クレウーサ – Wikipedia
クレウーサ(古希: Κρέουσα, Kreoūsa, ラテン語: Creusa)は、ギリシア神話に登場する女性の名。この名前は「王女」を意味し、ギリシア神話には同名の女性が4人いる。長母音を省略してクレウサとも表記される。
ガイアの娘[編集]
ガイアの娘にあたるナーイアスのクレウーサは、河神ペーネイオスとの間にラピテース族の王[1]ヒュプセウスと娘スティルベー[2]、ダプネーを生んだ[3][4]。
ヒュプセウスはアステュアギュイア[5]、キューレーネー[6][7]、テミストーの父[8][9][10][11]。
スティルベーはアポローンとの間にラピテースとケンタウロスを生んだが[12]、ダプネーはアポローンの愛を拒んで月桂樹となった[13][4]。
クレオーンの娘[編集]
コリントス王クレオーンの娘クレウーサは、メーデイアと離婚したイアーソーンと結婚することになる。しかし、メーデイアは呪いをこめた衣裳をクレウーサに贈ることによって復讐を果たす。この呪いにより、衣裳はクレウーサの肉体に貼りつき、脱ごうとするやいなや彼女を燃やした。アポロドーロスの『ビブリオテーケー』などではグラウケーという名で知られる[14]。
エレクテウスの娘[編集]
アテーナイ王エレクテウスとその妻プラークシテアーの娘のクレウーサ[15]。姉妹たちはアテーナイを守るために死んだが、クレウーサは幼かったので助かった。クレウーサはクスートスと結婚し、息子アカイオスとイオーン[16]、娘ディオメーデーがいた[17]。
エウリーピデースの『イオーン』ではクレウーサは重要な登場人物で、アポローンとの間にイオーンを、夫クスートスとの間にアカイオスとドーロスをもうけた。アポローンをイオーンの父とする文献はこれのみである。
プリアモスの娘[編集]
プリアモスの娘クレウーサ[18]は、アイネイアース(ラテン語:アエネアース)の妻で、アスカニオス(ラテン語:アスカニウス)の母。ウェルギリウスの『アエネーイス』では、ギリシア軍によってトロイアが略奪されたさい、夫と我が子、アンキーセースとともにトロイアを脱出しようとするが、途中ではぐれて死ぬ。アイネイアースは無事に脱出したのち再びトロイアに戻り、クレウーサを探した。そこにクレウーサの霊が現れて語りかけ、新天地に向けて出港することを促して消える[19]。
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌14行。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻69・1。
- ^ オウィディウス『変身物語』1巻。
- ^ a b ヒュギーヌス、203話。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻69・3。
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌13行1-18行。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻81・1。
- ^ アポロドーロス、1巻9・2。
- ^ ヒュギーヌス、1話。
- ^ ヒュギーヌス、239話。
- ^ ヒュギーヌス、243話。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻69・1。
- ^ オウィディウス『変身物語』1巻452行-567行。
- ^ アポロドーロス、1巻9・28。
- ^ アポロドーロス、3巻15・1。
- ^ アポロドーロス、1巻7・3。
- ^ アポロドーロス、1巻9・4。
- ^ アポロドーロス、3巻12・5。
- ^ ウェルギリウス『アエネーイス』2巻673行-794行。
参考文献[編集]
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- ウェルギリウス『アエネーイス』岡道男・高橋宏幸訳、京都大学学術出版会(2001年)
- ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- ピンダロス『祝勝歌集/断片選』内田次信訳、京都大学学術出版会(2001年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
Recent Comments