管理所 (北朝鮮) – Wikipedia

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管理所（かんりじょ、관리소（クヮンリソ））とは朝鮮民主主義人民共和国の強制収容所。政治犯を収容する。

管理所は、北朝鮮（朝鮮民主主義人民共和国）で最も重い罪とされる「政治的犯罪」、多くは国家反逆罪、すなわち国家最高指導者三代（金日成・金正日・金正恩）への反逆や不服従の行為を犯したものを収容する強制収容所である。最も過酷で「この世の地獄」と呼ばれ、一般にメディアで話題にされる監獄である。管理所については日本にも多くの情報が入ってきており、詳細が判明している。一般には「政治犯収容所」と呼ばれるが、実際には経済犯でも収容される場合がある。

政治的な罪で告発されたり、政治的に信用できないと見なされた人びとが収容される管理所は、国家保衛省によって運営されている。政治囚は歴史的に家族も責任を負う連座制の原則を受け、有罪判決を受けた政治犯の近親者も政治的犯罪者とみなされ、抑留されてきた。しかし、1994年以降は、この家族的責任の原則はほぼ放棄されるにいたった[1][2]。

強制収容所は北朝鮮の中央部と北東部に位置している。それらは、外界から完全に切り離された人里離れた山の谷で多くの受刑労働キャンプを構成している[3][4]。囚人の数は、総数8万から12万人におよぶと推定されている[5]。耀徳強制収容所と北倉強制収容所では2つの区域、すなわち、一つは生涯拘束されることの決まった政治囚を収容する完全統制区域、もう一つは、囚人が最終的に釈放されることを漠然と望みながら長期刑に服す革命化区域とに分けられている。

囚人たちは、鉱業ないし農業において原始的な手段を用いて過酷で危険な奴隷労働に従事することを余儀なくされている。食糧配給はごくわずかなので、囚人たちは絶えず飢餓の危機に瀕している。これは、過酷な労働と相まって、膨大な数の死亡につながる。推定では囚人の4割もの人びとが栄養失調によって死亡している[6]。また、多くの囚人は労働災害、凍傷、拷問などに苦しんでいる。収容所には厳格な処罰制度があり、仕事の遅い囚人や命令に服従しない囚人は殴打されたり、拷問を受けたりする[7]。食糧を盗んだり、脱走しようとした場合、囚人たちは見せしめのため公開処刑される。

当初は約12の政治犯収容所があったが、一部は合併または閉鎖された。たとえば、咸鏡北道にあった穏城強制収容所（英語版）（第12号管理所）は、反抗に失敗しておよそ5,000名の囚人が殺害された1987年の暴動以後、閉鎖された[8]。今日、北朝鮮には政治囚のための強制収容所が6か所ある（下記参照）。収容所のほとんどは元囚人の証言にもとづいて記録されており、すべての収容所の経緯度を示す座標と衛星画像が利用可能である[注釈 1]。

管理所一覧[編集]

  • 強制収容所内の完全統制区域に収容されていた男女の表彰結婚（収容所内で労働功績を残した未婚の男女が年に数回無作為に選ばれ、1週間程度一緒に暮らす制度）によって1982年に价川強制収容所内で生まれた申東赫は、強制労働の労力としかみなされない無就学児であったが、2005年に収容所を脱出して中国経由で韓国に亡命した。その経緯は、『14号キャンプからの脱出』（英題 “Escape from Camp 14: One Man’s Remarkable Odyssey From North Korea to Freedom in the West“）に著された[注釈 2]。
  • 国家安全保衛部管轄の会寧強制収容所（第22号管理所）の警備兵だった1969年生まれの安明哲は、「政治犯は人間ではなく、犬・豚と思え」と教育されたと述べている[11]。彼は脱北後、韓国で回想録『北朝鮮絶望収容所』（原題『彼らは泣いている』）などを出版して話題となった。彼は、ある収容所で牛の糞の中から回収したトウモロコシの実を誰が食べたのかをめぐって争う収容所の子どもたちの話をした[12]。
  • 姜哲煥のような他の多くの元囚人もまた、北朝鮮の強制収容所における人権犯罪について詳細な証言をしている。

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ Lankov, Andrei (2014年10月13日). “The Surprising News From North Korea’s Prisons”. Bloomberg. https://www.bloomberg.com/view/articles/2014-10-13/life-beyond-north-korea-s-gulag 2017年5月1日閲覧。 
  2. ^ “”Escapee Tells of Horrors in North Korean Prison Camp”, Washington Post, December 11, 2008”. The Washington Post. (2008年12月11日). https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/10/AR2008121003855.html 2010年8月23日閲覧。 
  3. ^ “Country Reports on Human Rights Practices for 2011 Korea, Democratic People’s Republic of”. Bureau of Democracy, Human Rights and Labor Country Reports on Human Rights Practices for 2011. United States Department of State (2011年). 2011年8月3日閲覧。
  4. ^ McDonald, Mark (2011年5月4日). “North Korean Prison Camps Massive and Growing”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2011/05/05/world/asia/05korea.html 2011年5月5日閲覧。 
  5. ^ United Nations Human Rights Council Session 25 Report of the commission of inquiry on human rights in the Democratic People’s Republic of Korea A/HRC/25/63 page 12 (paragraph 61). February 7, 2014. Retrieved August 4, 2016.
  6. ^ “Report: Torture, starvation rife in North Korea political prisons”. CNN. (2011年5月4日). http://edition.cnn.com/2011/WORLD/asiapcf/05/04/north.korea.amnesty/ 
  7. ^ “The Hidden Gulag – Part Five: Summary of torture and infanticide information (page 148 – 154)”. The Committee for Human Rights in North Korea. 2010年9月14日閲覧。
  8. ^ ““5000 Prisoners Massacred at Onsong Concentration Camp in 1987”, Chosun Ilbo, December 11, 2002”. 2012年12月18日閲覧。
  9. ^ Determined from satellite images. “North Korea’s Hard Labor Camps”. The Washington Post. (2009年7月20日). https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/19/AR2009071902178.html 2010年8月23日閲覧。 
  10. ^ Estimated by former prisoners. “The Hidden Gulag – Part Two: Kwan-li-so political panel-labor colonies (page 25–82)”. The Committee for Human Rights in North Korea. 2012年9月14日閲覧。
  11. ^ 李英和（1999）p.9
  12. ^ National Geographic: Inside North Korea, aired on the History Channel in 2006, accessed on Netflix July 22, 2011

参考文献　[編集]

関連項目[編集]