ヤマジノテンナンショウ – Wikipedia

ヤマジノテンナンショウ(学名:Arisaema solenochlamys)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草[3][4][5]

偽茎部はしばしば全体の長さの半分以下となることがあり、葉は2個つけ、仏炎苞舷部が仏炎苞筒部より短い。小型の株は雄花序をつけ、同一のものが大型になると雌花序または両性花序をつける雌雄偽異株で、雄株から雌株に完全に性転換する[3][4][5]

植物体の高さは70cmになる。偽茎部の長さは全体の高さの半分以下まで短くなるなるが、全体の高さに対して変異が大きい。偽茎や鞘状葉は淡緑色から淡紫褐色になり斑模様がある。葉は2個つき、形状はカントウマムシグサ Arisaema serratum に似るが、葉身は9-13小葉に分裂し、小葉は長楕円形で縁には不ぞろいな鋸歯があることが多い[3][4][6]

花期は5-6月で、葉と花序が地上に出て、葉が先に展開し仏炎苞は葉の展開の後に開く。ふつう花序柄は葉柄部より長いかほぼ同じ長さ。仏炎苞筒部は淡色で縦の筋が白く、やや太い筒状になり、仏炎苞口辺部はほとんど開出しない。仏炎苞舷部は三角状広卵形で、光沢がなく、ふつう外面が緑色でときに白色ぎみになり、内面はふつう紫褐色で白い筋があり、舷部内外の色の対比が明らかである。舷部外面の中央はドーム状に盛り上がり、舷部先端は短くとがるが、舷部は筒部より短い。花序付属体は基部に柄があり、棒状になって直立するが、ドーム状の仏炎苞舷部に隠れて目立たない。染色体数は2n=28[3][4]

分布と生育環境[編集]

日本固有種[5]。本州の中部地方から関東地方北部にかけての内陸部(長野県、群馬県、栃木県)に分布し、山地の林下に生育する[3][4]。東北地方南部(福島県)にも分布が確認されている[7]

タイプ標本の採集地は、長野県北佐久郡軽井沢町[1][6]

ギャラリー[編集]

ヤマザトマムシグサ A. galeiforme によく似るが、同種は、仏炎苞舷部の長さが仏炎苞筒部と同じかまたは長く、舷部は三角状卵形から広三角形で、ふつう紫褐色になるが、本種の仏炎苞舷部は筒部より短く、舷部外面が緑色、内面が紫褐色に対比的になることで区別することができる。同種は関東地方北部から中部地方東部にかけて分布し、本種と同所的に生育することがある[4][8]

  1. ^ a b ヤマジノテンナンショウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ ヤマジノテンナンショウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d e 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 (2018)、『日本産テンナンショウ属図鑑』pp.282-284
  4. ^ a b c d e f 邑田仁 (2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』p.105
  5. ^ a b c 『日本の固有植物』pp.176-179
  6. ^ a b F.Maekawa, Alabastra Diversa I., Arisaema solenochlamys, Botanical Magazine, Tokyo Vol.46, No.549, pp.565-566, (1932).
  7. ^ 邑田仁 (2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』PL.82-8
  8. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.198

参考文献[編集]

  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』、2015年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄著『日本産テンナンショウ属図鑑』、2018年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • F.Maekawa, Alabastra Diversa I., Arisaema solenochlamys, Botanical Magazine, Tokyo Vol.46, No.549, pp.565-566, (1932).