ケイビラン – Wikipedia

ケイビラン(鶏尾蘭、学名:Comospermum yedoense (Maxim. ex Franch. et Sav.) Rausch.[1])は、キジカクシ科スズラン亜科ケイビラン属に分類される多年生の1種[4]。クロンキスト体系と新エングラー体系では、ユリ科に分類されていた[1][5]。古くから知られていた植物で、カール・ヨハン・マキシモヴィッチは江戸で得た栽培品種を研究して、Anthericum yedoensis Maxim.と命名した[5]。のちに松村任三は、ブルビネラ属(Bulbinella)のものと考えたが、牧野富太郎は詳しく研究して、1908年に新属(ケイビラン属、Alectorurus)の種であるとした[5]。この属名は、雄鶏を意味する[5]。種小名(yedoense)は、はじめ江戸で得た栽培品に命名したことによる[4]。和名は葉の形状が雄鶏の尾の羽根に似ていることに由来する[4][6][7]。別名が、ヤクシマケイビラン[1]。本属は本種の1種のみ[5]

草丈は高さ20-40 cm[4]。根生葉は左右扁平で2列互生し[4]、鎌状線形で長さ10-40 cm、幅10-25 mm、やや鎌形に曲がり先はしだいにとがり、基部に関節線がある[5]。花茎には狭い翼がある[4]。まばらな[5]円錐花序に白色-薄紫色で長さ5 mmの花をつける[4]。花柄に関節がある[5]。花は単性で[5]、雌雄異株[4]。花被片は6個、鐘形で平開せず下向きにつく[5]。雄花の花被片は長楕円形で、雄蕊6個は長く突き出て[4]、退化した子房がある[5]。雌花の花被片は卵状楕円形、大きな子房と短い雄蕊があり、子房は上位で3室、各室に2個の胚珠がある[5]。蒴果は球形で、直径3-4 mm、胞背裂開する[5]。種子は長楕円形で長さ2-3 mm、基部に白色の長毛がある[5]。花期は7-8月[4]

分布と生育環境[編集]

山地の絶壁の岩の隙間に張り付いて生育するケイビラン

日本の固有種で本州(紀伊半島)、四国、九州[4]にまれに分布する[5]。屋久島が分布域の南限[6]。九州や四国に多いが、紀伊半島の三重県の七洞岳などでも観察できる[8]。香川県小豆島でも見られる[9]。ソハヤキ要素植物のひとつとされている[10]

山地の岩や崖に生育する[5]。湿った[7]岩の上や割れ目に自生し、絶壁に張り付くことが多い[8]

種の保全状況評価[編集]

日本では環境省による国レベルでのレッドリストの指定を受けていないが[11]、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。阿蘇くじゅう国立公園、祖母傾国定公園で指定植物の一つに選定されていて、保護対象とされている[10]

ケイビランのイラスト

参考文献[編集]

  • 片野田逸朗『九州・野山の花-花トレッキング携帯図鑑』南方新社、2004年9月23日。

    ISBN 978-4861240232。

  • 門田裕一、畔上能力、永田芳男、菱山忠三郎、西田尚道『山に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年3月30日、増補改訂新版。ISBN 978-4635070218。
  • 川原勝征『屋久島高地の植物-世界自然遺産の島』南方新社、2001年8月20日。ISBN 978-4931376526。
  • 黒田豊年、金丸勝実、内田拓也『改訂版 三重県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド・改訂新版〉、2015年3月15日。ISBN 9784635024013。
  • 『日本の野生植物 草本Ⅰ単子葉類』佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫、平凡社、1982年1月10日。ISBN 4582535011。

外部リンク[編集]