石見陽 – Wikipedia

石見 陽(いわみ よう、1974年3月9日 – )は、日本の実業家、医師(循環器内科医)、医学博士。メドピア株式会社創業者・代表取締役社長 CEO。現在14.4万人の医師(国内医師の約4割)が参加する医師専用コミュニティサイト『MedPeer』を運営[1]。信州大学医学部卒業、東京女子医科大学大学院医学研究科修了。千葉県佐倉市出身。

人物・来歴[編集]

幼少期・学生時代[編集]

千葉県佐倉市生まれ。成田高等学校・付属中学校(私立中高一貫校)[2]を経て、信州大学医学部卒業[3]。医師になろうときめたのは、高校1年か2年の時期。2つ上の兄の存在が大きかった。兄は群馬大学の医学部に現役で入学しており、母方は医師家系だった。祖父は足立区で開業医をしていて、昔から医師という職業は身近な存在だった[4]

大学時代、それまで人が大勢住んでいる関東にいたので、信州での生活には戸惑いがあったという。地方の狭い世界にいるということに加えて、当時は他の大学の医学生との交流もなく、閉じられた世界であった。そのようなタイミングで世の中ではインターネットが急速に進化し始め、パソコンの進化に多く触れている世代ということが大きかった。パソコン好きもあいまって在学中から独学でホームページを制作したり、早くからSNSの走りのようなことに興味を持っていた[3]

医局時代[編集]

1999年(平成11年)東京女子医科大学病院循環器内科学教室入局。2000年(平成12年)東海大学で血管の再生医療の研究に取り組む。東京女子医科大学大学院医学研究科進学後、東京女子医大事件が発生し患者が急減したため臨床を離れ別の大学院でマウスの実験に従事した[3]。若手医師のネットワーク「ネット医局」を設立[1]

大学院博士課程に進んで少し時間の余裕ができ、いろいろな異業種交流会に出席するようになった。もともと好奇心が旺盛だったので、医学とは異なる業界の人たちと積極的に会い、話をする経験を通じて多くの刺激を受けた。また当時は、法改正で株式会社の設立手続きが簡素化され、所謂 「1円起業」 が流行っていた。「自分もまずは何か事業をやってみよう」と決心し、ネット医局のメンバー有志と2004年(平成16年)メディカル・オブリージュ(現メドピア)を設立し、同社取締役に就任。医師の仕事を続けながら、医師人材紹介関連のスモールビジネスを始めた。当時の事業内容はインターネットによる医師紹介会社の一括登録サービスで、転職を希望する勤務医に対して、病院毎に履歴書を作成しなくてよいという利便性を提供し、人材紹介会社に対しては、転職したい医師の情報を提供してフィーを頂くというビジネスモデルだった[5]

2005年(平成17年)メディカル・オブリージュ(現メドピア)代表取締役社長に就任。東京女子医科大学大学院医学研究科修了、博士(医学)[3]

2007年(平成19年)8月、医師専用コミュニティサイト『Next Doctors(現MedPeer)』開設。日本の医師の約4割が参加する医師集合知プラットフォームへと成長させる[3]

サイト開設に踏み切ったのは、日本のソーシャルメディアの運営企業の上場にも背中を押された。医師限定版のコミュニティサイトがあれば、たくさんの医師をサポートできることを思いついた。石見自身、SNSで医師のコミュニティに入っていたが、コミュニティに参加する際、医師免許を確認していなかったため、一般の人も参加するようになり、次第に医師以外のユーザーも参加して患者さん側から医師側への質問が増え、医師同士のちょっとした情報交換や専門的な相談等がやりにくくなっていた[6]

患者さんの症状によっては複数の医療分野にまたがる知識・経験が必要だが、その頃は診療科目を越えて医師同士が相談できる場所があまりなかった。一人の医師は決して万能ではなく自分の専門外の領域では他の医師の意見を聞きたいもの。また医師の世界特有の「閉塞感」にある種の問題意識を感じていた。医師同士の交流は限られた現実空間だけで、世の中の人が何を考え、どのような暮らしをしているのかさえなかなか分からない。臨床医として現場に立つと、どうしても見る世界、感じる世相は限られてしまう。こうした現状に加え、その当時、世間では医療訴訟の増加が社会問題ともなっていた。医療訴訟に関する報道がなされるたびに、医師や医療の体制には批判が集中。この問題の根底にも医師の世界特有の閉塞感が深く関係していると確信するようになる。そして医師になってから5年後に現在のメドピアを立ち上げ、その3年後に基盤事業である医師専用コミュニティサイト『Next Doctors(現MedPeer)』の運用をスタートさせた[3]。会社としても、転職意向を持つ医師だけを相手にするビジネスから、医師全体にサービスを提供する、より大きなビジネスへの転換点だった[5]

『メドピア株式会社』時代[編集]

2009年(平成11年)MedPeerの医師パネルを活用した医師リサーチサービスを開始。2010年(平成22年)社名を「メドピア株式会社」に変更[1]

