イン・ロンドン (カエターノ・ヴェローゾのアルバム) – Wikipedia

イン・ロンドン』(原題:Caetano Veloso)は、ブラジル人ミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾが1971年に発表した、ソロ名義では3作目のスタジオ・アルバム。自身3作目のセルフ・タイトル・アルバムでもあり、便宜上『A Little More Blue』と呼ばれることもある[2]

ヴェローゾは1969年7月よりロンドンへ亡命しており、本作が亡命後初のレコーディングとなった[3]。イギリスでの発売が前提となっていたため、オリジナル曲は英語で作詞されたが[4]、「アーザ・ブランカ(白い翼)」のみポルトガル語で歌われた[2]。歌詞にはヴェローゾの亡命体験が反映されており、本人は本作を「憂鬱さのドキュメント」とジョーク混じりに表現したこともある[5]

ストリングス・アレンジはフィル・ライアンによる[1]。「ロンドン・ロンドン」は、本作に先駆けてガル・コスタによるカヴァーがアルバム『Legal』(1970年)に収録された[6]。「マリア・ベターニア」はヴェローゾの実妹マリア・ベターニアに捧げられた曲[2]。「イフ・ユー・ホールド・ア・ストーン」は、ヴェローゾが前作『ホワイト・アルバム』でレコーディングした伝承歌「マリニェイロ・ソー」からの引用が含まれている[4]。「イン・ザ・ホット・サン・オブ・ア・クリスマス・デイ」は、当時ヴェローゾと共にロンドンへ亡命していたジルベルト・ジルとの共作。

Wade Kerganはオールミュージックにおいて5点満点を付け「彼の以前のアルバムに見られた蛍光色は姿を消し、夢を打ち砕かれた革命家のリアリズムに取って代わられた」「ドラムスやヴェローゾの歌い回しにはブラジル的な感触もあるが、このアルバムはむしろ、ボブ・ディランの『血の轍』やティム・バックリィの『ハッピー・サッド』といった、ダウナーなフォークの名作を思わせる」と評している[2]。また、収録曲「ア・リトル・モア・ブルー(今少しブルーに)」は、ウッデン・ワンド英語版がピッチフォーク・メディアに寄稿した記事「あなたの人生を良くする10の事柄」において「時事問題に共鳴した曲だということを抜きとしても、誰がいかなる主題で書いてきたポップ・ソングの中でも特に美しい曲の一つ」と評されている[7]

特記なき楽曲はカエターノ・ヴェローゾ作。

  1. ア・リトル・モア・ブルー(今少しブルーに) – “A Little More Blue” – 4:50
  2. ロンドン・ロンドン – “London, London” – 4:17
  3. マリア・ベターニア – “Maria Bethânia” – 6:54
  4. イフ・ユー・ホールド・ア・ストーン – “If You Hold a Stone” – 6:08
  5. シュート・ミー・デッド – “Shoot Me Dead” – 3:21
  6. イン・ザ・ホット・サン・オブ・ア・クリスマス・デイ – “In the Hot Sun of a Christmas Day” (Caetano Veloso, Gilberto Gil) – 3:18
  7. アーザ・ブランカ(白い翼) – “Asa Branca” (Humberto Teixeira, Luiz Gonzaga) – 7:21