ヴィラーマ – Wikipedia

ヴィラーマ(サンスクリット語: विरामvirāma)は、ブラーフミー系文字において使用される記号で、子音のあとに母音が続かないことを示す。

ヴィラーマはサンスクリットの名称であり、じっさいには言語ごとに名称が異なる。たとえばヒンディー語ではハラント(हलंत)と呼ぶ[1]

デーヴァナーガリー文字などのブラーフミー系文字はアブギダであり、子音字(アクシャラ)は、何も記号をつけなければ暗黙の母音aが続くものと見なされる。したがって、語末の子音や子音連結を表すには特別の方法を用いる必要がある。

デーヴァナーガリー文字によって例を示すと、記号なしの は ka を表し、これに対して क् と下に記号をつけると k になる。この記号がヴィラーマである。

いっぽう、子音連結は結合文字(合字)によって表される。たとえば पर は para であり、pra は合字 प्र によって表される。しかし、合字のための活字がない場合など、この場合にもヴィラーマを用いることがある。

現代語とヴィラーマ[編集]

ヒンディー語など、多くの現代インドの言語では、母音aが多くの場合に脱落する。このため、ほとんどの場合、語末のヴィラーマはあってもなくても同音になり、書かれないことも多い[2]。また、結合文字も使わなくても同音になる場合があり、とくに外来語ではつづりのゆれが存する[3]

マラヤーラム文字では、暗黙の母音を持たない子音字がいくつか存在する(例: (na) に対する (n))。na の文字にヴィラーマを加えた ന് は、n ではなく、 という音になる。

南アジア以外[編集]

ビルマ文字では、結合文字を作るためのヴィラーマのほかに、アタッ(အသတ်)と呼ばれ、常に表示される(結合文字を作らない)ヴィラーマがあり、音節末子音を表すために多用される。この文字は Unicode 5.1 で追加された[4]

チベット文字では、原則としてどの文字に母音がつくかは明らかなので、ヴィラーマは用いない。チベット文字にも子音連結は存在するが、Unicode では結合用の子音を独立の子音とは別の符号位置に定義しているため、ヴィラーマを使う必要はない。(ただしチベット文字にもヴィラーマは定義されている)

タイ文字ではヴィラーマも結合文字も用いない。Unicode に定義されているタイ文字用のヴィラーマは、パーリ語のために存在する。

Unicodeでは、「子音字1 ヴィラーマ 子音字2」によって子音字1と子音字2を組みあわせた結合文字を表す。

例: (ka) + (virama) + (ṣa) → क्ष(kṣa)

結合文字を使わず、ヴィラーマを明示的に表記したい場合、ゼロ幅非接合子(ZWNJ, U+200C) を後続させて、「子音字1 ヴィラーマ ZWNJ 子音字2」のようにする[5][6]

また、結合文字をつくるための半体(半子音字)を表示するためには、ゼロ幅接合子(ZWJ, U+200D) をヴィラーマに後続させる[6]

文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+094D
Devanagari Sign Virama
U+09CD
Bengali Sign Virama
U+0A4D
Gurmukhi Sign Virama
U+0ACD
Gujarati Sign Virama
U+0B4D
Oriya Sign Virama
U+0BCD
Tamil Sign Virama
U+0C4D
Telugu Sign Virama
U+0CCD
Kannada Sign Virama
U+0D4D
Malayalam Sign Virama
U+0DCA
Sinhala Sign Al-lakuna
U+0E3A
Thai Character Phinthu
U+0F84
Tibetan Mark Halanta
U+1039
Myanmar Sign Virama
U+103A
Myanmar Sign Asat
U+1715
Tagalog Sign Pamudpod
U+1734
Hanunoo Sign Pamudpod
U+17D1
Khmer Sign Viriam
U+17D2
Khmer Sign Coeng
U+17DD
Khmer Sign Atthacan
U+1B44
Balinese Sign Adeg
U+1BAA
Sundanese Sign Pamaaeh
U+1BAB
Sundanese Sign Virama
U+1BF2
Batak Pangolat
U+A806
Syloti Nagri Sign Hasanta
U+A8C4
Saurashtra Sign Virama
U+A953
Rejang Virama
U+A9C0
Javanese Pangkon
U+10A3F 𐨿
𐨿
Kharoshthi Virama
U+11046 𑁆
𑁆
Brahmi Virama
U+110B9 𑂹
𑂹
Kaithi Sign Virama
U+11133 𑄳
𑄳
Chakma Virama
U+111C0 𑇀
𑇀
Sharada Sign Virama
U+11235 𑈵
𑈵
Khojki Sign Virama
U+112EA 𑋪
𑋪
Khudawadi Sign Virama
U+1134D 𑍍
𑍍
Grantha Sign Virama
U+114C2 𑓂
𑓂
Tirhuta Sign Virama
U+115BF 𑖿
𑖿
Siddham Sign Virama
U+1163F 𑘿
𑘿
Modi Sign Virama
U+116B6 𑚶
𑚶
Takri Sign Virama

参考文献[編集]

関連項目[編集]