当初は単一の掲示板機能のみだったが、より建設的な議論や有益な意見交換が活発に行われるよう、事務局側から 「切り口」 を提供していく事にした。会員投稿型のアンケート調査 「ポスティング調査」 の運用をスタートしたところ、このサービスを利用する会員が増えた。そこで新たに、薬という切り口を提供し、薬剤処方実感の定量・定性的なクチコミ評価を共有できる 「薬剤評価掲示板」 を作る。これは日本で唯一のサービスであり、ユーザーの満足度も高い人気コンテンツとなる。次に症例という切り口で大学や病院の垣根を越え、オンラインで全国の医師の知見が共有できる「インタラクティブ・ケース・カンファレンス(症例検討会)」、各分野のエキスパートに相談できる 「Meet the Experts(症例相談)」 を始める。当初からあった掲示板も会員が自由にテーマを決めて議論できる 「ディスカッション」 というサービスに進化。更には、医師の労働環境・キャリア形成という切り口で、医師向けに 「ホスピタル・レポート(勤務先病院評価)」、医学生向けに 「レジデント・レポート(臨床研修指定病院評価)」を運用し、従来提供していた人材紹介サービスは 「MedPeerキャリア(医師の転職、アルバイト情報)」 として継承した。いずれのサービスも、会員である医師は全て無料で利用する事ができる[5]

2014年(平成26年)6月、東証マザーズ市場へ上場。2015年(平成27年)より、ヘルステックにおける世界最大規模のグローバルカンファレンス「HIMSS & Health 2.0」を日本に誘致して主催[3]。2016年(平成28年)医師等医療関係者の認証サービスを提供する「株式会社medパス」を設立。医療相談サービス「first call」を運営する株式会社Mediplatを子会社化。「ダイエットプラス」を運営する株式会社フィッツプラスを子会社化。2018年(平成30年)スギホールディングス・スギ薬局から約7億円の出資を受ける。同年、WedPeer内に医師向けのインターネットテレビ「MedPeer Channel」を開局[1]

2019年(令和元年)EPSホールディングス取締役に就任[7][8][9][10][11]

2020年(令和2年)東京証券取引所市場第一部に市場変更[3]

現在も医療の最前線に立つ。

  • 趣味が読書。中高一貫校に入学したことで高校受験が必要なくなったことで得た時間を読書に充てた。歴史小説が好きで、司馬遼太郎などの戦国や江戸時代を描いた作品のほか、三国志や論語、老子といった中国が舞台になっている本を多く読んだ。小説を読んで歴史を追体験したり、人の見立てを知ったりすることが好きだった。特に『三国志』の劉備が好きで会社経営に役立てている[4][2]
  • 「理念と利益の最大化を」。ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー』や 渋沢栄一『論語と算盤』から学んだ。医師はなんとなくお金儲けというものに抵抗感を抱いている人が少なくない。当初は石見も医師限定のコミュニティを作ることだけに純粋な思いで突っ走っていた。理念を最大化すると儲からず、利益を最大限に追求すれば理念は追えないという思想だった。しかし、理念と利益を双方、追求する会社こそが安定し、継続的に成長すると、これらの本で学び、株式会社の真の意義を理解できるようになった。事業によってお金を集め、それを再投資し、理念を最大化していくというサイクル。これを続けていけば社会への貢献につながっていくのだと確信できた[3]
  • 仕事のミッションに「Supporting Doctors, Helping Patients.(医師を支援すること。そして患者を救うこと。)」を掲げる[4]
  • 母の家系に医師が多く、祖父も実兄も医師[6]
  • 『ハグレ医者 : 臨床だけがキャリアじゃない!』(日経BP、2013年9月20日) ISBN 978-4822261436 – 「医師向けSNSビジネスで革命を起こす」[12]
  • 『変貌する医療市場 : 研究・技術革新・社会実装』(かんき出版、2017年11月3日) ISBN 9784761272999 – 「ヘルステック企業メドピアの今後」[12]

テレビ[編集]

インターネット放送[編集]

雑誌[編集]

  • 『起・業・人』(週刊ダイヤモンド) – 医師5万人が参加する情報共有サイト”集合知”で医療の質向上に挑む[12]
  • 『メディカル朝日』(朝日新聞出版) – 内科医師 ネットを通じた医師の「集合知」で医療変革[12]
  • 『医薬マーケティング総合誌・月刊ミクス 』(エルゼビアジャパン) – 【特別座談会】医師と製薬企業とのコミュニケーションは新たなステージへ[12]
  • 『経済界』(フェイス出版株式会社) – FACE 経営者の肖像[12]
  • 『プレジデント』(プレジデント社) – 小さな兆候別「見逃すとヤバイ病気」トップ20[12]
  • 『臨床雑誌 内科』(南江堂) – 循環器診療から考えるこの国の医療の未来予想図[12]
  • 『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社) – キャリアプランの多様[12]
  • 『Medical communication』(日本ビジネス出版) – 医師・患者・企業をつなぎ、人生に沿うサービスを[12]
  • 『Modern physician』(新興医学出版社) – 医師起業家時代[12]
  • 『Visionと戦略 : 医療・福祉経営の新時代と人財を創る』(保健医療福祉サービス研究会) – 私のVisionと経営戦略[12]
  • 『月刊保険診療』(医学通信社) – 勤務医の本音からわかる医療機関の医師採用策[12]
  • 『国際医薬品情報』(国際商業出版) – 座談会 新時代のMR像を考える[12]
  • 『Journal of Tokyo Women’s Medical University』(東京女子医科大学学会) – 血管内皮前駆細胞の血管新生作用に対する水溶性スタチンの影響[12]
  • 『学会誌 日本血栓止血』(一般社団法人 日本血栓止血学会) – 血管内皮前駆細胞[12]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]