尿検査 – Wikipedia

顕微鏡下での尿サンプル中の白血球(異常所見例)

尿検査(にょうけんさ、英:Urinalysis)は、尿についての多くの検査項目を含み健康診断の最も一般的な方法の一つである[1]。尿検査の一部は検尿で行われ、結果は試験紙の変色で読み取ることができる。

検査項目[編集]

尿は血液中の不要物や有害物、新陳代謝の老廃物などを体外へ捨てるために腎臓で濾過されて生産される。このため、身体状態を反映して水素イオン指数 (pH) や成分が変化することが知られており、内科の診断では主要な検査対象となる。

血液やリンパ液、組織液、細胞液などのpHは、ホメオスタシス(恒常性維持機能)によって通常pH7.4±0.05に維持されている。一方、尿は体液ではないため、pHはある程度の範囲で変動し、一般に尿は弱酸性であるが、アルカリ性食品を多く摂取したりすることで、アルカリ性になったまま低下しなくなることがよくある。

尿にタンパク質が含まれる場合(タンパク尿)、腎疾患や尿路系の異常、糖では糖尿病、血液では尿路系の炎症や結石が疑われる。ただし、これらは疾患がなくても疲労による原因である場合もある。ウロビリノーゲンの量や尿の比重も臓器の疾患を示唆する。ウイルス、細菌が混じる場合には泌尿器系の感染症が疑われる。薬物・毒物等を摂取した場合には固有の代謝産物が検出される。妊娠した女性からはヒト絨毛性ゴナドトロピン (HCG) という特有のホルモンが検出される。

簡単な尿検査は試薬を用いて色の変化や沈殿の有無を調べるもので、妊娠の検査であれば数分程度で確認できる。近年では質量分析の発展によってきわめて微量の成分でも検出が可能となっており、スポーツ競技でのドーピング検査などで使用されている。

しかし、採集から検査までの保存温度が高く時間がかかった場合、尿中から頻繁に検出される腸内細菌の大腸菌やプロテウス属菌などの影響で、成分に変化を生じ要所見の可能性の高い尿ほど経時変化が顕著であると報告されている[6]。従って、保存は蓋付きで冷暗所が望ましいとされる[6]

アニサキスがガンの部位に集まる習性を利用し、カエノラブディティス・エレガンスを使って尿によるがん検診を可能とする研究が行われている[7][8]

  1. ^ a b c Simerville JA, Maxted WC, Pahira JJ (March 2005). “Urinalysis: a comprehensive review”. American family physician 71 (6): 1153-62. PMID 15791892. http://www.aafp.org/afp/20050315/1153.html. 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Normal Reference Range Table Archived 2011年12月25日, at the Wayback Machine. from The University of Texas Southwestern Medical Center at Dallas. Used in Interactive Case Study Companion to Pathologic basis of disease.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l Reference range list from Uppsala University Hospital (“Laborationslista”). Artnr 40284 Sj74a. Issued on April 22, 2008
  4. ^ a b medical.history.interview: Lab Values”. 2008年10月21日閲覧。
  5. ^ a b University of Colorado Laboratory Reference Ranges”. 2008年5月7日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年10月21日閲覧。
  6. ^ a b 仲谷和彦, 柏倉紀子, 黒木悟 ほか、【原著】採尿後の経過時間と温度が尿検査に及ぼす影響 『日本農村医学会雑誌』 2016年 64巻 5 p.789-797, doi:10.2185/jjrm.64.789
  7. ^ がん診断、尿1滴で=線虫の習性利用−10年後の実用化目指す・九大など”. 時事ドットコム (2015年3月12日). 2015年3月12日閲覧。
  8. ^ “尿1滴で短時間・安価高精度に早期がんを診断!” (PDF) (プレスリリース), 九州大学, (2015年3月12日), http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2015/2015_03_12.pdf 2015年3月12日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]