うみねこのなく頃に – Wikipedia

うみねこのなく頃に』(うみねこのなくころに)は、同人サークル07th Expansionが製作し、ショップなどの流通販路で商業販売している同人ゲームである。略称は「うみねこ」。タイトルは『うみねこのく頃に』と、「な」を赤文字で表記する。

2007年夏のコミックマーケット72で第1作が頒布された。以降半年ごとに発表されており、最終話が2010年12月31日に発売されて本編は完結した。本項では、これを元に展開されている、漫画、アニメーション作品などについても述べる。

07th Expansionの第一作目である『ひぐらしのなく頃に』の血脈を受け継ぎつつ、全く別の世界設定の作品になっている。ミステリ小説の名作「そして誰もいなくなった」のストーリーを下敷きにしながら、「嵐の孤島」「遺産を巡る争い」「洋館」「連続殺人」「予告状」「肖像画の碑文」「謎の怪人物」「不可解な怪現象」など、典型的なクローズド・サークルものの本格推理小説のオマージュが多数盛り込まれている。

シナリオおよびキャラクターデザインを担当する竜騎士07は今作が公式に発表される以前から、『ひぐらし』に続く次回作について「同じ舞台を何回も巻きもどして繰り返していく、それらを重ねて見ることで一本のシナリオでは見えないものが見えてくる」という“多層世界もの”とすることを早くから明言している[4]。なお、今作では「推理をしても解かせる気など全くない。それでも魔女の仕業だと認めずに立ち向かう、あなたを屈服させるために用意した」とあらかじめ断りを入れており[5]、「難易度の上昇を図っている」と述べている。

また、本作では自分の力で考えた読者のみが真相に辿りつけるよう、簡単に人に説明が出来る(すぐにネタバレできる)ような明確な答えの出し方はしないとも述べている[6]。実際、本編のラストであるepisode8においても、作中における現実と創作(作中作)の境界は非常に曖昧なままであり、「何が真実で、どこまでが現実であるか」「何が(作者の想定する解答において)解くべき、解ける謎なのか」は読者の考察に委ねられている(ただし、竜騎士07自身は「考えることを止めなければ真相に辿り着くことはでき、実際に辿り着いた人もいる」としている)。これについて竜騎士07は「自力で真相に辿り着いた人の名誉を守るため」としている[7]

ただし、これらはあくまで作者である竜騎士07の主張であり、公式の解が発表されないという作品の特色上検証は不可能であるということを踏まえておく必要がある[注釈 1]。また後述のヘンペルのカラスの項にあるように、用語に関しては原義から離れた使用法をされているものもある。

2016年から2017年まで、MangaGamerにより出題編・展開編・黄金夢想曲†CROSSのSteam版が配信された。文章は原作準拠、新規立ち絵と英語モードが追加されている。

メディアミックス[編集]

本作を原作とした、コミックス、小説、テレビアニメなどが展開されている。コミックス第1巻の発売と合わせ、公式サイトで本作の無料体験版が公開された。体験版は『ひぐらし』と同じように第1話にあたる『Episode1 Legend of the golden witch』が全て収録されている。

2008年から2015年まで、スクウェア・エニックスの複数の月刊漫画雑誌に本編と外伝のコミカライズが連載された。

テレビアニメは2009年7月から12月まで、Episode1からEpisode4までの物語が全26話で放送された。

講談社BOXレーベルで原作者による小説版が2009年から2018年まで刊行された。

2010年12月16日にはコンシューマ機のPlayStation 3 (PS3) に移植された『うみねこのなく頃に 〜魔女と推理の輪舞曲〜』が発売され、2011年12月15日には同じくPS3に『うみねこのなく頃に散』を移植した『うみねこのなく頃に散 〜真実と幻想の夜想曲〜』が発売された。2011年10月20日と2011年11月17日には『うみねこのなく頃に 〜魔女と推理の輪舞曲〜』をPlayStation Portableに移植した『うみねこのなく頃に Portable』が発売された。2021年1月28日には、PlayStation 4(PS4)・Nintendo Switchにて、PS3版2作品の8エピソードに加え初コンシューマ化の「翼」「羽」「咲」のシナリオを収録した『うみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲~』が発売された。本作には対戦格闘ゲーム「黄金夢想曲†CROSS」をプレイできるDLコードが同梱される。発売当初は新規シナリオをプレイするためにはスキップ機能を使うしかなかったが、Ver 1.02にてシナリオアンロック機能が追加された[8]

ゲームシステム[編集]

製作スタッフの前作『ひぐらしのなく頃に』と同じく、「選択肢のないサウンドノベル」であり、ゲームというより電子小説に近い形態となっている。選択肢ではなく、プレイヤー自身が謎解きに挑むというプレイスタイルが推奨されていることも、『ひぐらし』と共通する。

連作のシリーズであり、2010年12月時点で第8作まで発表されている。シリーズの各作のタイトルには『うみねこのなく頃に episode1 – Legend of the golden witch』というように、ナンバリングとサブタイトルが付けられている。また、シリーズを通じた物語は前編(出題編)と後編(展開編)に分かれており、Episode1からEpisode4までの4編が前編にあたる。Episode5からは後編となり、タイトルは『うみねこのなく頃に散』(うみねこのなくころにちる)となる。なお、新Episodeのソフトにはそれまでの過去Episodeを全て収録して発売するという形態がとられており、Episode4のソフトがあれば前編(出題編)を全てプレイすることが可能である。後編(展開編)についても同様で、最新作であるEpisode8のソフトにはEpisode5、6、7の内容が同梱されている。

各Episodeでは本編ストーリーを読了した後に、タイトル画面に「Tea Party(お茶会)」と呼ばれる項目が新たに加わり、ここからサイドストーリーを閲覧することができるようになっている。また、お茶会を読了するとタイトル画面に「????」という項目が加わり、第二のサイドストーリーの閲覧が可能である[注釈 2]

あらすじ[編集]

時は、1986年10月4日。舞台となるは、大富豪の右代宮(うしろみや)家が領有する伊豆諸島の六軒島。年に一度の親族会議を行う為に、当家の親族達が集結しつつあった。一見和やかに、久しぶりの再会を楽しむ親族たち。

しかし、島で待っているのは「当主死亡後の財産分割問題」という、親族同士に暗雲を呼び込む議題。かつて当主が、島に隠れ住んでいるとされる魔女ベアトリーチェから、資金調達の担保の為に授けられたとされる10トンの金塊を巡って、長男の横領を疑う親族たち。それに対して、親族たちの困窮を見透かすかのように、反撃に出る長男。さらに余命の迫った当主は、自らの命だけでなく、親族郎党・資産の全てを生贄として捧げ、最愛の魔女ベアトリーチェの復活を願っていた。

そして、まるで彼らを閉じ込めるかのように、島は台風によって外部から隔絶され、巨大な「密室」と化してしまう。魔法陣が描かれた殺人現場から、次々と新たな犠牲者が出ていく中、欲望と疑心の渦巻く六軒島に、魔女ベアトリーチェからの予告状が続々と届けられていくのであった。

