コミックとらのあな – Wikipedia

コミックとらのあなは、千葉県市川市に本社を置く株式会社虎の穴(英語: Toranoana Inc.)が経営する、同人誌を中心とした漫画関連商品などを店頭販売および通信販売する同人ショップ。通称“とらのあな”もしくは“とら”。台湾にも出店しており、台湾での店名表記は「虎之穴」。

漫画同人誌以外にも商業漫画本(漫画雑誌・単行本)、アニメ関連の映像・音楽ソフト・小説・ゲームソフト、またそれらの関連商品を扱っている。

1990年代の創業当初、いわゆる“オタク向け”の店舗はジャンルではなく媒体で区別されており、当時のオタクは例えば秋葉原で買い物をする場合、ゲームはソフマップ、アニメは石丸、漫画・小説は神保町の高岡書店といった各専門店を渡り歩く必要があった[3]

創業者の吉田博高は工業高校卒業後にソフトハウスの立ち上げを目指しており、販売の現場を視察するためソフマップで働いていた際、複数店を渡り歩かずに関連する商品を一件で提供できる店舗(ワンストップショッピング[4])があれば便利だと思ったが、ソフマップでは店の方針で置ける書籍はゲーム攻略本程度であり、秋葉原という立地自体も、必要な陳列面積に対して商品単価の低い書籍を敬遠する風潮があった[5]。吉田は競合するコンセプトの店が無いと考え、1994年6月に独立して秋葉原で創業を決意した。社名は「秘密特訓場のイメージと、インディーズっぽい響き」が気に入り、漫画『タイガーマスク』に登場するプロレス秘密結社「虎の穴」から名付けたという[5]

当初は路地裏にある雑居ビル(神林ビル)の3階の一室に店を構える古書店だったが、流通システムの都合で商業漫画はなかなか揃えることが出来ず、パソコン通信仲間の伝手を頼って同人作家から直接買い付けたこともあるという[6]。秋葉原では1992年に成人向け同人誌を扱う書店が摘発された[7] ことで、同人誌はリスクの高い商品と見なされており、取り扱う店舗が少なく、創業当時は秋葉原では数少ない同人誌書店であり[6]、同じビルの2階に入居していた「湘南通商」や「丹青通商」などの電子部品の中古やジャンク品を扱う専門店とはしごするマニアの姿が多く見られた。

同人誌の販売からスタートしたが、商業作品や関連グッズの取り扱い、通信販売なども手がけている。2010年代以降はクリエイター支援プラットフォームやオンラインのグッズ委託サイトなどWebサービスを展開しており[8]、これらを自社開発するためシステム開発部門「虎の穴ラボ」を立ち上げ、後に「虎の穴ラボ株式会社」として分社化した[9]

この他、結婚相談所や居酒屋なども展開しているが、いずれもオタクコンテンツと関連性を持たせている[8]

  • 1994年6月 – 秋葉原で創業。
  • 1996年7月 – 有限会社として法人化、同時に通信販売部門を新設。以後、新刊同人誌の委託販売にも進出し、規模を拡大していった。(1995年以前から2号店で新刊同人誌の委託販売は行っている。)秋葉原で多店舗展開する他、池袋・新宿など都内で足場を固めた。
  • 2000年3月- 大阪進出。これを皮切りに他地方の主要都市へと店舗網を広げる。
  • 2006年 – 秋葉原に自社ビル(秋葉原本店、現店名: 秋葉原店B)を新築。テナントではない自社店舗を所有した。
  • 2007年11月22日 – とらのあなダウンロードストアを開設。
2012年10月6日には3箇月間ダウンロードの無い作品の削除を開始。2015年12月15日にサイトを閉鎖し、サービスを終了した[10]
  • 2008年 – 物流センターおよび実務上の本社機能を相次いで千葉県市川市田尻の貸倉庫(日本ロジステック株式会社京葉市川センター)に移転。関連会社の本社も同所に移った。
  • 2011年1月31日 – とらのあなダウンロードストアとは異なるデジ同人サービス、「とら電人」を開始。
「とら電人」はApp Storeによってアプリの配信が停止され、2012年5月17日をもって終了した[11]
以降はソーシャルゲーム事業参入(2015年3月で終了)やアクセサリーブランドを立ち上げるなど、様々なコンテンツを展開するようになる。
  • 2018年6月3日 – 通信販売サイトを12年振りにリニューアル[14]
  • 2019年3月 – この時点でポイント連携は五大都市圏および周辺地域と仙台市の一部店舗へ対応店舗を拡大した[16]
  • 2019年10月 – 「虎の穴ラボ」を「虎の穴ラボ株式会社」として分社化[9]
  • 2020年4月15日 – 上記3種類のポイントカードに加えてdポイントカードも利用可能となると同時に対応店舗を全店舗に拡大した。
    • 同年6月末をもってWAONPOINTカードからは撤退。
秋葉原店A(右から3棟目)と秋葉原店B(同2棟目、閉店)は、中央通り沿いに隣接していた
(2007年8月11日撮影)
移転前の池袋店
(2010年11月26日撮影)
名古屋店新店舗
(2013年4月29日撮影)
台湾・台北店
(2018年5月10日撮影)

