トラック野郎・望郷一番星 – Wikipedia

トラック野郎・望郷一番星』(トラックやろう・ぼうきょういちばんぼし)は、1976年(昭和51年)8月7日公開の日本映画。菅原文太主演、東映製作・配給による「トラック野郎シリーズ」第3弾。

5億4300万円の配給収入を記録、1976年の邦画配給収入ランキングの第10位となった[1]

ストーリー[編集]

広島の台貫場で2人の警官(室田日出男、川谷拓三)に、ニヒル(松鶴家千とせ)が重量オーバーで摘発されていた。流行の「わかるかナ?」(本人の持ちネタ)で煙に巻こうとするが、火に油を注いでしまう。と、そこに「県警本部車両が事故」との無線が入る。「出世のチャンス」と警官たちは総出で急行し、台貫場を空にしてしまう。だが、それは一番星こと星桃次郎(菅原文太)、やもめのジョナサンこと松下金造(愛川欽也)のデマだった。二人の機転に感謝し、台貫場に渋滞を作っていたトラック群は次々と発車していった。

桃次郎とジョナサンが、次に向かう先は北海道。フェリーで三上亜希子(島田陽子)と出会った桃次郎は、またも一目ぼれをしてしまう。

釧路の漁港で、はまなすお涼こと浜村涼子(土田早苗)と揉め事を起こした桃次郎。その夜、港食堂「はきだめの鶴」で食事する彼の前に、お涼に惚れてる「カムチャッカ」こと大熊田太郎次郎左衛門(梅宮辰夫)が出現。お涼の代わりに喧嘩を買って出る。両者互角だったが、遅れて入港した船の積荷・生魚40トンを札幌市中央卸売市場へ急送する仕事が入り、勝負はハンドルでつけることに。「負けたら北海道を去れ」と言われ、桃次郎は「売り言葉に買い言葉」と受けてしまう。8時間はかかるという道のりだが、あと6時間しかない。20トンずつ積載したトラックでの夜の街道レースは、地元という利点を生かして近道したカムチャッカが勝利。

帰路、急に便意をもよおした桃次郎は、牧場の隅で排便をしようとするが、それがきっかけで三上亜希子と再会。静内町(後の新ひだか町)で三上牧場を経営していると聞くと、カムチャッカとの約束も忘れ乗馬の知識を詰め込み始める。

港食堂「はきだめの鶴」では、ジョナサンにお涼の弟・浜村紅夫(小倉一郎)と水屋(貨物利用業ブローカー)の鮫田(草薙幸二郎)が接近する。「斡旋料5%」という報酬にも「仲間のピンハネはできない」と一度は突っぱねるものの、「仲間の負担軽減になる」と言いくるめられ、承諾してしまう。

桃次郎はジョナサンとの仕事もそっちのけで亜希子の元に日参するようになり、ジョナサンとは喧嘩別れになる。三上牧場には生まれたばかりの仔馬がいたが、獣医の小宮(永谷吉見)も見放す重病だった。桃次郎の看病により、仔馬は見事に回復。感謝した亜希子は、仔馬に一番星にちなんで「ファーストスター」と名前をつける。

釧路でカムチャッカと再会した桃次郎は、お涼との仲を誤解したカムチャッカに再度の勝負を挑まれる。港での大喧嘩の果てにお涼がカムチャッカに愛を告白、カムチャッカと桃次郎も和解し、友人となった。

都はるみの大ファンであり「アンコ椿は恋の花」を熱唱しながらハンドルを握る、宮城県出身の宮城縣(吉川団十郎)。彼の運転するトラックに便乗し、ジョナサンの妻・君江と9人の子供は北海道を訪れ、ジョナサンと合流する。4トン半のジョナサン号では家族を運転席に乗せきれず、長男、次男、三男は荷台から景色を眺めることに。美幌峠や阿寒国立公園を観光した後、帰りも母子は宮城のトラックで川崎へ向かった。しかし、「トラックがタイヤをバーストさせ、崖下に転落、運転していた宮城も死んでしまう」というニュースが飛び込み、ジョナサンは激しく動揺。だが、君江は不意に陣痛が起こったため、子供たちと共に事故の前に車を降りていて無事だった。松下家に第十子・幸六郎が誕生。

