ベクトル – Wikipedia
ベクトル(独: Vektor)またはベクター(英: vector)
ベクトルは ドイツ語: Vektor に由来し、ベクターは 英語: vector に由来する。物理学などの自然科学の領域ではベクトル、プログラミングなどコンピュータ関係ではベクターと表記される、という傾向が見られることもあるが、必ずしもそうとは限らない。また、技術文書などではしばしば古いJIS規格(旧・日本工業規格、現・日本産業規格)に準拠する形で[2]、長音符号を除いたベクタという表記が用いられていたが、JIS Z 8301:2005以降は長音符号を付けても省略してもかまわないとしており、ベクターという表記も増えている。
vector は「運ぶ」を意味するラテン語: vehere に由来し、18世紀の天文学者によってはじめて使われた[3]。
ベクトルは通常の数(スカラー)と区別するために矢印を上に付けたり(例:
)、太字で書いたりする(例:
)が、分野によっては矢印も太字もせずに普通に書くこともある(主に解析学)。
ベクトル、あるいはベクターに関する記事と用法を以下に挙げる。
数理科学[編集]
数学[編集]
数学・物理学[編集]
- (同じ言葉でも数学と物理学ではやや異なった意味で使われる場合がある。)
- 幾何ベクトル・空間ベクトル – 幾何学的空間における、大きさと向きを持った量。有向線分として捉えることができる。
- ベクトル積 – 数学的には、n 次元ベクトル空間において n – 1 個のベクトルに1つのベクトルを対応させる n – 1 項演算の一種。3次元の場合のみ二項演算となり「積」らしくなるので、3次元に限って「ベクトル積」と呼ぶ場合も多い。演算子に × を用いるので、クロス積とも呼ばれる。また、3次元では外積に一致するので、ベクトルの外積とも呼ばれる。
- 一階のテンソル – 線形性を持つ群が作用する空間(テンソル)[疑問点 ]のうち階数が 1 であるもの。群を行列で表示したとき、数ベクトルとして表現される。幾何ベクトルは[要校閲]、幾何的な回転操作に対してベクトルとして振る舞う。
- ベクトル場(数学)- 数学では、空間の各点がベクトル量を持つようなある種の関数。
- ベクトル場(物理学)- 物理学では、数学的な定義より限定的に、ある種の「場」を意味することがある(後述の「ベクトル粒子」を参照)。
- ベクトル解析 – ベクトルの演算記法を利用した解析学の方法。三次元空間または二次元空間上の問題を扱う際にしばしば利用され、電磁気学や流体力学など広い範囲で応用される。
物理学[編集]
コンピュータ[編集]
- 1次元の動的配列(コンテナ)として表現されるデータ構造。
- ベクトル演算 – 並列計算の手法。ベクトル演算の対象となるデータ構造をベクトルと呼ぶ。
- ベクトル計算機 – ベクトル演算が可能な処理系を指す。
- ベクトル化 – ループ処理をベクトル演算に変換すること。ベクトル計算機に対する最適化の目的で用いられる。他方2次元コンピュータグラフィックスの分野においては、点の集合で画像を表現したビットマップ画像を下記ベクター形式に変換する処理を指す。
- ベクトル型 – 主に2次元および3次元コンピュータグラフィックスのプログラミングにおいて、平面座標あるいは空間座標を表現するのに使われる固定長のデータ型。4次元ベクトル型は同次座標系での演算に使われるほか、4成分のRGBAカラーの表現に使われることもある。
- C言語やC++、C#では構造体やクラスを利用したユーザー定義型としてグラフィックスプログラミング向けの数学ライブラリに実装されることが多いが[4][5]、HLSLやGLSLといった各種シェーディング言語では、少なくとも2次元・3次元・4次元のベクトル型が組み込み型として用意されており[6][7][8]、行列型と組み合わせた同次座標変換のための演算子オーバーロードや組み込み関数も提供される。
- GPUはもともと、4次元ベクトル同士の演算をまとめて高速に実行する命令セットを持つ4-way SIMD型のプロセッサから発展した。
- OpenCLのカーネル言語では2次元・3次元・4次元・8次元・16次元の組み込みベクトル型が用意されている[9]。ベクトル型の演算にハードウェアアクセラレーションが利用されるかどうかは実装に依存する。
- ベクター画像形式 – コンピュータグラフィックス(CG)の形式。2次元CGをコンピュータ上で表現するデジタル画像データ形式の代表的な2つのうち1つ。各図形を表現するためのメタデータを記録する。例えば、円や矩形といった形状の種別や、大きさ、色、線の長さや太さ、方向、傾き、表示エリア内での位置座標などを基に表現する。対義語はラスター画像形式。
- 動きベクトル – 動画データの表現方法の一つ。フレーム間の移動量。
数理科学以外の用例[編集]
- 「空間における、大きさと向きを持った量」の意味から転じて一般的に、方向性、矛先などの意味でも使われる。例:好奇心のベクトルが伸びる。
- 三井生命保険の商標「ザ・ベクトル」、またマスコットキャラクター「ベクトルくん」
- セプティマ・ベクトル – 『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物。ホグワーツの教職員の一人。
- VECTOR (BLUE ENCOUNTのアルバム) – BLUE ENCOUNTのアルバム。
- ベクトル (PR会社) – 総合PR会社(東証上場企業)。
参考文献[編集]
関連項目[編集]
Recent Comments