就労継続支援 – Wikipedia

就労継続支援(しゅうろうけいぞくしえん)とは、援助付き雇用のひとつであり、一般の企業・公益法人などの団体に就職することが困難な障害者に障害者総合支援法を根拠として提供される[1]

本事業は都道府県知事による指定制となっており、指定された事業所には、市町村により政令で定められた額の介護給付費、訓練等給付費が支給される(法29条)。これら事業所数は15,368箇所、利用者数は308,672人ほど(2018年3月の国民健康保険団体連合会の支払いデータによる)[2]

事業所(作業所)は、大きく「A型事業所」と「B型事業所」とに分かれているが、基本的なコンセプトは、障害者に最終的には一般企業・団体での就労を目指すことを念頭に置き、就労に際して必要な最低限のスキルや技能を身に着けることを目的とする。

決定的な違いとしては、事業所の企業・団体との雇用契約の有無であり、A型事業所は求人者(利用者)と事業所がパートとして雇用契約が締結されるため、各都道府県が定める最低賃金の給与が保証される(障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準78条)。対してB型事業所は事業所との雇用関係はないが、事業所から給与に代わる作業費用(工賃、最低月額3000円)を受給して就労を行う(障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準87条)。

障害者総合支援法第5条14
この法律において「就労継続支援」とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。
施行規則 第6条の10
法第五条第十四項 に規定する厚生労働省令で定める便宜は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める便宜とする。
一  就労継続支援A型 通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
二  就労継続支援B型 通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援

これら事業所の管理者は、社会福祉主事相当、もしくは社会福祉事業に二年以上従事した者、企業経営経験者などに相当すると認められる者でなければならない(政令基準72, 88条)。さらにA型の場合は、事業者は社会福祉法人もしくは専ら社会福祉事業を行う者でなければならない(政令基準77条)。

  • 障害福祉サービス支給の要否は市町村が判断し、支給決定の判断がなされると市町村は福祉サービス受給者証を交付する(法22条)。利用者はサービスを受ける際には福祉サービス受給者証を提示しなければならない(法29条の2)。また地域によっては市区町村の保健福祉課への書類提出が必要なものもある。
  • A型事業所
    • 一般の企業や団体への就労は困難だが、事業所との雇用契約(パート)を結び、かつ継続的な就労が可能な、原則として利用開始時に18歳以上65歳未満の者。
    • 大きく、就労移行支援事業(求職者支援訓練)、あるいは特別支援学校・学級を利用し、卒業後就職活動をしたが企業・団体との雇用に至らなかった者や、企業・団体との一般就労をした者で、現在雇用関係がない者などがあげられる。
    • なおA型事業所は、最大10名までのB型受給者に対し、雇用契約を結ばずA型サービスを提供することができる(政令基準73, 77条)。
  • B型事業所
    • 利用できる者は基本的にA型事業所に同じであるが、就労移行支援事業などを活用し、B型の利用が妥当と判断された者。
    • 及び一般の企業・団体やA型事業所による雇用機会提供の場が乏しい地域や就労移行支援事業者の少ない地域にて、地域協議会等からの意見により、一般就職が困難と居住市区町村(区=東京都区部、政令指定都市の行政区)が判断した者(但しこれは2015年3月31日までの暫定経過処置による)。[3]

この作業所を利用するにあたっては、就労サービスの一部を、原則1割自己負担してもらう「利用者負担料」と呼ばれるものがあり、利用者の所得に応じて利用料の負担額が定められている(法29条)。
ただ全員に負担料を求めるというものではなく、収入が少ない世帯や、生活保護受給を受けている世帯に対して、負担を少なくするように配慮されている。
(世帯の範囲・18歳以上の障害者:障害者本人と、その配偶者)一般には、生活保護、並びに市区町村税の非課税対象者で低所得者には利用料負担が無料であり、それ以外は所得割16万円を満たない者は9,300円、それ以上は37,200円を給与から天引きする。[4]

精神科医の樺沢紫苑は「作業所(事業所)に行きたくありません。何かアドバイスをお願いします」という精神疾患の患者の質問に対して「作業所に楽に通える人は作業所に通わなくても良いレベル」としつつ「作業所に行きたくない状況の人が行くからこそトレーニングになる」「朝起きて作業所の時間に間に合うように行くのは社会復帰の訓練」「作業所に通えないようでは社会復帰は無理」と話している[5]

安易な参入と事業停止、大量解雇問題[ソースを編集]

A型は各都道府県の最低賃金が給料として利用者に支払われていた。利用者一人に対し、事業所は自治体から補助金を受け取っている。国、都道府県、市町村からの補助金を給料に転用し支払っていることが常態化していたが国はこの体質を是正し、「給料は事業所の利益から支払う」という規制を強化した。これにより、給料が最低賃金を支払うところまでいかず、岡山県倉敷市、広島県福山市、愛知県名古屋市などで200人前後の利用者を解雇する事態が続発した[6]。大量解雇まで行かなくとも給料の予算を十分確保できなくなったことを理由に勤務時間数を大幅に減らした事業所も相当数出現した。

基本的に休日は月8日以内(年間96日)と定められており、一般的な企業よりかなり少ない[注 1]

注釈[ソースを編集]

  1. ^ B型事業所の利用者は休日に関する相談は可能。

出典[ソースを編集]