奇形 (ロバート・ブロックの小説) – Wikipedia

奇形』(きけい、原題:英: The Mannnikin)は、アメリカ合衆国のホラー小説家ロバート・ブロックによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つ。

『ウィアード・テールズ』1937年4月号に掲載された[1]

妖術師物語にして人面瘡ホラー。

あらすじ[編集]

大学講師のわたしは、教え子のサイモン・マグロアの才能に興味を覚え、親しくなる。サイモンは背中に生じた肉腫に悩まされていたが、知性は群を抜いて優れていた。しかし彼は、父が亡くなったことで突然退学して故郷に帰ってしまう。2年後、わたしは休暇で出かけたブリッジタウンの村で、偶然サイモンと再会を果たす。サイモンは礼儀正しく温和であったが、健康状態は悪化し、肉腫が大きくなっていた。

わたしは、村ではマグロア家の者が忌み嫌われていることを知る。一族には妖術の噂があり、皆なんらかの肉体的不具を備えている。サイモンは一族最後の一人であり、村に来るのは専ら日用品や鎮静剤を購入するためのみ。わたしは偏見に憤慨し、また彼にちゃんとした治療を受けるべきだと説得することを決意する。そこでマグロア邸を訪れたところ、豹変したサイモンに追い返され、困惑する。落ち着いて翌日再訪すると、打って変わって温厚になったサイモンが錯乱した非礼を詫びてくる。

わたしはカーステアーズ医師に相談して、サイモンを強制的に屋敷から連れ出して治療を受けさせることを決める。2人がマグロア邸に赴いたところ、血まみれでサイモンが死んでおり、わたし宛の手紙が残されていた。わたしと医師は書類を全て焼却し、検視官と3人で沈黙を守ることを誓い合う。サイモンの手紙には、生まれたときから魔物に取り付かれていたことや、支配しようとするそいつと抵抗するサイモンの苦闘が記されていた。秘密が露わにされることを恐れたそいつは、手を伸ばしてサイモンの首を絞め、噛み殺したのである。

主な登場人物[編集]

  • わたし – 語り手。大学講師。現代人であり、迷信に否定的。休暇中にサイモンと再会する。
  • サイモン・マグロア – 文才に優れた青年。猫背で、背の左位置に腫瘍がある。オカルトを信奉する。研究テーマは使い魔。
  • アブソロム・ゲイツ – 宿屋の主。釣りの愛好家。
  • サチャートン – 農夫。二重人格的なサイモンの振舞に遭遇したことを証言する。
  • カーステアーズ医師 – 村の開業医。
  • ジェフリィ・マグロア – サイモンの父。イタリアから宗教裁判を逃れてやって来た妖術師の子孫。1933年に怪死。
  • リチャード・マグロア – サイモンの叔父。サイモンが12歳のときに発狂死。
  • 肉腫 – サイモンの背の肉腫。顔と手足があり、言葉を喋る。妖術の知識をつけ、サイモンを支配しようと目論む。もともと双子として産まれるはずだった片割れが融合したものであるらしい。

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 学研『クトゥルー神話事典第四版』348-349ページ。