キモレステス目 – Wikipedia

キモレステス目(キモレステスもく、Cimolesta)は、哺乳類の絶滅した目の1つである。永らく系統不明であったいくつかの目を束ねるクレードとして1975年マッケナおよびベルによって設定された[2]

キモレステス目は極めて体型、歯式、生態の多様性に富んだグループであった。ただ概して言うならば、齧歯目、イタチ、オポッサムと表面的な類似が見られる(ただしこれらのうち系統的にいくぶん近いのはイタチのみである)。

歯式は基本的に、原始的な 3.1.4.3/3.1.4.3 を保っているが、パレオリクテス科では 3.1.3.3/3.1.3.3 に減っている[3]

含まれる亜目(あるいは目)は以下のとおり[1]。各グループに目の階級を与え、それらを束ねるクレードのキモレステス類には目から上目にかけての適当な階級を与える場合もある[4][3]

†ディデルフォドゥス類 Didelphodonta
虫食性の小動物。これには、キモレステス目の模式属であり、食肉目の祖先かもしれないキモレステス Cimolestes が含まれる。
†幻獣類 Apatotheria
齧歯目ないし食虫目に似た、虫食性の動物[2]。古い分類では食虫目または原真獣目。
†紐歯類 Taeniodonta
大きな鉤爪、長い杭状の歯を持っていた。雑食性、草(根)食性[5][6][2]
†裂歯類 Tillodonta
齧歯目に似た切歯を持ち、大型のものはクマ大に達した[5][6]
†汎歯類 Pantodonta
蹄を持った大型の草食動物。古い分類では肉歯目または原真獣目。キモレステス目から除外することもある[7]
†パントレステス類 Pantolesta
模式属のパントレステス Pantolestes は、イタチのような半水棲の肉食動物だった[5]。上図のコピドドンはパントレステス類に属する[2]
†プトレマイア類 Ptolemaiida
歯と頭骨の共通点からパントレステス類に含められていたプトレマイア科 Ptolemaiidae と、分類が不明だったケルバ Kelba 単型のケルバ科 Kelbidae からなる目[8]。おそらくパントレステス類に近縁[8]だが、(キモレステス目が属すローラシア獣ではなく)アフロテリアに属す可能性もある[8]
鱗甲類 Pholidota
センザンコウ科1科が現生する。キモレステス目から除外することもある[7]
†パレアノドン類 Palaeanodonta + †エルナノドン類 Ernanodonta
おそらく互いに近縁で[4]、有鱗類に近縁もしくは含められる[4][3]。ただし、異節類に近縁な可能性もある[4]。McKenna & Bell (1997) では、パレアノドン類は有鱗類に含められ、エルナノドン類はキモレステス目の下位に位置づけられていた。

有鱗類以外はいずれも新生代の前半に栄えた。ただし、中新世初期に東アフリカで絶滅したケルバ Kelba をキモレステス目に含めるならば、キモレステス目は白亜紀後期から中新世初期まで生き延びたことになる。

キモレステス目の群のいくつかは、かつては、うまく分類できない古生物をとりあえず所属させる「ゴミ箱分類群」としての旧食虫目や旧原真獣目に含められていた[3]

McKenna & Bell (2000) は翼手目をキモレステス目に加えた[5]が、分子系統により否定された。

この分類[4][3]では Cimolesta を中目 (mirorder) とし、その下位分類を目にしている。このソースに加え、プトレマイア目 Ptolemaiida を追加している[8]

  • キモレステス大目 Cimolesta

系統位置[編集]

キモレステス目はおそらく、広獣類[9]に近縁もしくはその祖先である[7]。つまり、肉歯目・食肉目(・鱗甲目)などがその子孫であろう。

そのほか、

  • 奇蹄目の姉妹群
  • 後獣類の基底に位置し、現生後獣類が放散する以前に分岐した[7]

という説もある。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b McKenna & Bell (1997) を基本としつつ Cote (2007) [別掲] にもとづきプトレマイア亜目を追加
  2. ^ a b c d 富田幸光著『絶滅哺乳類図鑑』丸善、2002年、ISBN 4-621-04943-7
  3. ^ a b c d e Rose, Kenneth D. (2006), “Cimolesta”, The Beginning of the Age of Mammals, Johns Hopkins University Press, ISBN 9780801884726 
  4. ^ a b c d e Rose, K.D. (2005), “Xenarthra and Pholidonta”, The Rise Of Placental Mammals: Origins And Relationships Of The Major Extant Clades, Johns Hopkins University Press, ISBN 978-0801880223 
  5. ^ a b c d 岩槻邦男・馬渡峻輔(監修)、松井正文(編集)『脊椎動物の多様性と系統』裳華房、2006年、ISBN 4-7853-5830-0
  6. ^ a b エドウィン・H・コルバート他著『コルバート 脊椎動物の進化(原著第5版)』築地書館、2004年、ISBN 4-8067-1295-7
  7. ^ a b c d Halliday, Thomas J.D.; Goswami, Anjali (2013), “Testing the inhibitory cascade model in Mesozoic and Cenozoic mammaliaforms”, BMC Evolutionary Biology 13 (79), doi:10.1186/1471-2148-13-79, http://www.biomedcentral.com/1471-2148/13/79 
  8. ^ a b c d Cote, Susanne; Werdelin, Lars; Seiffert, Erik R.; Barry, John C. (2007), “Ptolemaiida, a New Order of Mammalian-with Description of the Cranium of Ptolemaia grangeri”, Proc Natl Acad Sci U S A. 104 (13): 5510-5, http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/92/8/3269 
  9. ^ 食肉目、鱗甲目、†肉歯目を束ねるクレード。ローラシア獣上目#系統と分類の図も参照。