ナス – Wikipedia

ナス

ナスの果実

分類
学名
Solanum melongena L.[1]
和名
ナス
ナスビ
英名
aubergine(英)
eggplant(米、豪)
brinjal(南アジア、南アフリカ)

ナス(茄子、茄、ナスビ、学名:Solanum melongena)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。別名ナスビともよばれる。インド原産で、淡色野菜として世界中で栽培されている。果実は黒紫色が多いが、色や形は様々で多数の品種がある。

クセのない味わいと、火を通したときのなめらかな食感が特徴で、品種によって様々な調理法があり、料理のジャンルを問わず使えるため、定番の野菜として欠かさないものとなっている[4]。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。

和名ナスの語源については諸説あり、実の味から「中酸実」(なかすみ)の略であるとする説[5][6]、夏に実がなるので「夏実」(なつみ)と読んだが、それが訛って「なすび」(奈須比)と呼ばれたとする説がある。室町時代頃に宮廷の女官が女房言葉として「おなす」と呼び[6]、その呼称が定着した。

英名はオーバァジーン(Aubergine)、またはエッグ・プラント(Egg plant)で、仏名はオーベルジーヌ(aubergine)、伊名はメランザーナ(melanzana)、中国植物名では(か)もしくは茄子(かし)の名で広く栽培される。「茄」は植物をさし、「茄子」は果実をさすともいわれている。

インドの原産。原産地など熱帯地域では多年草であるが、温帯地域では一年草として畑で栽培されている。

茎は黒紫色で、高さ60 – 100センチメートル (cm) になる。中には茎にトゲが見られるものがある。葉は互生し、葉身は卵状楕円形で、葉縁は波打ち、葉柄に近いところでは左右非対称になる。葉にはトゲがあり、毛が生えている。

花期は夏から秋で、葉腋と次の葉柄の途中に花柄を出して、紫色の花を下向きに1個から数個咲かせる。ひとつの花柄に複数の花が咲いても、基部の1個以外は結実しない。

果実は品種によって形も色も様々で、色はふつう紫色であるが、中には緑色、白色のものがある。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分にはトゲが生えているものがあり、鋭いトゲは鮮度を見分ける方法の目安となるが、収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。

ナスは寒さや乾燥には弱く、日当たりがよくて水を好む性質がある。

原産地はインドの東部が有力である。インドでは有史以前から栽培されていたと考えられている。その後、ビルマを経由して中国へ5世紀ごろに渡ったと考えられており、多くの変異が生じていった。ヨーロッパへは13世紀に伝わったが、もともと熱帯植物であったため、あまり普及はしなかった。東南アジアでは古くから栽培されており、日本では見られないような赤、黄、緑、白などカラフルで、形や大きさも様々な物が市場に並ぶようになった。

日本には7世紀から8世紀ごろに中国から伝わり、奈良時代から食されていたといわれ、東大寺正倉院の古文書で、「天平勝宝二年(750年)茄子進上」とあるのが日本最古の記録である。平城京の長屋王邸宅跡から出土した木簡に『進物 加須津毛瓜 加須津韓奈須比』との記述があり、高位の者への進物にナスの粕漬けが使われていたことが判明した。また、正倉院文書には「天平六年(734年)茄子十一斛、直一貫三百五十六文」をはじめとして多数の「茄子」の記述がみられる。元は貴重な野菜であったが、江戸時代頃より広く栽培されるようになり、以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった[15]。江戸時代の『農業全書』に「紫、白、青の三色あり、又丸きあり長きあり」の記述があり、この時代から多くの品種が栽培されていたことがうかがえる。

夏に収穫する野菜で、春の気温が十分暖かくなってきたら苗を植えて育てる。苗は、一般の種から育てただけのものと、接ぎ木苗があるが、耐病性に優れるのは接ぎ木苗の方である。栽培時期は晩春から秋まで(5 – 10月)で、栽培適温は15 – 28度とされる。早いものは初夏(6月ころ)から収穫が始まり、夏に切り戻せば秋まで実がなる。よい実を収穫するには、伸び始めのわき芽摘みと、夏場の水やりが重要になってくる。

