許萬元 – Wikipedia
許萬元(ホ・マノン、허만원、1933年-2005年8月25日) は、朝鮮済州道出身の弁証法研究者。立命館大学文学部教授。 東京都立朝鮮人高等学校在学中、林光徹校長にすすめられ、中央大学文学部哲学科で学び、東京都立大学 (1949-2011)大学院人文科学研究科で寺沢恒信教授を指導教員として学び、1968年博士課程修了。文学博士(東京都立大学)。東京都立大学では初めての哲学分野での文学課程博士であった。在日朝鮮人として初の東京都職員として東京都立大学助手になる。1983年に立命館大学へ。趣味は囲碁。 弁証法を三つの法則 (「量から質への転化、またはその逆」・「対立物の相互浸透」・「否定の否定」)に集約する見方(唯物弁証法)や正反合の図式を批判し、弁証法の本質論として、内在主義・歴史主義・総体主義の三位一体論を提起した。 許萬元の弁証法の理論には次のような特徴がある。 1 弁証法の三大特色 ヘーゲルが弁証法の創始者としてゼノン・ヘラクレイトス・プラトンをあげていること(『哲学史講義』)に着目して、ヘーゲルは出自の異なる三つの弁証法(内在的弁証法・生成の弁証法・総体性の弁証法)を一つに統一したと考え、弁証法の三大特色として、内在主義・歴史主義・総体主義を指摘した。 内在主義とは対象を自己運動として把握すること、歴史主義とは過程・否定性に真理をみること、総体主義とは有機的体系・肯定性に真理をみることである。三つの特色はヘーゲルにもマルクスにも共通するが、内容は異なっている。 2 弁証法の二大機能 「論理的なものの三側面」の規定(ヘーゲル『小論理学』)に着目して、弁証法の二大機能として、理性の否定作用と理性の肯定作用を指摘した。理性の否定作用が歴史主義の原理である。また、理性の肯定作用が総体性の原理である。 3 矛盾論 概念の自己運動と矛盾の同等性を主張し、矛盾に2種類あることを指摘した。否定的理性の必然性にもとづく「闘争矛盾」と肯定的理性の必然性にもとづく「調和矛盾」である。 4 ヘーゲルとマルクスの弁証法の違い ヘーゲルとマルクスの弁証法の違いは、観念論か唯物論かという前提だけでなく、内的な構造にも違いがあることを指摘した。前提の違いは、内在主義の内容の違いに対応する。内的構造の違いは、歴史主義と総体主義の統一の仕方の違いに対応する。
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