桃次郎は、札幌市民会館で公演している都はるみの元を訪れ、宮城の供養をする盆踊り大会への参加を熱願する。支配人(南利明)は「スケジュールが詰まってる」と断るが、桃次郎の熱意に打たれた都はるみは承諾した。

桃次郎は盆踊り大会の成功を見届け、亜希子にプロポーズすべく三上牧場を訪れる。しかし、亜希子は小宮と結婚の約束をしており、結納も済んでいたのだった。そのきっかけを作ったのは「未熟でも努力する」という姿勢で仔馬を救った桃次郎の熱意ある行動だった…。

失意の桃次郎は、港食堂「はきだめの鶴」へ。そこでは、鮫田に400万円を持ち逃げされたジョナサンと紅夫が、仲間からつるし上げを食らっていた。「トラックを売って返済する」というジョナサンを止め、お涼は自分のトラックを売るといい、カムチャッカも「結婚したらお涼にトラックは要らない」と同意する。お涼は弟に鮫田を探し出すよう叱り付け、紅夫は食堂を飛び出す。

一件落着かに見えたが、「前金を鮫田に渡してある」と、荷主(河合絃司)が怒鳴り込んでくる。40トンの生魚を18時の札幌市中央卸売市場に間に合わさなければ、2000万円の損害が発生するのだ。だが、あと5時間しかない。「この炎天下ではバーストして宮城縣の二の舞になる」と、二の足を踏むトラック乗りたち。窮地に追い込まれるジョナサン。引き受けようとするカムチャッカを「(バーストで)再婚前に死なせる訳にはいかねえ」と桃次郎は殴り倒し、一番星号は札幌へ向かって爆走する。

警察の追跡を蛇行運転で幻惑し、道路外へ追いやりクラッシュさせる一番星号。カムチャッカは無線でナビゲートを試みたが、電波の状態が悪く、一番星号は古い吊橋へ。速度を落とし進行する一番星号。渡りきったところで、重量に耐え切れなかった吊橋は落ちた。

バーストを心配するカムチャッカ、ジョナサンたちは、電話で進路上の拠点に連絡、タイヤ交換を指示する。しかしトイレの時間も惜しんで止まらない一番星号。カムチャッカの発案で「路面に水を撒く」という作戦を実行させる。ホースで、川からのバケツリレーで、道路に水を巻くトラック仲間たち。最後には「ダンプの荷台に搭載した水を、一番星号の前を走行しながら撒く」、という奇策まで行い、ついに時間ギリギリに荷を届けることに成功する。だが、市場の構内でバーストしてしまい、一番星号はバランスを失って激突。荷物は無事だったものの自走できなくなっており、迎えにきたジョナサン号が一番星号を牽引していった。

スタッフ[編集]

※「トラック音頭」は菅原・愛川によるレコード版は使用されず、都はるみ版が使用されている。振り付けを担当したのは2代目西崎緑。

同時上映[編集]

『武闘拳 猛虎激殺!』

参考文献[編集]

  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン全史: 1946-2002』キネマ旬報社、2003年、214-215頁。ISBN 4-87376-595-1。
  2. ^ 現・ユニバーサル ミュージック/ヴァージン ミュージック
  3. ^ *鈴木則文、宮崎靖男、小川晋『映画「トラック野郎」大全集:日本最後のアナーキー・プログラム・ピクチャーの伝説』洋泉社〈別冊映画秘宝 洋泉社MOOK〉、2010年。ISBN 978-4-86248-468-0。55頁に従いひらがな表記。
  4. ^ 『映画「トラック野郎」大全集:日本最後のアナーキー・プログラム・ピクチャーの伝説』、55頁。
  5. ^ 同上。
  6. ^ *杉作J太郎、植地毅『トラック野郎 浪漫アルバム』徳間書店、2014年。ISBN 978-4198637927。46頁。