連作障害が出やすいので、3 – 5年はナス科の野菜を作っていない畑で育てる。最低気温が15度を下回らなくなってから、地域の気候に適した品種の苗を植え付ける。乾燥を嫌うため、藁やビニールなどでマルチングをするとよい。苗が伸びてきたら、主枝とすぐ下の勢いがある2本の枝を残して育てる「三本仕立て」にするのが基本である。はじめの枝が伸びて枝が充実してくると、開花して実がつき始めるが、栄養分を奪われないように1番果は小さなうちに摘み取って、株を充実させる。気温が上がると、次々と実がなるようになるので、へたの上を切ってまめに収穫する。ナスは栄養をたくさん必要とする野菜で、栄養不足にならないようにこまめに追肥することが肝要になる。雨が降らないときには実がかたくなってしまうため、十分な水やりも必要になる。栄養状態がよいと枝先から少し離れて花がつき、雌しべが長い「長花柱花」がつくが、肥料が不足してくると、枝先に花が咲くようになり、雌しべが短い「短花柱花」が多くつくようになる。

真夏になると、枝が混み合い生長が鈍り、さらに枝の老化によって実付きが悪くなってくる。そこで、地面から高さの約2分の1くらいのところで枝を切り詰める切返し剪定(更新剪定)を行う。さらに肥料を水を十分与えておくと、新しい枝や葉が伸びて、約1か月後に再び実がつき10月ごろまで「秋なす」を収穫できるようになる。

病虫害[編集]

ナスの代表的な病気に、葉が緑色のうちに急激にしおれてしまう青枯れ病があり、梅雨明けから夏に発生しやすい。連作障害が出やすい植物なので、同じナス科のトマトやジャガイモ、ピーマン植えた場所では4 – 5年ほど空けなければ、土壌伝染する病気になりやすい。ネギやニラなどネギ属植物を畑にメリットがある植物を混植しておくことで、これら病気を防いだり害虫よけの効果が期待できる。同様にコンパニオンプランツとして、マリーゴールドは土中のセンチュウ駆除や他の害虫よけ、バジルやナスタチウムはアブラムシをつきにくくする効果が期待できる。

品種は数が多く、産地によっても様々で、日本では概ね70種類ほどある。世界では1000種類もあると言われている[24]

賀茂茄子などの一部、例外もあるが、日本においては南方ほど晩生の長実または大長実で、北方ほど早生の小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。日本で一般に流通している品種は中長品種が中長ナスである。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白[注 1]・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。

形状・色[編集]

  • 小丸ナス(小ナス) – 皮がやわらかく、種子が少ないのが特徴。在来品種では、京都の椀ぎ(もぎ)、東北の民田(みんでん)、山形の出羽がある。
  • 丸ナス – 扁球形の果実は、皮がかためで果肉が緻密なのが特徴。煮崩れしにくく、田楽などに使われる。信越地方、関西。京野菜の賀茂なすがよく知られる。
収穫期の丸ナス。ヘタ部分にはトゲが有る。
  • 卵形ナス – 関東一円で多く出回る品種。代表種は「真黒」(しんくろ)で、現在は流通していない。
  • 千両ナス – 卵形ナスと中長ナスの交雑による改良品種。ヘタの近くまで濃い紫色になる。関東を中心に東日本で出回る。
  • 中長ナス – 流通量が最も多い品種。皮・果肉ともやわらかく調理法を選ばず使える。
  • 長ナス – 果実の長さが20 – 30 cmあり、果肉がやわらかいのが特徴。やや水分が多く、調理法は蒸したり、焼いたりしたり、塩揉みに向く。西日本の「津田長」「博多長」、東北の「仙台長」「南部長」などがある。洋種では「ブルネット」など。
  • 米ナス(べいなす、アメリカなす) – アメリカ品種ブラックビューティーを日本で改良した大型種で、ヘタが緑色なのが特徴。果肉は締まっていて、焼き物・炒め物・煮物などの加熱調理に向く。
  • 巾着ナス – 丸ナスの一種で、小ぶりな丸く潰れた巾着型で、皮がやわらかく、果肉がしっかり詰まって固いのが特徴。加熱しても煮崩れしにくく、煮物、揚げ物、漬物に使われる。新潟・魚沼産の長岡巾着なすがよく知られる。
  • 白ナス – 東南アジアの品種で、果実が真っ白になるナス。皮がややかたい。アクが少なく、煮ると煮汁が黒くならない。越後白ナスなどがある。
  • 白長ナス – 実が20 – 23 cmほどの大長タイプの白ナス。淡緑色でヘタが小さい。実は皮がかたいが果肉は柔らかく、焼き茄子などに使える。
  • 緑ナス – 埼玉県などで栽培される緑色のナス。加熱すると身は柔らかくなり、焼き物、炒め物、揚げ物に向く。

