ウイルスタンパク質 – Wikipedia
わずか2つのタンパク質分子の複数コピーを使用してウイルスカプシドを構築する方法を示した図 ウイルスタンパク質(ウイルスタンパクしつ、英: viral protein)は、ウイルスの構成要素であると同時に生成物でもある。ウイルスタンパク質は、その機能に応じてグループ化されており、ウイルスタンパク質のグループには、構造タンパク質、非構造タンパク質、制御タンパク質、アクセサリータンパク質がある[1]。ウイルスは非生物であり、自力で繁殖する手段を持たず、代わりに、宿主細胞の資源に依存して繁殖する。したがって、ウイルスはそれ自体のウイルスタンパク質の多くをコード化せず、代わりに宿主細胞の機構を使って複製に必要なウイルスタンパク質を生成する[2]。 ウイルス構造タンパク質[編集] ウイルス構造タンパク質の多くは、ウイルスのカプシドとエンベロープを構成する成分である。 カプシド[編集] ウイルスの遺伝物質は、カプシドと呼ばれるウイルスのタンパク質構造の中に格納されている。カプシドは、ウイルスの核酸が宿主の酵素や他の種類の農薬や疫病によって分解されるのを防ぐ「盾」である。また、これには、ビリオン(ウイルス粒子)をその宿主に付着させ、ビリオンが宿主の細胞膜に侵入させる機能もある。カプシドを構成するのは、複数の異なるウイルスタンパク質、または1つのウイルスタンパク質の多数のコピーである。これらのウイルスタンパク質はそれぞれ、ウイルスゲノムの1つの遺伝子によってコード化されている。カプシドの構造により、ウイルスは少数のウイルス遺伝子を使用して大きなカプシドを作ることができる[3]。 複数のプロトマー(オリゴマー(ウイルス)タンパク質のサブユニット)が結合してカプソメアを形成し、カプソメアが集まってカプシドを形成する[1]。カプソメアは、二十面体、らせん状、または複合型カプシドのいずれかの形にまとめられるが、単純ヘルペスウイルスなど多くのウイルスでは正二十面体カプシドが形成される[2]。3つの非対称で非同一のウイルスタンパク質の単位は、正二十面体カプシドの20個の同じ三角形の面のそれぞれを構成している[2]。(上の模式図を参照) ウイルスエンベロープ[編集] 一部のウイルスのカプシドは、ウイルスエンベロープと呼ばれる膜に包まれている。ほとんどの場合、ウイルスエンベロープは、ウイルスが出芽と呼ばれるプロセスを通じて宿主細胞から出て行くときに、宿主細胞の細胞膜からカプシドによって得られる[4]。ウイルスエンベロープは、ウイルス糖タンパク質を含む、ウイルスタンパク質が埋め込まれた脂質二重層で構成されている[1]。これらのウイルス糖タンパク質は、宿主細胞の膜上にある特定の受容体や共受容体と結合し、ウイルスが標的となる宿主細胞に付着することを可能にする[1]。これらの糖タンパク質の中には次のようなものがある。 ウイルス糖タンパク質は、ウイルスと細胞の融合において重要な役割を果たす。ウイルス糖タンパク質が細胞の受容体に結合すると、ウイルスと細胞の融合が始まる[5]。 ウイルス膜融合タンパク質[編集] ウイルスエンベロープと細胞膜の融合には、高いエネルギーが必要である。ウイルス膜融合タンパク質は、この高いエネルギーの壁を乗り越えるための触媒として働く。ウイルス糖タンパク質が細胞受容体に結合すると、ウイルス膜融合タンパク質はコンフォメーション(立体配座)の変化を受ける。次に、このコンフォメーション変化は、ウイルスエンベロープ上の融合ループ(FL、fusion loop)や疎水性融合ペプチド(FP、fusion peptide)が細胞膜と相互作用することにより、ウイルスエンベロープの不安定化と細胞膜との融合を促進する。ほとんどのウイルス膜融合タンパク質は、融合後に、FL/FPと膜貫通ドメインがすべてタンパク質の同じ側にある、ヘアピン状の構造になる。 ウイルス糖タンパク質とその融合前後の立体構造により、さまざまな広範囲の構造コンフォメーションが発見されている。ウイルス膜融合タンパク質は、4つの異なるクラスに分類され、それぞれのクラスは特徴的な構造コンフォメーションによって識別されている。 クラスI: 融合後のコンフォメーションは、α-ヘリカルヘアピンの特徴的な三量体で構成される明確な中心コイルドコイル構造を持っている。クラスIウイルス融合タンパク質の例として、HIV糖タンパク質gp41が挙げられる[6]。 クラスII:
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