はたして、これらは人間の起こした連続密室殺人なのか、それとも魔女の魔法によるファンタジーなのか。

各エピソードのあらすじ

ストーリー解説[編集]

本シリーズは、孤島、六軒島(架空の島)の洋館を舞台にした連続殺人事件を軸にしたミステリーである。1986年10月4日から5日の六軒島で資産家一族右代宮(うしろみや)家とその関係者が次々と殺害されるという物語が、魔女たちが見守る中、異なる内容で繰り返し語られ、その真相が議論される。作中で発見される死体の多くは密室内で残虐に装飾されており、魔女ベアトリーチェが魔法で殺人を犯したと説明される。物語は虚実に満ちており、何が真実であるかは不明確なままにされる。以下に物語の表面上の筋に基づいて説明する。

魔女のゲーム[編集]

作中の連続密室殺人事件は、黄金と無限の魔女ベアトリーチェ(以下、ベアト)が推理ゲームのために作り出した世界、ゲーム盤上の出来事、劇中劇である。六軒島の18人の人々はゲーム盤に囚われ、魔女が新しいゲームを始めるたびに事件の2日間を繰り返させられる。また、六軒島はシュレディンガーの猫のはいった箱(猫箱)に例えられ、その箱の中の真実が外部に知られない限り、無限の可能性が共存しつづけると説明される。

主人公は事件の当事者の一人である青年、右代宮戦人(うしろみや ばとら、右代宮家当主の次男と先妻との子)。彼は一族の中でただ一人、魔女の存在を認めず否定したために、幻想の世界に呼び出され、ベアトの主催する推理ゲームに参加させられる。このゲーム上でベアトは魔女による不可解な密室殺人事件の物語を語ることで、自身が真に魔女であることを証明しようとする。一方で戦人は頑なに認めず、人間とトリックで全てを説明しようとする。当初、戦人は一族を解放するために魔女を全否定しようとするが、しだいに魔法への理解を示していく。ついには真相に至ったとされ、自らゲームを主催し、ベアトの真の目的である戦人との恋の成就を叶えさせる。

ベアトと戦人のゲームは他の魔女たちの興味を引き、観劇の対象になる。奇跡の魔女ベルンカステルは魔女の敗北に賭け戦人を支援するが、真実の無配慮な暴露を求め戦人と対立する。絶対の魔女ラムダデルタはゲームの永遠の引き分けに賭け、しばしば戦人に肩入れする。

12年後(1998年)[編集]

作品の舞台は1986年の六軒島にとどまらず、12年後の1998年の場面も挿入される。1998年の現実世界において、右代宮一族が大量死亡したことは事実として扱われる。また、ベアトが語るのと同様の魔女殺人事件の物語がボトルメールで発見されており、さらにネット上で事件の真相を巡る議論や、模倣による新作発表がなされている。ただし、警察の調査では事故と断定されており、右代宮絵羽(うしろみや えば、長女、戦人のおば)が生還している。

事件当時、母の実家に預けられ島にいなかった右代宮縁寿(うしろみや えんじぇ、戦人の腹違いの妹、18歳(事件当時6歳))は、当時のことを何も語らない絵羽を真犯人と疑い、絵羽が亡くなると事件の真実を求める旅に出る。1986年の物語と1998年の物語はしばしば交錯し、1998年の縁寿はベルンカステルに導かれ幻想の世界で1986年の戦人と対話する。

登場人物[編集]

六軒島(ろっけんじま)
伊豆諸島の中に含まれる、全周10キロ程度の小さな島。
以前は6時間ほどの船旅を経る必要があったが、最近になり近隣の新島には飛行機が離着陸するようになったらしく、そこから漁船で30分ほどの距離にある。また、島全体が右代宮家が所有している私有地である為、右代宮家とその関係者以外でこの島を訪れる者はいない。
船着場と屋敷以外には施設はなく、浜辺と森林などは開発されずに残っている。船着場から本館までの道のりは、かなり曲がりくねった長い坂道になっている。六軒島の大部分を占める広大な森には魔女ベアトリーチェが住んでおり島を支配していると言われ、使用人たちから畏れられている。
右代宮家 本館
本館は、地上3階・地下1階の本格的な洋館である。1階の玄関前には、魔女ベアトリーチェの肖像画があり、黄金の隠し場所とされる碑文が記されている。当主の書斎近辺は実験による悪臭がたちこめることもあり、親族たちの不評を買っている。また、書斎のドアノブには魔除けとされる装飾が施されている。
渡来庵(とらいあん)
通称「ゲストハウス」と呼ばれており、本館の隣に建造されている。
元々は蔵臼が高級リゾートホテルとして開業しようとしていたが、事業計画の凍結により現在では客人用の宿泊施設として使用されている。
親族らの宿泊の際には主にこのゲストハウスが利用されており、概ね好評のようである。
肖像画の碑文
右代宮家の本館1階にある玄関広間には、魔女ベアトリーチェの巨大な肖像画が2年前より掲げられている。その下の碑文には、黄金の隠し場所とされる暗号文が刻まれている。
魔女の貴賓室
金蔵により、立ち入り厳禁とされている客室。
誰も使用することはないため、金蔵の愛する魔女ベアトリーチェの為の部屋だと言われている。そのため、当主と同格の扱いとして常に清掃がされている。
バラ庭園
本館前の傾斜にはかなり大規模なバラ庭園が造られており、使用人達によって管理されている。
元々は素朴な庭園だったが、蔵臼のリゾート化計画に伴い見事なものへと変化した。
同じ種類のバラではなく、様々な種類のバラで彩られている。
鎮守の社
船で六軒島に至る際に見える、鳥居と祠。祠の中には霊鏡が納められている。
夏に紫色の雷により岩礁ごと社が破壊されたと言われていて、現在は無くなっている。
太古の昔には、六軒島は「小豆島」と呼ばれて畏れられていた。その名の由来は「悪食島」であり、暗礁が多くて海難事故が絶えず、悪霊が住み着いて人々の魂を食らっていると思われていた。そこに旅の修験者が社を作り、鎮魂をしたことで収まったらしい。
開かずの礼拝堂
本館から少し離れた位置にあり、数分ほど森を歩いた場所にある。
かなり古い建物であり、一族は金蔵から礼拝堂に近寄ることを固く禁じられている。入り口には施錠がなされており、鍵は1つだけしかない。
九羽鳥庵(くわどりあん)
六軒島の原生森の中にある隠れ屋敷。
その存在は家族にも秘密にされ当主の金蔵に近しいごく一部の人間にしか明かされていない。
かつて金蔵が「ベアトリーチェと呼ばれる愛人」を住まわせていたと言われている。

用語解説[編集]