日本の栽培種[編集]

栽培の歴史が長いことから、その土地ならではの伝統品種が多く、北部で丸・卵形の小・中型品種、中部が卵形・中長形の品種、南部では長形・大型品種が多い傾向がある。在来品種は東北の仙台長、山形の民田なす、京都の賀茂なす、大阪泉州の水なす、九州の大長茄子などがよく知られる。

東北・関東地方
中部地方
近畿地方
中国・四国・九州地方
  • 田屋なす – 山口県(長門市、萩市)外観がよく、1本が500g以上のものが「萩たまげなす」[30]
  • 十市なす – 高知県(南国市)
  • 黒びかり博多長なす – 福岡県・博多野菜のひとつ。実は長くて35 – 38 cmにもなり、曲がりは少なく、皮が薄くてつやがある。生育旺盛で、低温期でも弱ることなく晩秋まで実をつける。
  • 大長茄子 – 熊本県旧鹿本郡(山鹿市、熊本市)など九州地方で多く栽培されている。長さ40 – 50 cmと長大で、皮がかたいが果肉はやわらかい。焼き物、煮物、炒め物に向くが、皮がかたいため漬物には向かない。
  • 赤なす – 長ナス系の早生種で熊本県の在来種。果皮が赤紫色で、果肉がやわらかく、種が少ない。焼き茄子に向き、漬物には向いていない。
  • 肥後紫なす – 熊本の赤ナスから作られた大型品種。長さや太さがあり、やや赤味がある。アクが少なくてやわらかい。
  • 佐土原なす – 宮崎県宮崎市佐土原町原産
  • 薩摩白丸なす – 紫色の色素がなく、ヘタも実も淡緑色の大型の白丸ナス。皮はかたいが、加熱すると身は柔らかくなる。
  • 鹿児島県白ナス – 鹿児島県で栽培されている白ナスで、在来種の薩摩白なすの系統。果実が薄緑色で「青なす」の名で売られている。果肉は白色で、とてもやわらかい。

日本国外の品種[編集]

  • ローザビアンカ(ロッサビアンコ) – イタリアナスの品種。紫と白のやや縦縞模様で直径10 cmほどになる。皮・身ともかたく締まり、焼き物、煮込み料理に向く。
  • ゼブラ – イタリアやスペインのナスで、紫と白の縦縞模様が特徴。皮はかたく、身は柔らかい。
  • スティックテイスト – イタリア系のゼブラ模様の長さ7 – 8 cm、50グラムほどになる小ナス。
  • リスターダデガンジア – スペインの伝統品種。赤紫と白の縦縞のまだら模様をしている。肉質はやわらかい
  • マクワポ – タイナス英語版の品種。果実が卵形で白いことから「卵なす」ともよばれている。観賞用にされることも多い。
  • マクアポー・ピンポン – タイナスの品種。ピンポン玉大で緑色。タイではカレーなどに使われる。

日本では全国的に栽培されており、出荷量が最も多い高知県をはじめ、栃木県、福岡県、群馬県などが主産地である。季節により春は大阪府・岡山県・佐賀県・熊本県産、夏から秋は茨城県産も代表的である。夏野菜のため出荷量のピークは6月であるが、通年安定して出回っている。日本への輸入は、韓国産やニュージーランド産が主に輸入されている。

実際の栄養価は、栽培条件、生育環境、収穫時期、品種などで異なるため一覧表に記載されている値は代表値である。

ナス果実の93%以上は水分である[35]。他の野菜と比べると低カロリーで、脂肪燃焼ビタミンといわれるビタミンB2などをバランスよく含んでいる。ビタミン類はほとんど含まれていないとする意見はあるが、ビタミンCや、カリウム、カルシウムなどのミネラル類は比較的少ないながらも、まんべんなく含まれている。食物繊維は淡色野菜としては平均的な量である。

