広電宮島口駅 – Wikipedia

広電宮島口駅(ひろでんみやじまぐちえき)は、広島県廿日市市宮島口一丁目にある広島電鉄宮島線の駅である。駅番号はM39

宮島線の終点であり、世界遺産・厳島神社の最寄り駅。厳島神社が鎮座する厳島(宮島)までは、駅前から連絡船(宮島航路)が就航する。フェリー乗り場については宮島口フェリー乗り場参照。

改築・改称前の駅舎(1991年8月)

当駅は1931年(昭和6年)、広島電鉄の前身である広島瓦斯電軌が宮島線の新宮島駅(廃止済み)から当駅までの区間を延伸させたのに合わせて開業した[2][3]。この延伸をもって、己斐町駅(現・広電西広島駅)から順次伸びてきた宮島線は全線開業を果たしている[3]。開業当時の駅名は電車宮島駅(でんしゃみやじまえき)で[4]、これは宮島線と連帯運輸を行う鉄道省(国有鉄道)の宮島駅と区別するための命名であった[5]。当駅が開業した時にはすでに鉄道省が宮島口から宮島までの連絡航路(宮島連絡船)を就航させていたため、宮島線はこれに連絡し、それまで広島瓦斯電軌が運航していた新宮島駅前から宮島までの連絡航路はこのとき廃止された[3][6]

宮島線は全線複線にて開通したが、太平洋戦争下の1944年(昭和19年)に当駅から電車廿日市駅までの区間は一度下り線が撤去され、単線に変更されている[5][7]。これは当時広島市内で建設中であった皆実線のレールを資材不足の中確保するためで、利用者が比較的僅少だった同区間のレールが流用されたのである[7]。線路は戦後1950年(昭和25年)に複線へと戻っている[5]

駅名は1961年(昭和36年)に広電宮島駅(ひろでんみやじまえき)に改称[4]。国鉄の駅は1942年(昭和17年)に宮島駅から宮島口駅へ改称しており、当駅も2001年(平成13年)に広電宮島口駅へと改称された[8]

頭端式ホーム2面3線の地上駅[8][13]。このほかに留置線があり、当駅から宮島ボートレース場駅の下りホームにかけて本線の海側に1本、山側に2本の計3本が並行している[8][13]。この留置線はかつて当駅に併設されていた車両基地(宮島口車庫)の遺構である[8]。車両基地では1982年(昭和57年)7月にドラマ『西部警察 PART-II』の日本全国縦断ロケが行われ、テロリストによる電車の爆破シーンが750形766号を用いて撮影された[14]

乗り場は海側から1・2・3番乗り場となっている[8]。宮島線専用の鉄道車両が在籍した時期は3番乗り場が高床の鉄道車両に対応した高床ホームで2番乗り場が広島市内の軌道線に直通する車両に対応した低床ホームとなっており、2・3番乗り場の間はホームの床面が傾斜していた。1番乗り場は単行運転車用で、駅舎寄りが高床ホーム、広電西広島駅寄りが低床ホームとなっていた。1983年からしばらくの間は、3番乗り場の線路を挟んで反対側に、低床ホームの4番乗り場が設けられていたこともあった[10]

広島電鉄の鉄軌道線において唯一となる自動券売機[注 1]および常設の改札が設置されており、窓口(宮島口営業センター)とトイレもある。2019年5月12日までは売店が営業しており、売店の跡地に宮島口営業センターが開設された。当駅に7:00 – 20:00の間に到着する電車に関しては、電車車内の運賃箱を使用せず、運賃の支払いは改札で行う[注 2]。その他の時間帯は、他の駅・停留場同様に電車車内の運賃箱を使用する。駅舎は1931年の開業以来のものが長らく使われてきたが、広島でのアジア競技大会開催を控えた1994年7月に建て替えられ、老朽化が進んでいた駅舎は宮島の玄関口として装いを改めている[11]。この建て替えを記念して、広島電鉄では宮島の名産品であるしゃもじ付きの乗車券が販売された[11]

今後の予定[編集]