本作品中には、古典的な洋館ミステリーやゴシックホラーが持つ不気味な雰囲気を演出するため、様々なキーワードやアイテムがちりばめられている。

六軒島大量殺人事件
1986年10月4日 – 5日にかけて、六軒島で起こったとされる右代宮一族惨殺事件。
世の好事家たちからは、「魔女伝説連続殺人事件」とも呼ばれる。
『うみねこのなく頃に』はこの六軒島大量殺人事件の謎を解く物語である。
右代宮(うしろみや)
日本を代表する大富豪の一族。
戦前に養蚕で財を成した名家だったが関東大震災で没落。それを現在の当主である右代宮金蔵が持ち前の才能と強運で再興させた。
右代宮家は震災でほとんどの一族が亡くなったため、今では金蔵とその子供、孫だけが右代宮の一族となる。
親族会議
右代宮金蔵の子供たちは右代宮本家の財産の融資を受けて独自の事業を起業しているため、年に一度、金蔵が住まう六軒島に集まって当主への事業報告を行う。これを右代宮一族では「親族会議」と呼んでいる。
ベアトリーチェの黄金伝説
右代宮金蔵が若い頃に「魔女ベアトリーチェ」から貸し与えられたという10トンの金塊。
金蔵はこの黄金を担保にして莫大な資金を調達し、成功を収めていったという。最高純度の純金インゴットは、鋳造には高度な技術力が必要とされる。鋳造元・銀行名などの刻印がなく、右代宮家の家紋のみが刻まれている。
肖像画
ベアトリーチェを描いた巨大な肖像画。
右代宮家当主の金蔵が魔女ベアトリーチェの存在を一族郎党に信じさせるために自分の館の玄関に飾らせた。
ゲーム中ではこの肖像画に描かれた絵が何らかの原因を切っ掛けに変化するという演出がされることがあり、本作の謎の1つになっている。
碑文
上記肖像画の下に設置された石碑に刻まれた碑文。暗号詩の形をとっている。
ベアトリーチェから貸し与えられた10トンの金塊の隠し場所を示しているとも、金蔵は碑文の謎を解いた者に当主の座を譲るつもりだとも、様々な噂が流れているが、金蔵自身は碑文については一言も語っていない。実のところ謎自体はそれほど難解ではなく少し頭をひねれば分かる程度にすぎない。解答通りに礼拝堂のレリーフを動かせば10トンの金塊が手に入る。
黄金郷
上記碑文に記されている理想郷。
碑文によると、魔女は選ばれたものを黄金郷に招待し4つの宝を授けるとある。
右代宮の親族の中には、黄金郷とは10トンの金塊の隠し場所の比喩だと信じている者もいる。
魔女の手紙
親族会議の1日目に「黄金の魔女ベアトリーチェ」を名乗る差出人から親族一同に送られてきた手紙。
全てのエピソードでの連続殺人は、この手紙が親族たちの前で読まれた後に開始されているため犯行予告とも取れる。金蔵所有の片翼の鷲の紋章がついた封筒に、当主の証である指輪による封蝋がされており、この手紙が右代宮家当主の言葉と同じ権威を持つことを示している。
手紙の内容は、魔女ベアトリーチェが金蔵に貸し与えた黄金の利子を回収するためにこれから右代宮家の全てを奪うということと、碑文の謎を誰かが解けば利子回収はストップし、10トンの黄金と右代宮家の全てが碑文を解いたものに与えられるというものである。
また、連続殺人が始まってからも、生き残った者たちを煽るかのような文が書かれたさらなる手紙が次々と届けられてくる。
「19人目」
六軒島に閉じ込められた人数は18人。
『うみねこのなく頃に』の物語では、この18人の中に犯人がいるのか、それとも未知の「19人目」が存在してその人物が殺人を犯しているのかが、推理の重要な焦点となっている。
密室
本作品ではミステリー作品としてみても稀有なほどに「密室」の概念が頻出する。
殺人事件の多くは密室によって行われ、また、嵐に閉ざされた島自体も密室(クローズドサークル)として描かれている。
ウィンチェスターライフル
西部劇などによく登場するライフル銃。金蔵が所有しており、連続殺人が起こってからは生き残った者の護身用の武器となる。
テレビドラマ『拳銃無宿』で登場した、銃身と銃床を極端にカットしたカスタムタイプが有名であり、作中に登場するのもこのタイプである。
チェス
『うみねこのなく頃に』ではチェスをモチーフにした演出が多数挿入されている。
ベアトリーチェや金蔵は連続殺人をチェスのゲームに見立てた発言を繰り返しており、エンドロールやTIPSでは「魔女の棋譜」という形で被害者リストが表示される。
煉獄の七杭
柄に悪魔の意匠が施された小型の杭。太いアイスピック状の形状をしており騎兵のランスにも似ている。
六軒島大量殺人事件では碑文の内容に見立てられ、多くの死体にこの杭が突き刺されている。
作中での魔法的な解釈によると、7つの大罪を象徴する、七対の魔力を持つ杭とされる。煉獄の七杭は術者の命令に従い、望む獲物の望む部位に正確に打ち込まれる。また、威力は命中部位によってコントロール可能。これらの特徴によってニンゲンの犯人では不可能な殺人を成すことができる。非常に強力な武器だが、7つの大罪を犯さない者や強い魔力耐性を持つ者は、攻撃対象に指定できない。
黄金の蝶
ベアトリーチェの化身であるとも言われる、謎の発光をする蝶。
夜間の見回りをしている使用人が遭遇することがあるらしく、畏れられている。また、蝶を追いかけて大けがをし、辞めた使用人もいた。
親族の序列
右代宮家では血縁の順序により序列が決まっており、それに従ってテーブルの席が決められている。序列は当主である金蔵がトップで、以下、金蔵の子、金蔵の孫、子の配偶者と続く。同一ランクの中では、金蔵の子4人の長幼に準拠する。
現在の序列は、上位の者から順に金蔵、蔵臼、絵羽、留弗夫、楼座、朱志香、譲治、戦人、縁寿、真里亞、夏妃、秀吉、霧江となっている。本来楼座の夫が座るべき席には、金蔵の主治医である南條が座っている。
片翼の鷲
右代宮家において、限られた者だけに着用を許されている鷲の模様。
右代宮姓の中では、金蔵から真里亞までが何らかの形で身に纏っている(ただし、直系の血族のみで、夏妃ら配偶者には許されていない)。源次・紗音・嘉音については、使用人でありながらも金蔵の厚い信頼を受け、例外的に片翼の鷲を許されている。各人それぞれ、翼のある部位・模様・枚数などが異なっている。
家具
右代宮家での使用人の蔑称。
使用人は生きた家具のようなものにすぎず、人間以下の存在であるとする前時代的かつ差別的な考え方からきている。
メッセージボトル
六軒島大量殺人事件の詳細な経緯が書き記されているとされる謎の紙片。
紙片はワインボトルに詰められ、メッセージボトルとして近隣の島に流れ着いていたのが発見された。紙片には「右代宮真里亞」の署名がされており、事件が魔女によって起こされたとも捉えられる荒唐無稽な内容が書かれている。この手紙の発見により、事件の神秘性が飛躍的に高まり、六軒島事件は世界中の好事家たちから「魔女伝説連続殺人事件」と呼ばれるようになった。

作品の多層性[編集]