現行店舗[編集]

※2022年2月現在

特に人口の多い東京都(東京都区部)および政令指定都市を中心とした都市部にのみ出店している。

政令指定都市でも、川崎市・相模原市・浜松市・堺市・北九州市には出店していない。

2008年に吉祥寺、2009年に八王子市・町田市、2013年に蒲田に出店するなど、特別区に近い市部へ重点的に出店しており、一時期は関東地方だけで全店舗の約半数を占めていた。2016年3月までに西東京の店舗は全て閉店していたが、8月には立川に、2018年には一度撤退した町田に新たな店舗を構えた。現在は東京山手線内にある秋葉原、池袋、新宿に集約させるため、店舗数は減少している[17]。2017年からは関東以外で出店が増加傾向にあった。

2020年3月以降、新型コロナウイルス感染拡大によって店舗での利用客が減少し、オンラインでの通販への移行が明確化したことから、同年6月の新潟店及び三宮店の閉店を発端に全国各地での店舗閉店が相次いている[18][8]

都道府県 店名 開店・移転時期・備考[19]
千葉県 千葉店 千葉市中央区。2010年2月20日開店[20]
東京都 秋葉原店A 2002年12月現在地に移転、2009年7月25日秋葉原1号店から改称[21][22]
新宿店A 新宿2号店として2000年6月開店、2001年6月移転。
2001年10月に新宿1号店と統合し新宿店に改称。新宿店B、新宿西口店開店に伴い、2013年8月に新宿店Aに再改称
池袋店 2013年4月19日開店[23]、2015年11月14日移転[24]
愛知県 名古屋店 名駅。2002年2月開店、2013年4月26日移転
大阪府 なんば店A なんば店として2000年3月開店、2001年4月増床。
なんば店B開店に伴い改称
梅田店 2004年5月開店。
開店当初は18歳未満立入禁止[25] だったが、2016年6月25日の移転オープンで、全年齢対象の店舗になった[26]
台湾 台北店 2018年3月23日開店。初の海外店舗。

とらのあな出張所[編集]

一般の書店の中で展開している店舗。営業はその書店に合わせているため、とらのあなのポイントカードが使えないことや、一部の店舗(アダルトショップ)で18歳未満立入禁止になっているなどの差がある。

※2022年2月現在

閉店した店舗[編集]

※2022年2月現在

実店舗[編集]

