ)。

地上基幹放送の内、中波放送(AM放送)、超短波放送(FM放送)及びテレビジョン放送(TV放送)で規定されている。

県域放送が生まれた理由[編集]

「政府専掌」の下、事実上の“国営放送”だった「社団法人日本放送協会」(NHK)が放送を独占し続けた結果は悲惨なものであり、太平洋戦争直後の1945年(昭和20年)9月、「平和国家日本を建設するために、民衆による民衆のための民放ラジオを役立てよう」という「フリー・ラジオ」宣言がされ、まず東京、大阪そして名古屋に始まったこの動きはまたたく間に日本全国に広まっていった。全体主義の撲滅こそが日本の民主化に不可欠、その最先鋒を担った「国家広報機関」としての放送は解体されなければならず、すでにこの時点で米国に倣ったローカル放送体系、つまり都道府県単位の放送の考え方が生まれていた。連合国最高司令官総司令部(GHQ)の日本の放送政策方針が揺れ動いたため実現への道のりは平坦なものではなかったが1947年(昭和22年)10月16日、GHQは「日本の放送に対する連合軍司令官からの最終的示唆」を通達、すなわち日本の放送はNHKと各民放の自由競争によるものとすることが通達され、1950年(昭和25年)の電波三法成立にそのまま反映された。そして1954年(昭和29年)12月までに民間中波放送38局が独立ローカル、すなわち県域放送局として開局した[1]

県域放送の是非[編集]

県域放送の根本的精神は現在でも変わらないが、当初から現実的問題について是非がある。

まずは、全国一斉に伝えなければならないニュースである。これに対応するためテレビ・ラジオともにネットワーク体制が構築された。しかし放送事業者によって通常でも放送時刻、時間、報道内容などに違いが生じ、さらに地震や災害などの臨時ニュースの場合にはなおさらである(FM局では報道部門がない社がほとんどで、必然的にニュース情報は系列の地方紙や共同通信・時事通信の配信に頼らざるを得なくなる)。

次に「資金」である。放送対象地域が狭く、かつマスメディア集中排除原則によって資本構成が規制されているため資本が過小であり経営基盤が脆弱である[2]。地域によっては資本が集まらないために系列局そのものが開局できないか、仮に系列局ができたとしても中継局を開局できないため結果として情報格差が発生している[注釈 1]。さらに放送対象地域が狭いため広告収入も限られ、キー局からの「ネット料」と呼ばれる補助金で赤字を補填している局が多い[2]

また番組編成権、つまり何を放送するのかは放送局の最も重要な権利、すなわち自主権であるがそれは逆に必ずしも全ての視聴者の需要に沿うものにはならないことを意味する。各地域で民放数に違いがあることにも問題がある。そのため、例えばサッカーワールドカップ予選やプロ野球日本シリーズなどのスポーツビッグイベントなどを視聴できない地域があるという問題などもある。また、民放テレビ局が5局揃っている地域でも在京局の番組がすべて放送されるわけではない。

事業者一覧[編集]

総務省告示基幹放送普及計画第3基幹放送の区分ごとの放送対象地域及び放送対象地域ごとの放送系の数(衛星基幹放送及び移動受信用地上基幹放送に係る放送対象地域にあっては、放送系により放送をすることのできる放送番組の数)の目標第2号国内放送に関する基幹放送の区分ごとの放送対象地域及び放送対象地域ごとの放送系の数の目標に基づき、県域放送を実施する地上基幹放送事業者について示す。

日本放送協会[編集]

ラジオ第1放送(AM放送)、FM放送(FM放送)及び総合テレビジョン放送(TV放送)で実施される。太字は、各地方の拠点となる放送局。

北海道ブロック[編集]

東北ブロック[編集]

関東甲信越ブロック[編集]

東海北陸ブロック[編集]

関西ブロック[編集]

中国ブロック[編集]

四国ブロック[編集]

九州沖縄ブロック[編集]

民間基幹放送事業者[編集]

民間基幹放送事業者とは、NHKおよび放送大学以外の基幹放送事業者のことである[4]

ラジオ放送[編集]

同一都道府県内において同一周波数帯を利用した放送局は2局までであり3局以上の例は現存しない[注釈 11]

テレビジョン放送[編集]

配列にはデジタル放送におけるリモコンキーIDの順。

県域放送をする民間基幹放送事業者が存在しない県[編集]

ラジオ放送[編集]

  • 茨城県
    • AM局の茨城放送が存在し、逆にFM局が関東地方で唯一存在しない。

テレビジョン放送[編集]

  • 茨城県
    • 関東地方の各県と異なり、独立局も存在しない。

関連項目[編集]

注釈
  1. ^ 平成新局にその傾向が強く、特に北海道にあるテレビ東京系列のテレビ北海道(TVh)はアナログ放送において北海道東部をカバーすることができなかった。地デジも当初北海道東部はカバーされる予定がなかったものの2010年(平成22年)末に総務省による「後発民放局支援スキーム」が許可されたため、北海道東部でもカバーされることになった。
  2. ^ 東京を親局とする関東広域圏内であり、県域放送を行っていない。
  3. ^ 2004年(平成16年)10月より実施。
  4. ^ 2012年(平成24年)4月より実施。
  5. ^ 協会の行う総合放送の関東広域圏には、茨城県、栃木県及び群馬県を含まないものとする。[3]
  6. ^ 名古屋を親局とする中京広域圏内であり、県域放送を行っていない。
  7. ^ 告示基幹放送用周波数使用計画により、滋賀県と京都府には中継局用周波数が割り当てられており、ローカルニュース等一部の放送のみ事実上、県域放送として実施されている。
  8. ^ 大阪を親局とする近畿広域圏内であり、県域放送を行っていない。
  9. ^ 北九州局は基幹放送用周波数使用計画において中継局とされており、ローカルニュース等ー部を実施するのみである。
  10. ^ a b c d FM補完中継局制度開始前からFMを使用する中継局が存在する。
  11. ^ エフエム沖縄の前身・極東放送はAM放送局であり、1984年(昭和59年)9月まで沖縄県にはAM放送局が3局存在した。
出典