前作『ひぐらしのなく頃に』では物語の各編ごとがどういう関係になっているかということが重要な要素となっていたが、今作では前作以上に複雑な多層構造が形成されている。

各エピソードのつながり
今作のそれぞれのエピソードはどれも1986年10月4日から5日の六軒島での物語を描いたものである。それぞれのエピソードはパラレルワールド的な関係であるように見えるが、後述するメタ世界からの視点では連続した繋がりがあるようにも語られている。
メタフィクションとしての構造
今作では、本編の主人公である「右代宮戦人」が、島の伝説に語られる魔女や悪魔達と共に各エピソードの物語を観劇しながら、事件の真相について論戦を繰り広げるというシーンが随所に挿入されている。
この論戦シーンでは「物語の登場人物達が、自分の出演している物語のフィクション性について議論している」というメタフィクションの要素が色濃く押し出されており、戦人は自分が出演しているこの物語が現実的なトリックで推理可能なミステリー作品であると主張し、魔女達はこの物語をなんでもありのファンタジーであると主張している。
(以後、魔女と戦人が論戦している世界を「メタ世界」と仮称する)
今作は物語世界で発生する六軒島での殺人事件の描写と、メタ世界の論戦の描写が同時進行して描かれ、時には混ざり合うという複雑な構造をもって描かれている。
幻想描写
今作では、メタ世界の魔女が物語世界で現実に起こった描写をプレイヤーに対して隠し、代わりに暫定的な状況説明として一見虚構としか思えないファンタジー的な描写をプレイヤーに見せているという設定により、物語自体が現実と虚構とが入り混じった多層的なものとなっている。

物語の世界がどのような多層構造になっているのか、また、なぜこのような多層的な世界設定が存在しているのかなどは、プレイヤーが挑むべき主要な謎の1つであり、エピソードが進むたびに世界の秘密が段階的に明かされていく。本作でのプレイヤーの立場は「各エピソードにおける殺人事件を魔女ではなくニンゲンの仕業と推理すること」とされているが、この虚実入り混じった多層的な世界設定をどう解釈するかについてはプレイヤーの自由な推理に任されている。

これら複雑な多層構造は本作における作風の特徴となっていると同時に、推理の難易度を大幅に上昇させる要因となっている。一方で、後述する「赤文字システム」や「探偵権限」など、謎解きの強力な手助けとなる要素も多数存在する。

作品設定[編集]

思考理論[編集]

今作のメタ世界においては、「推理」は魔法とみまごうばかりの不可思議な力を持つ。推理によって現実が改変されたり、推理が文字通りの「言葉の刃」となって敵を傷つけることさえある。そのような特殊な作風もあってなのか、今作のキャラクターたちが行う推理は、通常の本格ミステリー小説の探偵が行うような演繹や帰納などとは全く異なる独自の思考方法に則ったものがいくつか存在している。