またナスにはコリンという機能性成分が含まれている。このコリンは無色の強アルカリ性物質で、血圧やコレステロールを下げる[37]、動脈硬化を防ぐ、胃液の分泌を促す、肝臓の働きを良くする、気分改善効果[37]などの作用が認められている。

「茄子紺」とよばれるナス果皮の暗紫色の色素成分は、ポリフェノールの一種で、アントシアニン系の色素ナスニンである。ナスニンには抗酸化作用があり、動脈硬化予防や老化予防などに効果があるとされている、またナスニンは水溶性で、加水分解によりデルフィニジンとなり、鉄やニッケルイオンが存在すると安定した塩(えん)をつくるという特徴がある。ナスの漬物を作るときに鮮やかな色を保たせるために、ナスと一緒に鉄くぎなどを入れるのはこのためである。

果実は未熟で果肉や種子が柔らかいうちに収穫し、食用とする。野菜としての旬は初夏から初秋(6 – 9月)で、果皮は変色がなく張りツヤがあり、へたのトゲが鋭いものが良品とされる。ナスは味や香りにクセがないが、皮の下の部分に苦味がある。また、産地や品種により、灰汁の多い・少ないに差がある。料理は、蒸し物、煮物、炒め物や漬物など、幅広く使われている。特に油との相性がよく、炒めたり揚げたりするとやわらかくなり、おいしく食べられる。ナスは身体を冷やす作用があることから、夏に食べるのには向いている野菜といえるが、多く摂取すると身体を冷やしすぎてしまうため、ショウガなどの身体を温める作用がある食材と一緒に食べるとよいとされる。

調理上の特性[編集]

焼く、煮る、揚げるなどあらゆる方法で調理される[4]。淡白な味で他の食材とも合せやすく、また油を良く吸収し相性が良い。野菜炒めなどで油を吸わせたくない場合は、油を入れる前にナスを少量の水で軽く煮るように炒めて、スポンジ状の実に水分を含ませてやると油を吸い難くなる。皮も薄く柔らかいので剥かずに調理されることが多い。

果実を切ったら切り口から灰汁がまわって酸化が始まり、放置すると次第に変色してくる。ナスはポリフェノール系化合物による褐変を起こしやすい食材であり、この褐変を防ぐために水につけるのが一般的で、食塩水を利用すると酵素作用も抑制できる[39]。しかし、ナスニンは水溶性のため、長時間水につけると流れ出てしまうため、調理する直前に切ってすぐに加熱調理すればナスニンの損失は少なく済む。

また、ナス科植物なのでアルカロイド(灰汁)を多く含み、一部の品種を除き生食はされない。加熱調理しない場合は漬物にするか、塩揉みで灰汁抜きしてから供される。塩で揉んだ後さらにマリネなどに加工されることもある。多くの栽培品種は、品種改良により灰汁が少なくなっている。灰汁は空気に触れると酸化して出てくるため、切ったらすぐに調理してしまえば水につけなくてもよい。大阪の泉州水茄子など水なすと呼ばれる一部の品種は生食が可能で、皮を剥いて味噌だれで食べることができるほか、漬け物(ぬかづけ)などにもする。

代表的な茄子料理[編集]

日本では、しぎ焼き、揚げ出し、麻婆茄子、浅漬け、ぬか漬けなどにして食べられる。長ナスは肉質がやわらかく素焼きして焼きなすに向く。一口なすともよばれる民田なすは丸ごと辛子漬けに、水なすはぬか漬けにされることが多い。

保存[編集]

乾燥と低温に弱いため、紙袋などに入れて風通しのよい10 – 15度ほどの冷暗所に保存する。ただし、気温が高い時期に保存したいときは、ラップなどに包み、冷蔵庫に入れれば2 – 3日ほどは持つ。ただし、冷蔵すると皮も果肉もかたくなってしまい、風味も落ちる。実を薄くスライスして、天日で乾燥させて干しナスにすると、長期保存も可能である。

ナスの果実、茎、へた、根、花などは薬用にできるため、民間療法で、打ち身、捻挫、やけど、しもやけ、腫れ物、イボ、あかぎれ、二日酔いなどに薬効があるといわれている。果実は茄子(かし)、へたは茄蔕(かてい)と称して生薬になる。

