TFF3 – Wikipedia

TFF3またはトレフォイル因子3(英: trefoil factor 3)は、ヒトではTFF3遺伝子によってコードされるタンパク質である[5][6][7]

トレフォイルファミリーのメンバーは、少なくとも1つのトレフォイルモチーフを持つことで特徴づけられる。トレフォイルモチーフは約40アミノ酸からなり、3つの保存されたジスルフィド結合が存在する。トレフォイルファミリーは胃腸粘膜で発現する安定な分泌タンパク質である。機能は多様であり、粘膜の保護、粘液の増粘、上皮の治癒の促進などがある。TFF3遺伝子は小腸や結腸の杯細胞などさまざまな組織で発現している。TFF3遺伝子と他の2つのトレフォイルファミリーのメンバーの遺伝子は21番染色体にクラスターとして存在する[7]

糖鎖への結合[編集]

ヒトの3つのトレフォイル因子(TFF)はすべてレクチンであり、GlcNAc-α-1,4-Galの二糖に対して特異的に相互作用する[8]。この二糖は、粘膜の高度にグルコシル化されたムチンにのみ存在することが知られている糖鎖エピトープ(glycotope)である。TFFは2つの糖鎖エピトープに結合してムチンを架橋し、粘液の厚さと粘度を可逆的に調節する[8]

母乳[編集]

TFFは、TFF1英語版(gastric peptide)、TFF2英語版(spasmolytic peptide)、そしてTFF3(intestinal trefoil factor)からなる。TFFはムチン産生細胞から分泌され、口腔粘膜表面の完全性の維持とrestitutionと呼ばれる過程による胃腸粘膜の治癒の増強に重要な役割を果たしている。また、ヒトの母乳にもかなりの量のTFFが存在する。乳から単離されたTFF3とヒト腸管上皮細胞におけるIL-6およびIL-8のダウンレギュレーションとの強い相関関係の証拠が示されている。一方、TFF3は培養上皮細胞を活性化してβ-ディフェンシン2英語版(hBD2)とβ-ディフェンシン4(hBD4)の産生を引き起こす。これらの結果から、TFFは腸管上皮細胞を活性化し、ディフェンシンなどの自然免疫に関連するペプチドの産生を誘導することで、授乳中の乳児の免疫系に積極的に関与している可能性が示唆された[9]

PAR2受容体の活性化[編集]

PAR2の活性化には2つの主要な機構が記載されている。1つは、プロテアーゼによるPAR2のN末端の細胞外領域の特異的切断によって受容体活性化ペプチドを露出させ、露出したテザードリガンドと受容体本体との相互作用によって細胞シグナル伝達を引き起こすものである。もう1つは、SLIGKVなど、受容体に結合する合成ペプチドによって、プロテアーゼによる作用を模倣するものである[10]。授乳期間中、ヒトの乳に分泌されたTFF3はPAR2受容体を介して腸管上皮細胞を活性化することで、hBD2やhBD4の発現やサイトカインの調節を誘導している可能性がある[10]

臨床的意義[編集]

バレット食道の検出やスクリーニングの精度と許容性を向上させるため、摂取可能な食道サンプリングデバイス(Cytosponge)とTFF3を円柱上皮のマーカーとして利用した免疫細胞染色を組み合わせたプロセスが開発されている[11]。しかし、こうした検査の臨床的有用性は、胃の噴門部でTFF3が頻繁に染色されることや、それに伴う偽陽性のリスクという限界が存在する可能性がある[12]

関連文献[編集]

外部リンク[編集]

  • Overview of all the structural information available in the PDB for UniProt: Q07654 (Trefoil factor 3) at the PDBe-KB.