チェス盤思考
「チェス盤をひっくり返すように、物事をイメージする」という思考術。ゲーム理論を愛好している霧江が愛用している。「ちゃぶ台をひっくり返す」のひっくり返すではなく、180度回転させて相手側と自分側を入れ替えると言う意味での「ひっくり返す」である。チェス盤をひっくり返してみる(=相手側に立って考える)と、自分側からは思いもよらなかったことが分かるというもので、彼女の昔からの口癖である。主人公である戦人も、この理論に感銘を受けており、劇中にてしばしばこの論理を用いる。
前提条件として、相手の立場・状況や性格・能力、さらにはゲームの勝利条件が明らかであることが必要であり、相手が必ず最善手を指すことを前提に理論を展開することから、最善手を指さない相手の場合には、この理論はまったく成り立たない。
悪魔の証明
メタ世界での論戦における思考ルールの一つで、「完全な反証ができない限り、あらゆる仮説は認められる」というもの。
本作のメタ世界での論戦では「悪魔の証明」は魔女側の基本戦術として使われている。戦人が殺人事件に魔法などは関与していないと主張しても、事件は人間によって行われたという決定的な証拠が発見されない以上は、戦人は魔法説を否定できないのである。ただし、同時に、戦人は悪魔の証明を逆手にとって「事件が人間によって起こされた可能性は誰にも否定できない」と主張することもできる。このためメタ世界の論戦の実態は、真実を見つけ出すということよりも、自分の仮説(真実とは異なっていてもよい)を相手に認めさせることに近いものとなっている。「悪魔の証明」のルールの元では、相手の仮説に飲まれて先に心が折れた方が敗北となる。
上記「悪魔の証明」に付随する形で存在するメタ世界の思考ルール。「相手の仮説に完全な反証ができれば、自分の仮説を証明する義務なく自動的に勝利になる」というもの。「悪魔の証明」のルールだけでは決して心が折れない2人が論戦すると千日手になって永久に決着がつかなくなるため、「ヘンペルのカラス」による決着のルールが存在する。
完全な反証というものは現実の世界ではとても難しいものであるが、メタ世界では後述する「赤き真実」を使用することでそれが可能となっている。
作中の説明では「“妾が聡明である”という事実を知るだけで、全人類は愚かであることの何十億人分もの証明が直ちに終了してしまう」としているが、これは本来のヘンペルのカラスでは証明することはできず、対偶としても正しくない。
赤き真実
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メタ世界においては、キャラクターたちは自分の発言を「赤文字」のテキストで表示することが可能である。ただし、実行できるのは「物語において真実であること」のみであり、虚構が混じった内容は赤文字で表示することはできない(ただし、嘘さえ雑じっていなければ、あえて一部の情報を伏せたり、相手の誤解を誘うような表現を使うことも許される)。赤文字は自分がこれから語ることは真実であるということを対戦相手に手っ取り早く伝えるための話術であり、つまりは“一切の疑問の余地なく真実であり、反論は許されない”ということになっている(唯一これに対抗できる措置としては、後述の「青き真実」だけである)。魔女はこのルールを「赤き真実」と呼んでいる。ゲーム的には「赤文字システム」とも呼ばれ、現実と虚構が入り混じっているこの作品においては、赤文字はプレイヤーに対して与えられる重要なヒントでもある。
赤き真実は対戦相手の希望的仮説を叩き潰す強力な攻撃手段であるが、一方で真実を隠しておきたい場合は多用できない。また、手詰まりを招くような事柄にも使用できない。例えば「魔女と魔法は実在する」と赤で示すと、証明不要であるがゆえに戦人を屈服(納得)させることができず、なおかつ反論も許されないため、結果としてニンゲンも魔女も指し手が無くなってしまう。
戦人が「伝家の宝刀」と呼んだことから「剣」に象徴され、赤文字でテキストが表示されると同時に、推理を赤い剣によって文字通り「切り裂く」ような描写をされることもある。
作中の魔女は赤文字で記された内容を絶対の真実であると主張しているが、一方で物語の作者である竜騎士07は赤文字の真実性について「作者の立場」から保障する気はないとも語っており、赤文字を信用するかしないかは最終的には読者が決断することだと示唆されている[9][出典無効]
復唱要求
自分で立てた仮説を突きつけ、魔女に対してそれを赤文字で復唱するように要求すること。赤文字で復唱されれば自分の仮説は真実であることが証明される。また、死体が本人であるか、密室の状態は完全か、など事実関係の確認にも使用される。
ルール外の話術であるため強制力はなく、魔女は復唱要求を拒否することもでき、「なぜ拒否したか」について理由を述べる義務もない。しかし、復唱せずに拒否したという事実から戦人は何かヒントをつかむ場合がある。ただし、「復唱できなかった」「復唱できるが、あえてしなかった」の判断が常に求められるため、迷いを生むこともある。
青き真実
上記復唱要求を含め、ニンゲン側には赤文字を強制する術がない。しかし「悪魔の証明」が有効なメタ世界において、反論なき仮説は真実となる。つまり「魔女否定説」に対して、魔女側には反論の義務が生じている。その部分に関し、ルールを明確化したものが青き真実である。
戦人や縁寿などのニンゲン犯人説に属する陣営のキャラクターは、メタ世界において「魔女説を否定する仮説」(一部では「相手の仮説を否定する仮説」)に関係する文章のみ「青文字」で表示することができる。そして青文字で表示されたテキストに対して、魔女側は赤文字で反論する義務が発生する。エピソードの最後(ゲーム盤時間で10月6日0時1分)までにニンゲン側陣営が唱えた青文字に魔女が反論できなかった場合、ニンゲン側陣営の勝ちが自動的に決定する。
メタ世界では戦人が使う青き真実は、異端の魔女を磔にするための楔としても象徴される。ゲーム中では青文字でテキストが表示されると同時に魔女の推理を青き楔によって文字通り「穿つ」ような描写がされることもある。
黄金の真実
そのゲームのゲームマスターにしか使用できない神なる真実であり、「金文字」により表示することが可能である。赤き真実とは異なる方法により紡がれるが、その力は赤き真実と同等である。時に劣るが、時に勝る。しかし、作者は「うみねこのなく頃にEpisode5真相解明読本」にて「ルールを理解していれば誰でも使用することができる」と発言している。
面による推理
今作において戦人およびプレイヤーにとって有効であるとされている思考方法。たった1つの有力な推理だけにこだわり続けるのでなく、旺盛な想像力で出来る限り様々な仮説を同時に展開していこうというもの。このような思考方法を作中では「的の中心点に対して矢が1本でも当たれば良いのならば、たった1本の矢に全てを賭けるのでなく、的の面全体に何本もの矢を放って、そのうちの1本が当たればよい」という比喩で「面による推理」と呼んでいる。
ノックス十戒
天界大法院の天使たちが用いる異端審問の戒律。物語世界に「存在してはならない」ものを十の条文で規定したもの。
天界大法院の天使たちは、この条文を赤き真実で唱えることができる。物語世界中で条文に違反している事象は存在を否定され「幻想描写」であったことにされてしまう。十戒による存在否定は上述した「悪魔の証明」を上回る力を持つ。
ノックス十戒が「物語世界に存在してはならない」とする事象は、フェアな本格ミステリーの世界で存在してはならないとされている事象である。具体的には、「探偵」に発見できない証拠、隠し扉、隠し通路の存在や、未知の道具や人物、超自然的な探偵方法などである。
ノックス十戒は第1条から第10条まであり、現実の「ノックスの十戒」と類似した内容となっているが全く同一ではない。特に、第5条が欠番となっているところが大きく異なる。
探偵
この物語において謎を暴く手助けとして用意された特別な存在が「探偵」である。物語世界においてのニンゲン側キャラクターが探偵になることが可能。探偵キャラクターの決定は、メタ世界におけるニンゲン側陣営が「探偵宣言」を行い、物語のゲームマスターが認めることにより受諾される(ただし、ヱリカ登場以前のゲームでは、戦人が「探偵」だったと赤文字で示されている)
「探偵」は、その物語中において捜査を誤ることはない。現場検証を行えばそれを邪魔されることはないし、探偵に発見できない隠し部屋や通路は存在しない。この物語において探偵が行う役目とは「どのような秘密がどこに/誰に隠されているか」を推理することであり、探偵が調べた場所や人に探偵が疑っていた通りの秘密が隠されていればそれは「必ず」暴かれる。探偵が調べた場所や人に探偵が疑っていた秘密が発見されなければそんな秘密は「必ず」存在していないのである。
また、探偵キャラクターの視点から一人称で語られた文章は幻想描写が混じらないという特徴がある。つまり探偵は「信頼できない語り手にならない」わけであり、地の文で嘘をつくことが許されている『うみねこ』においては、プレイヤーの推理の強力な手助けとなる。
リザイン
チェス用語で「投了」を意味する言葉。作中では最終的な敗北宣言ではなく、相手の一つの仮説を否定しきれないまま論戦を終える時に宣言する。
ニンゲン側では「魔法」がトリックで説明しきれない場合など、魔女側では復唱要求や青文字に即時返答できない(したくない)場合などに「リザイン」を宣言することで一時論戦を打ち切り、ゲーム盤上の状況を進める。
ゲームの最終的な勝敗は「相手を屈服させること」で決定するので、場面ごとのリザインはあまり重要視されない。

魔法理論[編集]

六軒島の事件においては魔女や魔法の影が常にちらついているが、これらは曖昧模糊としたものではなく、明確な理論や思想の元に存在するものとなっている。この事から、魔法と自称されるものの正体を探ることもプレイヤーに求められている推理要素の1つになっている。

魔法
魔女や悪魔が使う超自然的な力のこと。不可能を可能にする万能の力のようにも見えるが、実際にはいくつかの魔法大系に分かれており、系統ごとに得意とする魔法が異なるようである。また、反魔法力のある者たちの前では魔法は使えない。