打ち身、捻挫、軽いやけどには、十分に冷やした果実を縦切りにして、切り口を患部に当てることを何度も繰り返すと、効果があるといわれている。しもやけには、乾燥した茎10 – 20グラムを水600 ccで煎じた液(水性エキス)で、患部を洗う。腫れ物には、乾燥したヘタ10グラムを600 ccの水で煎じた液で患部を湿布する。イボには、切り口で直接患部をこする。あかぎれでは、乾燥した根10 – 20グラムを同様に煎じた液を患部につける。二日酔いの場合では、乾燥した花とクズの花を各5グラムずつ入れた水400 ccを煎じて、服用すると良いといわれている。

ナスのへたの黒焼きを作って、粉末状にして食塩を混ぜたものは歯磨き粉代わりになり、歯槽膿漏、歯痛、口内炎に効果があるといわれている。痔には、果実を黒焼きにして粉末にしたものを1回量1グラム、1日3回服用する用法が知られる。

ナスには鎮静・消炎の効果がある考えられてきたことから、日本では昔から茄子を食べると体温を下げて、のぼせに有効とされてきた。和漢三才図会ではヘタにしゃっくり止めの効果があるとされるが、俗信の域を出ない。

  • 初夢の縁起物:「一富士、二鷹、三茄子」
  • 『盂蘭盆会』には、ナスで馬をかたどって祖先の霊に供える風習がある。お盆の期間中には、故人の霊魂がこの世とあの世を行き来するための乗り物として、「精霊馬」と呼ばれるキュウリやナスで作る動物を用意する。4本の麻幹あるいはマッチ棒、折った割り箸などを足に見立てて差し込み、馬、牛とする。キュウリは足の速い馬に見立てられ、あの世から早く家に戻ってくるように。ナスは歩みの遅い牛に見立てられ、この世からあの世に帰るのが少しでも遅くなるように、また、供物を牛に乗せてあの世へ持ち帰ってもらうとの願いが込められている。
  • 七夕の「七夕馬」に真菰や藁などの材料のかわりに、キュウリやナスを使う地域もある。
  • 子供の嫌いな野菜として挙げられることが多い。
  • 二宮尊徳は夏前にナスを食べたところ秋茄子の味がしたため冷夏になることを予測した。
  • 「毒キノコでも、ナスと一緒に調理すれば中毒しない」とする言い伝えがあるが、全くの迷信であり、ナスにそのような効用は存在しない[46]
  • 中国では、日本人が写真を撮るときに言う「はい、チーズ」の掛け声のように、「一〜、二〜、三〜、茄〜子」と言う文化がある。茄子の「子」を発音した際に、口が横に広がり笑顔が作りやすいためである。
  • 茄子紺:茄子の実のような紫みの濃い紺色のこと。 江戸時代から使われる色名。

言い習わし[編集]

「秋茄子は嫁に食わすな」
この言葉は「秋茄子わささの糟に漬けまぜて 嫁には呉れじ棚に置くとも」という歌が元になっており、嫁を憎む姑の心境を示しているという説がある。また、「茄子は性寒利、多食すれば必ず腹痛下痢す。女人はよく子宮を傷ふ(養生訓)」などから、嫁の体を案じた言葉だという説もある。さらに、そもそも「嫁には呉れじ」の「嫁」とは「嫁が君(ネズミのこと)」の略であり、それを嫁・姑の「嫁」と解するのは後世に生じた誤解であるとする説がある(『広辞苑』第三版、「あきなすび」の項)。しかし「嫁が君」は正月三が日に出てくるネズミを忌んでいう言葉であり、「秋茄子わささの〜」の解としては(季節が合わず)やや疑問ではある。ナスは熱帯の植物であり8月上旬までに開花・結実した実でなければ発芽力のある種子を得ることが難しい。そこから秋ナスは子孫が絶えると連想したという説もある。
「親の小言と茄子の花は 千に一つの無駄もない」
ナスの花が結実する割合が高いことに、親の小言を喩えた諺。
「瓜の蔓に茄子なすびはならぬ」
非凡な子供を茄子に例えて、平凡な親からは非凡な子は生まれない、という意味。似た諺として「蛙の子は蛙」がある。

注釈[編集]

  1. ^ 卵型の白い果実が一般的だった地域の英語名が“eggplant”となっている。

出典[編集]

参考文献[編集]

関連人物[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]