  • (秋葉原)2号店・3号店・4号店・5号店 → 秋葉原1号店・秋葉原本店(現: 秋葉原店A・秋葉原店B)に集約
  • 新宿1号店(2000年5月開店、2001年10月閉店) → 新宿2号店に集約し同店が新宿店に改称
  • (大阪)日本橋店(2001年6月開店、2003年10月閉店) → なんば店に集約
  • なんば2号店(2005年7月30日開店、2007年12月8日移転[31]、2009年3月15日閉店[32]) → なんば店に集約
  • 吉祥寺店(2008年4月26日開店[33]、2009年3月15日閉店[32]
  • 蒲田店 (2012年3月16日開店、2015年3月15日閉店[34]
  • 新宿店B(2013年8月8日開店[35]、2015年2月28日閉店[36]
  • 新宿西口店(2013年8月8日開店[37]、2016年2月28日閉店[38]
  • 町田店(初代)(2007年4月14日開店[39]、2009年11月21日移転[40]、2016年3月6日閉店[38]
  • 八王子店(2009年11月28日開店[41]、2016年3月13日閉店[38]))
  • 大須店(2018年7月14日開店[42]、2019年5月31日閉店[43]
  • 湘南藤沢店(2017年11月23日開店[44]、2019年8月31日閉店[45]
  • 宇都宮店(2017年12月8日開店[46]、2019年8月31日閉店[45]
  • 立川店 (2016年8月6日開店[47]、2020年2月29日閉店)
  • 静岡店(2010年10月23日開店[48]、2020年6月30日閉店[49]
  • 三宮店(2001年8月開店、2008年2月23日増床、2010年2月27日減床[50]、2020年6月30日閉店[49]
  • 新潟店(2010年12月3日開店[51]、2019年11月1日移転[52][53]。2020年7月31日閉店[54]
  • 福岡店(2003年2月開店、2006年10月21日移転、2020年7月31日閉店[54][55][56]
  • 横浜店(2003年9月開店、2009年8月8日移転[57]、2020年8月31日閉店[18]
  • 町田店(2代目)(2018年4月28日開店[58]、2020年8月31日閉店[18]
  • 京都店(2010年12月3日開店[51]。2013年10月31日移転。2020年8月31日閉店[18]
  • 仙台店(2007年7月14日開店[59]、2009年8月8日移転[60]、2020年8月閉店[18]
  • 秋葉原店C(2013年11月1日開店、2021年4月4日閉店[61]
  • 秋葉原店B(2021年4月6日閉店[62]
  • 札幌店(2003年11月開店、2021年6月30日閉店[63][64]
  • 広島店(2001年9月開店、2013年3月20日移転、2021年6月30日閉店[64]
  • 大宮店(2009年11月14日開店[65] 、2022年1月31日閉店[66]
  • 岡山店(2017年7月29日開店[67]、2022年1月31日閉店[66]

とらのあな出張所[編集]

  • とらのあな出張所inときわ書房本店(2016年9月14日閉店[68]
  • とらのあな出張所in良文堂書店(2016年6月19日閉店[69]

その他[編集]

  • 秋葉原本店(現: 秋葉原店B)の2階では、2006年8月5日の同店開店時よりコスプレ喫茶「Cafe with Cat」を運営していた[70] が、2009年5月17日に閉店[71]。跡地はその後、店内設備はほぼそのままで、オリジナルグッズ売り場に変更された。

広告・宣伝媒体[編集]

イメージソング[編集]

  • 『ここだよ。』(作詞・作曲:桃井はるこ、編曲:小池雅也、歌:UNDER17)
    • 2004年12月にとらのあな限定でCDが発売された(UNDER17バージョン、虎々(松来未祐)バージョン、とらみ(桃井はるこ)バージョン、インストゥルメンタルを収録)。
    • UNDER17バージョンはUNDER17のアルバム『そして伝説へ…』(2004年12月22日発売)にも収録。また松来未祐バージョンは松来のアルバム『MEMORIES ~Miyu Matsuki Best Songs~』(2008年9月26日発売)にも収録。
    元UNDER17ボーカルの桃井はるこは、とらのあな創業当時、向かいのジャンク屋でアルバイトをしており、休憩時間などに度々立ち寄っていたという。後にテーマソングを担当することになるとは思いもよらず、オファーが来たときは大変驚いたと語っている。
  • 以前は『虎のプライド』(歌:串田アキラ)というイメージソングもあった。

無料配布小冊子[編集]

『とらだよ。』『虎通』『プリンセスノート』の3誌とも2012年(平成24年)7月25日刊行分を以て一旦すべて休刊。同年10月にリニューアルしての再開を予定していたが、そのまま消滅した[72]。その後2013年(平成25年)から、『とらだよ。EXTRA』が不定期刊行されている。