「無限」
魔女ベアトリーチェの持つ魔法大系にして称号。作中では「一人を“無限に”殺す力」ともされており、無限の魔法を使えば、殺したものを生き返らせてはまた殺すことが可能である。死者を生き返らせるという意味では後述の称号「反魂」と類似するが、この魔法では死者を生き返らせたままにはしておけず、最終的に必ず殺さなくてはならない。
「黄金」
魔女ベアトリーチェの持つ魔法大系にして称号。過去に10トンもの黄金を生み出したとされる。また、本編中では「黄金郷」と呼ばれる理想郷の伝説が語られており、「黄金の魔女」の称号を持つベアトリーチェは、魔法の儀式を完成させることで六軒島の住人たちを黄金郷へ招待することができるとされている。
「奇跡」
魔女ベルンカステルの持つ魔法大系にして称号。事象を何度も繰り返すことで、確率が完全な0%でない限りは必ず自分の思ったとおりの結果を導き出すことができる。
例としては、スゴロクでサイコロの目が6になるまで何度も振りなおすことを「奇跡」の魔法という。
「絶対」
魔女ラムダデルタの持つ魔法大系にして称号。努力が必ず報われるようになる魔法であり、努力に応じただけの結果がもたらされる。強固な意思の力があれば、どんな不可能なことでも自分の思い通りの結果が導かれる。
「千年」
多くの魔女たちが持つ称号。千年(もしくはそれ以上)の長き時を生きることができることを表す。あまりに長く生きていると退屈により滅びることがあるらしく、退屈を避けるために刺激を求める魔女も多い。中にはニンゲンをいたぶって退屈を紛らわすものもいる。
「原初」
魔女マリアの持つ魔法大系にして称号。想像したものをゼロから創造する魔法。
「反魂」
魔女エンジェ・ベアトリーチェが習得しようとした魔法大系。文字通り死者を蘇らせる魔法。
「真実」
探偵古戸ヱリカが習得しようとした魔法大系にして称号。「真実に堪える」魔法。
「観劇」
魔女フェザリーヌの持つ魔法大系にして称号。メタ世界のさらに外側から『うみねこのなく頃に』の世界を観測することができる。
魔女
魔法の使い手のこと。男の場合は魔術師と呼ばれるが本質は変わらないようである。
ニンゲン
魔女や魔法と言った幻想の世界と関わりが薄い者たちのこと。カタカナで書かれる。
反魔法力
魔法を信じようとしない力。多くのニンゲンが持ち、魔女やそれに類する者からはたびたび「毒素」と称される。反魔法力が高い場所では魔法は効果を発揮しないため、本作においては「魔法を信じない者の前では、魔女は魔法を使えない」という法則が存在している。
魔法を信じようとしない者に魔法を信じさせるためには、「ニンゲンでは不可能なことが行われた痕跡を残しておき、それを目撃した者が『ここで魔法が使われたんじゃないか』と思ってしまうようにする」という方法しかない。その痕跡というのが本作で頻発する「見立て殺人」である。
対魔法抵抗力
魔法的脅威に対抗する力。数値で表されることもあり、これが極限まで高まった場合は神話級魔法攻撃も通用しなくなる。
召喚術
異界から幻想の住人たちを呼び出して、自分の命令に従わせる魔法。本編中に出てくる多くの魔女が使用できる。
カケラ
魔女たちの中でも「航海者」と呼ばれる上位の存在が認識している特殊な概念。カケラとはいわゆる平行世界のようなもののことらしく、可能性の数だけカケラは存在する。航海者たちはカケラを自由に移動することができる。
シュレディンガーの猫箱
量子力学の有名なパラドックスの1つ。量子力学の世界では素粒子レベルの現象は人間が観測するまではあらゆる可能性が交じり合っている状態だという考え方があるのだが、その考え方だと、「ランダムな確率(本来は放射線の発生)で毒ガスが出る箱の中に猫を入れた場合、箱の中の猫が死んでいるか生きているかは箱を開けて中を確認するまでは決定されない」という奇妙な論理がまかり通ってしまうというもの。
魔女によると、1986年10月6日の六軒島は物理的にも魔法的にも外界から隔離されており、「猫箱が開けられる」まではどんなデタラメな虚構も否定しきれないとされ、それゆえに本作のテキストには虚実が混ぜられている。
猫箱理論は、魔女にもニンゲンにも有効である。戦人はメタ世界で見せつけられる直接的な魔法描写に反論できなかったが、猫箱が開けられていないゲーム盤上ではそれが魔女側の「主張(可能性の一つ)」にすぎず、ニンゲン犯人説を否定する根拠にならないとして、以降の論戦を立て直した。
ゲーム盤
無限の魔女にして黄金の魔女であるベアトリーチェが作り出した魔法概念。「カケラ」とは似て非なるもの。「ゲーム盤」は1986年10月4日から5日の六軒島を再現した擬似世界とでもいうべきものであり、『うみねこのなく頃に』の多くのエピソードはこの魔女のゲーム盤上で行われている舞台劇のようなものとされている。メタ世界に登場するキャラクターたちは、物語世界を文字通りのゲーム盤のように俯瞰できる。
メタ世界ではゲーム盤はチェスに似たものとして描写され、魔女たちは物語世界で起こる事件の様子をチェス用語で比喩することも多々ある。
ゲームマスター
ゲーム盤を作り出すことができる魔女・魔術師のこと。ゲームマスターとなった魔女・魔術師はゲーム盤上のほぼ全てのキャラクターを「駒」として自由に行動させることができる。そして、メタ世界に閉じ込めたニンゲン側プレイヤーと推理合戦を行うために、「駒」を利用してゲーム盤上の世界に不可能殺人事件を演出しなくてはならない。魔女と推理合戦をすることになるメタ世界のニンゲンもまた、自身を「駒」としてゲーム盤の世界で動かすことができる。
密室の状態、人物の配置などもゲームマスターが決定するが、実は根本的な設定を「完全に反論不能な状態」にすることはできないため、魔女たちは魔法幻想というミスディレクションを多用する。

スタッフ[編集]

07th Expansionとしては今回初めて、オープニングムービーを導入している。テーマソングは志方あきこ。また、漫画『びんちょうタン』などを手がける江草天仁が、肖像画デザインとして外注で参加している。

オープニング曲[編集]

「うみねこのなく頃に」(EP1 – 4)
作曲・編曲・歌 – 志方あきこ / 作詞 – みとせのりこ

  • 2008年8月15日 コミックマーケット74にて先行発売
  • 2008年8月29日 アニメショップ各店、amazon.comにて販売開始
「オカルティクスの魔女」(EP5 – 6)
作詞・作曲 – 志倉千代丸 / 編曲 – 上野浩司 / 歌 – Ayumu

  • 2009年11月26日 アニメショップ各店、amazon.comにて販売開始
「霧のピトス」(EP7 – 8)
作詞 – 佐倉かなえ、E.Kida / 作曲・編曲 – ラック眼力、dai / 歌 – 木野寧
「誓響のイグレージャ」(PS3/PSP・魔女と推理の輪舞曲/Portable)
作詞・作曲 – 志倉千代丸 / 歌 – Asriel(KOKOMI)
「イナンナの見た夢」(PS3・真実と幻想の夜想曲)
作詞・作曲 – 志倉千代丸 / 歌 – Zwei
「白金のエンピレオ」(咲)
作詞 – 佐倉かなえ、ラック眼力 / 作曲・編曲 – dai、ラック眼力、xaki / 歌 – 本木咲黒
「重ね合わせの猫箱」(PS4/Switch・猫箱と夢想の交響曲)
作詞・作曲 – 志倉千代丸 / 歌 – 佐々木李子

作品一覧[編集]

ゲーム作品[編集]

原作[編集]

本編の各エピソードは以下の通りである。

うみねこのなく頃に(問題編)
1. Episode1 – Legend of the golden witch
(2007年夏・コミックマーケット72発表/体験版として公式サイトで公開されている)
2. Episode2 – Turn of the golden witch
(2007年冬・コミックマーケット73発表)
3. Episode3 – Banquet of the golden witch
(2008年夏・コミックマーケット74発表)
4. Episode4 – Alliance of the golden witch
(2008年冬・コミックマーケット75発表)
うみねこのなく頃に散(展開編)
5. Episode5 – End of the golden witch
(2009年夏・コミックマーケット76発表)
6. Episode6 – Dawn of the golden witch
(2009年冬・コミックマーケット77発表)
7. Episode7 – Requiem of the golden witch
(2010年夏・コミックマーケット78発表)
8. Episode8 – Twilight of the golden witch
(2010年冬・コミックマーケット79発表)

