プロポリス – Wikipedia
プロポリスで隙間が埋められた巣箱 巣に付着したプロポリス プロポリス(propolis)は、ミツバチが木の芽や樹液、あるいはその他の植物源から集めた樹脂製混合物である[1]。蜂ヤニともいう[2][3]。プロポリスという名前は、もともとギリシャ語で、「プロ(pro)」は「前」とか「守る(防御)」という意味を持ち、「ポリス(polis)」は「都市」という意味を持っている[4]。この2つの語が合わさったプロポリスは、「都市(巣)を守る」という意味がある[5]。 プロポリスは巣の隙間を埋める封止剤として使われている。およそ6 mm以下の小さな隙間のために使われ、より大きな空間は通常蜜蝋で埋められる。色はどの植物から取られたかに依存するが、最も一般的には暗褐色である。プロポリスは室温以上で粘着性がある。低温では硬く、非常に壊れやすくなる。 何世紀にもわたって、養蜂家らは、ハチは巣を雨や冷たい冬の風といった要素から守るためにプロポリスで巣の隙間を埋めていると推測していた[6]。しかしながら、20世紀の研究によって、ハチは通気性が上がる世界のほとんどの温帯地域の冬季に生き延びるだけでなく、繁栄もしていることが明らかにされた。 現在はプロポリスには以下のような目的があると考えられている[7]。 巣の構造強度の補強 振動の軽減 入口を塞ぐことによる巣の防御力の向上 巣への病気や寄生者の侵入の阻止、真菌や微生物の成長の阻害[8] 巣内での腐敗の防止。ハチは通常廃棄物を巣の外に捨てる。しかし、例えば小さなトカゲやネズミが巣内に侵入し、巣内で死んだとすると、運んで外へ捨てることは不可能である。このような場合、ハチは死骸をプロポリス内に閉じ込めることで、ミイラ化させ、無臭、無害とすることを試みる。 植物は、自らが傷つけられると、傷口を守るために樹脂を分泌し、また、新芽や蕾を病原性の微生物から守るため、それらへ抗菌作用をもった物質を送っている。ミツバチはこの抗菌作用を活用し、プロポリスを巣に塗ることで、温かく、湿度が高い巣の中でも細菌の繁殖を抑えて、巣を清潔に保つことができるようにしている[9]。植物由来の物質をミツバチが採集したものがプロポリスであるが、採集後ミツバチが新たに何らかの物質を加えている可能性も考えられている[2]。 プロポリスを集める性質を持つのは、木の洞などの中に営巣する閉鎖空間営巣性のミツバチのうち、セイヨウミツバチのみである。亜種のニホンミツバチを含むトウヨウミツバチなどはこれを集めない。同じ蜂産品であるローヤルゼリーや蜂蜜などに比べて採取量は少なく、人為的には合成ができない。 成分・性質[編集] 黒褐色のプロポリス プロポリスは、ミツバチが集めてくる植物を原料として作られるため、起源となる植物によって、黒褐色、暗緑色、赤褐色のものなど様々な種類がある。近年の研究により、産地や起源植物によって特有成分が大きく異なることが明らかになっている。 一般にプロポリスは樹脂・バルサム(55%)、ワックス(30%)、油性物質(10%)、花粉(5%)で構成される。成分は、微量のものを含めるとおよそ300ないし400にのぼるといわれている[10]。 起源植物の多くがポプラであるヨーロッパ産や中国産のプロポリスには、主な成分としてフラボノイドが含まれている[1]。一方、キク科バッカリス属のアレクリン・ド・カンポ(Baccharis dracunculifolia)を起源とするブラジル産プロポリスには、主にアルテピリンCをはじめとする桂皮酸誘導体、フラボノイドが含まれている。ブラジル産プロポリスは、中国産と比べ、アルテピリンC(桂皮酸誘導体)量は約7500倍、バッカリン(桂皮酸誘導体)量は約2500倍、6‐メトキシケンフェライド(フラボノイド)量は約25倍であるという分析結果も報告されている[11]。
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