2012年10月より、インターネットのコンテンツとして配信していたが、2015年(平成27年)12月25日を以て更新を終了。

  • とらだよ。
    2001年(平成13年)2月創刊[19]。2011年(平成23年)6月より「プリンセスノート」と合冊。漫画・アニメの情報のほか松来未祐や門脇舞(現: 門脇舞以)、生天目仁美、伊藤静といった声優のコラムや漫画家のインタビューなどを掲載。非常に充実した内容を有しており、配布時期終了前に品切れをすることもしばしばあった。
    2013年(平成25年)から、『とらだよ。EXTRA』として不定期刊行。
  • 虎通
    1996年(平成8年)7月創刊[19]。主に男性向け同人商材、18禁PCゲームなどの記事を扱う。同人商材の売り上げランキングや新作18禁ゲームの紹介、成人向けコミック誌の紹介がメインとなっている。元は有料の同人誌通販カタログ(コミックの掲載もあり)だった。
  • プリンセスノート
    2004年(平成16年)10月創刊[19]。2011年(平成23年)6月より「とらだよ。」と合冊。女性向けの同人商材・商業誌を記事にしていた。

インターネット配信コンテンツ[編集]

とらのあなラジオ部 ~とららじ~[編集]

コミックとらのあな店舗で開催されるキャンペーン、ランキングなど様々な情報を届けるラジオ番組。コミックとらのあな全店での店内放送および、公式サイト上で無料配信された。全21回。

概要
  • 配信期間:2009年11月27日 – 2011年7月29日(月1回配信)
  • パーソナリティ:小林ゆう、今井麻美

開運☆野望神社シリーズ[編集]

生天目仁美と伊藤静によるウェブラジオ番組。とらのあな公式サイトにて、2003年から2008年まで3シリーズ全96回が隔週で無料配信されていた。2010年に特別編1回を配信。

ウェブコミック配信[編集]

以下のウェブコミック配信サイトを運営している。いずれも無料で閲覧可能。

オンラインゲーム配信[編集]

オンラインゲームの一種たるソーシャルゲームのプラットフォームとして2013年に「トラゲー」がオープンされたが、2016年に終了した。PCとスマートフォンの両方で利用が可能の作品から配信されたが、スマートフォン専用の作品がこのプラットフォームを占めるようになった。多くのソーシャルゲームと同様に基本利用料は無料、一部コンテンツ有料となっている。

提供・協力番組[編集]

  • アキバ!AKIBA☆あきば
    東京MXテレビで2006年4月から9月末まで毎週水曜23:30-24:00に放送されていた、とらのあな提供の秋葉原情報番組。
  • げんしけん
    TVアニメ版第1期シリーズのスポンサーを務めた。原作漫画第3話では架空の店舗「同じ穴のムジナ」、アニメ版第2話では実在するコミックとらのあな秋葉原1号店が描かれている。
  • 女子高生
    製作協力。
  • モンスター娘のいる日常
    籠城事件現場となった同人ショップが、原作では架空の店舗だったがアニメ版ではとらのあなになっている。

製作委員会参加の番組[編集]

※特記のない作品はすべて「コミックとらのあな」名義である。

グループ会社[編集]

  • ユメノソラホールディングス株式会社 – 持株会社。
    • 株式会社虎の穴
    • ツクルノモリ株式会社 – キャラクターグッズの企画製造販売。
    • 株式会社アクアプラス
    • とら婚株式会社 – 結婚相談所
    • 株式会社アドバゲーミング – 「還暦プレゼント」の運営。
    • 虎の穴ラボ株式会社 – グループ会社のシステム開発を行う。

脚注・出典[編集]

関連項目[編集]

  • ペンギン娘
  • COMIC ZIN – とらのあなから独立したスタッフによって秋葉原にて創業した。
  • DLsite – 2014年8月20日~2018年12月25日14時迄の間、とらのあな x DLsite.com共同企画第1弾としてとらのあなID決済が利用できた[1]

外部リンク[編集]

  1. ^ とらのあなID決済追加のご案内 : DLsiteインフォメーションブログ”. 平成31-01-29閲覧。