昭和53年台風第26号 – Wikipedia
昭和53年台風第26号(しょうわ53ねんたいふうだい26ごう、国際名:リタ / Rita[1][2]、フィリピン名:ケイディン / Kading)は、1978年10月に発生し、フィリピンに甚大な被害をもたらした台風である。
1978年10月18日、マーシャル諸島の北東(日付変更線に近い東経175度付近)で台風26号が発生[3][4]。台風は勢力を強めながら西進を続け、22日23時30分の飛行機観測で中心気圧897hPaを観測して以降、中心気圧900hPa以下の猛烈な勢力が続き、25日12時17分の飛行機観測では878hPaという最低気圧を記録した[3]。台風はその後もほとんど勢力が衰えることなく、ルソン島へ向かって西に進み続け、中心気圧905hPaという猛烈な勢力で、26日の夜遅くに上陸した[3]。上陸後間もなく、台風の中心にあった小さくはっきりした眼は一気に見えなくなった[3]。その後ルソン島を通過して、27日に南シナ海へと抜けた頃には勢力もかなり衰えていた。
この台風はフィリピンを中心に甚大な被害をもたらし、少なくとも300人以上の犠牲者を出した。
この台風による被害の後、台風委員会は台風の解析と予報の作業マニュアルの作成を提言し、「TOPEX」と称するプロジェクトを立ち上げた[3]。作業マニュアルの作成にあたり、モデル台風として選定したのがこの台風26号であった[3]。日本の台風作業手順をベースに台風が接近する3日程前から、上陸・通過に際してどのようなタイミングで観測体制の強化や解析予報作業体制の強化、情報発表体制の強化等を進めていくかを各国が共同で作成し、実際の台風を使った作業訓練も行って、マニュアルが作られた[3]。このマニュアルは、改良されながら現在も東南アジア各国の台風作業に活用されているため、この台風の貢献は大きいといえる[3]。
この台風は、台風としての記録を複数残した。
この台風において、「猛烈な勢力」であった期間は90時間 (3日18時間) と非常に長く、台風の最大風速に関する記録が残る1977年以降では最長の記録となっている[5]。台風が猛烈な勢力を72時間以上も維持する確率はわずか0.3%程と極めて低いにも関わらず、この台風がこの記録を残した理由は、海水温が30℃前後に達するフィリピンの東海上を、長距離かつ長時間にわたって移動したためであると考えられる[5]。
またこの台風における移動距離は7,179kmと、歴代7位の長さとなった[6]。
またこの台風は、猛烈な勢力の台風が陸地に上陸すると、地形の影響を受けて(ルソン島では東海岸に沿って山地が連なっている)、中心部の非常に急峻な気圧傾度の部分が、一気に崩壊した事例となった[3]。
順位 | 名称 | 国際名 | 年 | 移動距離 (km) |
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1 | 昭和40年台風第32号 | Faye | 1965年 | 8,753 |
2 | 第2室戸台風(昭和36年台風第18号) | Nancy | 1961年 | 8,113 |
3 | 平成15年台風第18号 | Parma | 2003年 | 7,606 |
4 | 昭和27年台風第27号 | Hester | 1952年 | 7,554 |
5 | 平成3年台風第19号 | Mireille | 1991年 | 7,307 |
6 | 昭和62年台風第7号 | Wynne | 1987年 | 7,275 |
7 | 昭和53年台風第26号 | Rita | 1978年 | 7,179 |
8 | 昭和37年台風第28号 | Karen | 1962年 | 7,113 |
9 | 昭和54年台風第20号 | Tip | 1979年 | 6,872 |
10 | 平成29年台風第5号 | Noru | 2017年 | 6,846 |
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