2020年2月29日に新たな宮島口フェリーターミナルが開業、同年4月2日には隣接する広電宮島ガーデンの商業施設「etto」が開業した。広電宮島ガーデンの旧商業施設である「もみじ本陣」はこれに先立って2019年12月10日に閉鎖されており、広島電鉄ではこれを解体した跡地を利用して広電宮島口駅を東寄りに移設し、道路を横断せずにフェリーに乗り換えることができるようにすることを計画している[15]。広電宮島口駅と「もみじ本陣」跡地の間にある道路は駅西側に移設され、立体化される駐車場へは線路を跨ぐ誘導路が設けられる(松大カーフェリー乗り場への進入方法は不明)。2020年度中に着工し、2022年度末の開業を予定している[16]

利用状況[編集]

『廿日市市統計書』によると、2019年度の1日平均乗降人員(利用者総数をその年の日数で割った値)は6,349人である[17]

広電宮島口駅の乗降人員は以下の表のように推移している。

1日平均乗降人員の推移
年度 乗降人員 出典
1998年度 5,702 [18]
1999年度 4,726 [18]
2000年度 5,142 [18]
2001年度 4,910 [18]
2002年度 4,846 [18]
2003年度 4,828 [18]
2004年度 4,637 [18]
2005年度 4,832 [19]
2006年度 4,976 [20]
2007年度 5,328 [21]
2008年度 5,627 [22]
2009年度 5,427 [23]
2010年度 4,948 [24]
2011年度 5,218 [25]
2012年度 5,408 [26]
2013年度 5,339 [27]
2014年度 5,336 [28]
2015年度 5,434 [29]
2016年度 5,860 [30]
2017年度 6,009 [31]
2018年度 6,312 [32]
2019年度 6,349 [17]

駅のある廿日市市宮島口地区は、大野瀬戸(瀬戸内海)を挟んで宮島と相対する場所にあり、前後を海と山に挟まれ平地は少ない[33][34]。その狭隘な平地に当駅のほか西日本旅客鉄道(JR西日本)山陽本線の宮島口駅、広島松大汽船の宮島口桟橋、JR西日本宮島フェリー宮島連絡船の宮島口桟橋が立地し、宮島への玄関口として交通結節点を形成している[34]。JRの宮島口駅は地区を横断する国道2号(宮島街道)を挟んで山側にあり、海側にある当駅のほうが桟橋に近い[13]

宮島口地区は1930年(昭和5年)ころと1963年(昭和38年)の2度にわたって埋め立て工事が実施されてきた[34]。かつては当駅のすぐそばまで海が迫り、夏期には納涼場が設けられたこともある[5]。埋め立てが進行した駅前には広島県道43号厳島公園線のロータリー(通称「しゃもじロータリー」)が通り、ロータリーを囲むようにみやげ物店やホテル・旅館が立ち並ぶ。

当駅の手前にある宮島線の踏切は「開かずの踏切」であり、観光シーズンになると国道から海側にある駐車場へ向かう大型バスの流れが踏切によって妨げられ、渋滞が発生する[35]。廿日市市が2016年に発表した「宮島口地区まちづくりグランドデザイン」でも、まちづくり施策のひとつに交通円滑化が掲げられ、渋滞の解消を課題としている[34][36]。グランドデザインの中では当駅に関しても、駅および線路の移設や駅周辺に「広電ガーデン」エリアを創出することなどが構想されている[35][34]

路線バス[編集]

広島電鉄
宮島線

広電阿品駅 (M38) – (臨)宮島ボートレース場駅 – 広電宮島口駅 (M39)

注釈[編集]

  1. ^ ただし、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、2020年春頃より、券売機の稼働を停止している。
  2. ^ ただし、宮島水中花火大会開催時や、越年時など、改札を使用する時間帯が変更となる場合がある。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 長船友則『広電が走る街 今昔』JTBパブリッシング〈JTBキャンブックス〉、2005年。ISBN 4-533-05986-4。
  • 『広島電鉄開業100年・創立70年史』広島電鉄、2012年。
  • 廿日市市分権政策部広報統計課編 『廿日市市統計書』各年版

関連項目[編集]

外部リンク[編集]