移植版[編集]

PlayStation 3 (PS3) 版 / PlayStation Portable (PSP) 版
アニメ版とほぼ同じ声優陣によるフルボイスと、江草天仁とFFCによる新たなキャラクターデザインにより表現される。「原作を再現すること」を基本方針としており、原作と同じく選択肢は存在しない。前作『ひぐらし』の移植版『ひぐらしのなく頃に祭』にあったような新シナリオも存在しないが、本編と異なる結末の制作予定はあった[10]。PS3版とPSP版の違いはエピソード収録数のみで、内容は同じ[11]

  • 『うみねこのなく頃に 〜魔女と推理の輪舞曲(ロンド)〜』(PS3:2010年12月16日発売) – EP1から4を収録。
  • 『うみねこのなく頃にPortable 1』(PSP:2011年10月20日発売) – EP1・2を収録。
  • 『うみねこのなく頃にPortable 2』(PSP:2011年11月17日発売) – EP3・4を収録。
  • 『うみねこのなく頃に散 〜真実と幻想の夜想曲(ノクターン)〜』(PS3:2011年12月15日発売) – EP5から8を収録。
過去にはPSP用ソフトとして、EP5・6を収録する『うみねこのなく頃にPortable 3』、EP7・8を収録する『うみねこのなく頃にPortable 4』の発売が発表されていた[12]が、未発売に終わっている。メーカーはアルケミスト。
携帯アプリ版
タイトーがiアプリ・EZアプリ(BREW)・S!アプリ(3G)の3キャリアで、Episode1の携帯電話アプリを2009年に配信。
iPhone / iPod touch版
アイビーから2013年3月27日に発売。楽曲は含まれていない。
完全版
  • 『うみねこのなく頃に咲(さく)』(Windows:2019年10月4日発売) – 全エピソード(オールインワンパック)に加え、新規シナリオ「我らの告白」「Last note of the golden witch」を収録。
  • 『うみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲(シンフォニー)~』(PS4・Nintendo Switch:2021年1月28日発売) – PS3版2作品の8エピソードに加え、初コンシューマ化の「翼」「羽」「咲」のシナリオを収録。対戦格闘ゲーム「黄金夢想曲†CROSS」をプレイできるDLコードを同梱。メーカーはエンターグラム。発売当初は新規シナリオをプレイするためにはスキップ機能を使うしかなかったが、Ver 1.02にてシナリオアンロック機能が追加された[13]

派生作品[編集]

黄金夢想曲
『うみねこのなく頃に』のキャラクターによる対戦格闘ゲーム。2010年12月31日コミックマーケット79にて頒布。

漫画[編集]

本編の漫画版は、『ガンガンパワード』(スクウェア・エニックス)Vol.10(2007年12月発売号)よりEP1が連載開始(同誌の休刊後は『月刊ガンガンJOKER』に移籍)されたのを皮切りに、『月刊ガンガンJOKER』、『月刊Gファンタジー』、『ガンガンONLINE』にて出題編・展開編の漫画化作品が連載された。基本的に原作に忠実であるが、EP7には原作で明かされなかった明確な解答が追記されたシーンがあり、特にEP8には原作に唯一選択肢があり再現不能であること、及び担当漫画家の提案から大幅にストーリーが変更され、原作では明かさなかった真相含め「ヒントも答えもすべて」書くとしている。

本編の漫画化作品[編集]

  • 出題編
    • うみねこのなく頃に Episode1 – Legend of the golden witch(作画:夏海ケイ 月刊ガンガンJOKER連載)全4巻
    • うみねこのなく頃に Episode2 – Turn of the golden witch(作画:鈴木次郎 月刊Gファンタジー連載)全5巻
    • うみねこのなく頃に Episode3 – Banquet of the golden witch(作画:夏海ケイ 月刊ガンガンJOKER連載)全5巻
    • うみねこのなく頃に Episode4 – Alliance of the golden witch(作画:宗一郎 ガンガンONLINE連載)全6巻
  • 展開編
    • うみねこのなく頃に散 Episode5 – End of the golden witch(作画:秋タカ 月刊ガンガンJOKER連載)全6巻
    • うみねこのなく頃に散 Episode6 – Dawn of the golden witch(作画:桃山ひなせ 月刊Gファンタジー連載)全6巻
    • うみねこのなく頃に散 Episode7 – Requiem of the golden witch(作画:水野英多 月刊少年ガンガン連載)全9巻
    • うみねこのなく頃に散 Episode8 – Twilight of the golden witch (作画:夏海ケイ 月刊ガンガンJOKER連載)全9巻
  • 外伝

4コマ漫画[編集]

  • うみねこびより。〜六軒島へようこそ!!〜(作画:楓月誠 まんが4コマKINGSぱれっとLite連載)2009年6月22日初版、ISBN 978-4-7580-8048-4
  • うみねこのなく宴に The party of the witches(作画:平こさか まんが4コマKINGSぱれっとLite連載)

コミックアンソロジー[編集]

クロスオーバー[編集]

  • うみねこのなく頃に EpisodeX ROKKENJIMA of Higurashi crying(作画:緋色雪 電撃G’s Festival! COMIC連載)全二巻
    • 本作と『ひぐらしのなく頃に』の世界が入り混じり、両作のキャラクターが共演する本筋から外れたゲーム。時系列はEpisode4のゲームが開始される頃。

小説[編集]

テレビアニメ[編集]

2009年7月から12月までテレビ神奈川などUHF各局ほかにて放送され、2010年1月からはBS11でも放送された。全26話。

原作の音楽がアレンジされて使用されている。また、アニメ『ひぐらしのなく頃に』第2期のように、公式ホームページでの次回予告配信を行っている(テレビ放送では、サブタイトルのみの簡単な予告がエンディングテーマ内で表示される)。

放送局によっては、一部のセリフに自主規制音が入ったり、一部のシーンにモザイク処理がされている。

各話のサブタイトルはチェス用語から取られている。

スタッフ(アニメ)[編集]

音楽[編集]

オープニングテーマ「片翼の鳥」
作詞 – 波乃渉 / 作曲・編曲 – 志方あきこ / 歌 – 志方あきこ
エンディングテーマ「la divina tragedia 〜魔曲〜」
作詞・作曲・歌 – じまんぐ
挿入歌「どっきゅん☆ハート」(第6話)
作詞・作曲・編曲 – DY-T / 歌 – 右代宮朱志香(井上麻里奈)

各話リスト[編集]

