ヴィクラント (Vikrant) はインド海軍の航空母艦。現在インド海軍が推進しているADS(Air Defence Ship,防空艦)計画の1番艦でインド初の国産空母である。STOBAR空母であり、同級2隻を含めた計3隻の建造が予定されている。 艦名の「Vikrant」とは先代と同じくヒンディー語で「勇敢な」「強い」の意味である。艦のモットーも、先代から継承している[2]。 建造の経緯[編集] 元々「先代ヴィクラント」の後継艦として推進されていたが、1990年ごろに予算不足で立ち消えになった国産空母建造計画がベースである。建造計画が白紙になった後、先代「ヴィクラント」が退役しインドの保有空母が「ヴィラート」1隻のみとなったことによる洋上航空兵力の低下を受け、建造計画を見直した上でADS(Air Defence Ship, 防空艦)計画として復活し、IAC-1(Indigenous Aircraft Carrier 1、国産空母1号)の計画名で建造されることとなった[5]。 当初は満載排水量17,000トン程度の軽空母を建造する計画だったが、度重なる計画見直しにより最終的には満載排水量37,500トン(40,000トン説有り)の、通常動力型としては比較的大型の空母に拡大した。また当初、艦載機にはハリアー IIを想定していたが、後にMiG-29Kを搭載するSTOBAR方式の空母に設計が変更された。これはインド海軍のSTOVL機運用経験や「ヴィクラマーディティヤ」の導入経緯が影響していると言われている。 2004年に建造契約が締結され[3]、2005年4月11日からコーチの造船所で材料の切り出しが始まった。2008年に竜骨を据え付けて正式に起工する予定であったが、この時点で建造は遅れ始め、2009年2月28日に起工式が開催された[3]。ヴィクラントの建造は、インド海軍が2008年採択した「2015年から2030年までのインド海軍国産化計画」に基づき、コーチン造船所(英語版)をはじめ200社の国内企業が建造に関与する一大プロジェクトとなった[3]。起工後、ヴィクラントは2010年進水、2013年就役を予定していたが[3]、造船所のインフラが不十分なことや、ロシア製の鋼材の製作遅延による国産品への代替と生産ラインの用意、品質のばらつき[2]、さらに減速ギヤボックスをはじめとする各種搭載機器の不調[5] などにより、建造計画の大幅な遅延が発生した。2012年6月には、他の船の建造のためドックを空ける必要があり、建造途中でドックより引き出された。2013年8月12日にヴィクラントの進水式が行われた[6]。 しかし、この時点では飛行甲板などの艦上構造物はおろか船体後部も未完成であったため、隣の整備用ドックに移されて建造が進められ、2015年6月10日に改めてドックアウトした。以降、艤装作業が進められたが、当初は326億1000万ルピーだった建造費が2015年半ばに6倍の1934億1000万ルピーにまで高騰している[5]。艤装品の調達に時間がかかり[1]、2014年には2019年の就役に延長された。その後もロシア製艤装の調達遅れから、2016年11月の会計検査院の見解では、完成に2023年まで延びる可能性が指摘された[2][3]。 2019年11月には追加資金の投入で工程の加速が図られ[3]、12月に乾ドックで行われる作業が完了した[7]。2020年2月には艤装の工事が完了し[3]、IAC-P71の主要な装備艤装などのマイルストーンを達成したとコーチン造船所は発表した。また同時に、主要なシステム等の試験を進めており、2020年末に海上公試を行うと発表されたが[7]、予定は順延された。2021年8月4日、南部ケーララ州沖で試験航行が開始され[8]、2022年の就役が予定されているが、配備先となるアンドラ州のヴァルシャ海軍基地の竣工が間に合わないため、付近の造船所の埠頭を仮の定係地にする予定である[1]。
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