話数 パート サブタイトル 脚本 絵コンテ 演出 作画監督 総作画監督
1 episode I I opening 川瀬敏文 藤原良二 土屋浩幸 中島美子、清水勝祐 番由紀子
菊地洋子
2 II first move 名村英敏 平田豊 浅井昭人
3 III dubious move 志茂文彦 小林浩輔 前沢弘美
4 IV blunder 寺東克己 江島泰男 高橋敦子、金順淵
5 V fool’s mate 川瀬敏文 高村雄太 久保太郎 菊地洋子
6 episode II I middle game 平田豊 今岡大、清水勝祐 番由紀子
7 II early queen move 桃瀬まりも 小林浩輔 前沢弘美
8 III weak square[注釈 3] 志茂文彦 名村英敏 土屋浩幸 浅井昭人 番由紀子
菊地洋子
9 IV skewer 江島泰男 渡辺正彦 星野尾高広
10 V accept 川瀬敏文 桃瀬まりも 平田豊 中島美子、堀越久美子
11 VI back rank mate 高本宣弘 吉田俊司 山田裕子
12 episode III I castling 藤原良二 阿部達也 阿部達也、松村康功
13 II gambit 志茂文彦 咲坂守 小林浩輔 清水勝祐、金順淵
14 III positional play 川瀬敏文 森田宏幸 土屋浩幸 浅井昭人
15 IV isolated pawn 志茂文彦 寺東克己 平田豊 前沢弘美、渡辺奈月
16 V queening square 川瀬敏文 桃瀬まりも 吉本毅 ひのたかふみ、加藤万由子
17 VI promotion 志茂文彦 高本宣弘 小林浩輔 清水勝祐、中島美子
18 VII swindles 川瀬敏文 江島泰男 菊地洋子、金順淵 菊地洋子
19 episode IV I end game 桃瀬まりも 久城りおん 鷲田敏弥、星乃夏海 番由紀子
20 II zugzwang 志茂文彦 平田豊 高橋敦子
21 III prophylaxis 川瀬敏文 阿部達也 ひのたかふみ、中本尚子、松村康功
22 IV problem child 守屋竜史 川瀬敏文 土屋浩幸 小田真弓 番由紀子
菊地洋子
23 V breakthrough 志茂文彦 森田宏幸 小林浩輔 浅井昭人
24 VI adjourn 川瀬敏文 寺東克己 平田豊 谷口守泰、中島美子
25 VII forced move 志茂文彦 桃瀬まりも 江島泰男 番由紀子、高橋敦子 番由紀子
26 VIII sacrifice 川瀬敏文 久保太郎 前沢弘美、浅井昭人、菊地洋子 菊地洋子

放送局[編集]

DVD・Blu-ray[編集]

巻数 発売日 収録話 規格品番(DVD) 規格品番(BD)
初回版 特装版 通常版 初回版 通常版
Note.1 2009年10月23日 第1話 – 第2話 FCBP-0115 FG-8016 FCBP-0128 FCXP-0006 FCXP-0019
Note.2 2009年11月26日 第3話 – 第4話 FCBP-0116 FG-8017 FCBP-0129 FCXP-0007 FCXP-0020
Note.3 2009年12月23日 第5話 – 第6話 FCBP-0117 FG-8018 FCBP-0130 FCXP-0008 FCXP-0021
Note.4 2010年1月22日 第7話 – 第8話 FCBP-0118 FG-8019 FCBP-0131 FCXP-0009 FCXP-0022
Note.5 2010年2月24日 第9話 – 第10話 FCBP-0119 FG-8020 FCBP-0132 FCXP-0010 FCXP-0023
Note.6 2010年3月25日 第11話 – 第12話 FCBP-0120 FG-8021 FCBP-0133 FCXP-0011 FCXP-0024
Note.7 2010年4月21日 第13話 – 第14話 FCBP-0121 FG-8022 FCBP-0134 FCXP-0012 FCXP-0025
Note.8 2010年5月26日 第15話 – 第16話 FCBP-0122 FG-8023 FCBP-0135 FCXP-0013 FCXP-0026
Note.9 2010年6月23日 第17話 – 第18話 FCBP-0123 FG-8024 FCBP-0136 FCXP-0014 FCXP-0027
Note.10 2010年7月22日 第19話 – 第20話 FCBP-0124 FG-8025 FCBP-0137 FCXP-0015 FCXP-0028
Note.11 2010年8月25日 第21話 – 第22話 FCBP-0125 FG-8026 FCBP-0138 FCXP-0016 FCXP-0029
Note.12 2010年9月23日 第23話 – 第24話 FCBP-0126 FG-8027 FCBP-0139 FCXP-0017 FCXP-0030
Note.13 2010年10月22日 第25話 – 第26話 FCBP-0127 FG-8028 FCBP-0140 FCXP-0018 FCXP-0031
DVDセット
巻数 発売日 収録話 規格品番
DVDセットI 2010年5月26日 第1話 – 第8話 FCBP-9013
DVDセットII 2010年8月25日 第9話 – 第16話 FCBP-9014
DVDセットIII 2010年10月22日 第17話 – 第26話 FCBP-9015

CD[編集]

ラジオ[編集]

DJCD[編集]

関連商品[編集]

書籍[編集]

カードゲーム[編集]

Lycee
シルバーブリッツのトレーディングカードゲーム、Lyceeに参戦している。収録エキスパンションは、07th Expansion1.0など。

注釈[編集]

  1. ^ 2015年12月発売の『うみねこのなく頃に 最後で最初の贈りもの』では事実やトリックに関してある程度の提示がされており、「公式の解・作中での真実」自体は不明でも「動機・犯人候補・トリック」については検証しやすくなっている。
  2. ^ タイトル画面で表示される名称は「????」であるが、作者の竜騎士07はインタビューなどで「裏お茶会」という呼称を使っている。また、「????」がタイトル画面から選べるようになったのはEpisode2のソフト以降で、Episode1のみが収録されたソフトでは、複雑な操作を行わないと閲覧できない隠しモードであった。公式サイトで配布されているEpisode1の無料体験版では、タイトル画面から選べる仕様になっている。
  3. ^ 雑誌や公式サイトで発表されたサブタイトルは「week square」で統一されていたが、チェス用語のウィークスクエアの綴りは「weak square」が正しく、後日修正された。
  4. ^ 熱闘甲子園の放送中止で当初の放送枠で放送されなかったため。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • ブレインナビ 編『うみねこのなく頃に散 episode 5 真相解明読本』双葉社、2009年。ISBN 978-4-575-16483-1。
  • KEIYA『最終考察うみねこのなく頃に散 : Answer to the golden witch Episode 5-8』アスキー・メディアワークス、2011年。ISBN 978-4-04-870465-6。

関連項目[編集]

  • ひぐらしのなく頃に – 本作品の前に07th Expansionが作成したゲーム。本作との直接的なつながりはないが、ミステリーとオカルトの融合という点で類似した設定を持つ。
  • 悪魔の証明 – 本作における推理の前提となる考え方。「魔法やオカルトの存在は完全には否定できない」というもの。
  • そして誰もいなくなった – 本作のミステリー部分のモチーフに大きな影響を与えている推理小説。
  • 神曲 – 本作のファンタジー部分のモチーフに大きな影響を与えている叙事詩。
  • リドル・ストーリー – 本作の特徴として関連される。

外部リンク[編集]