オートマタ – Wikipedia
「手紙を書くピエロ」(レオポール・ランベール作 1900年) 右手が滑らかに文字を書くように動き、少し眠気が差したように目の表情が変化する。首が上下しランプの炎が小さくなると、はっと我に返るようにまた手紙を書き始めるという一連の動作をする。野坂オートマタ美術館所蔵品 オートマタ(英: Automata [ɔːˈtɑmətə] 複数形)、オートマトン(Automaton [ɔːˈtɑməˌtɑn] 単数形)は、主に12世紀から19世紀にかけてヨーロッパ等で作られた機械人形ないしは自動人形のこと。 本項で述べる人形は、日本の伝統的な機械仕掛けの人形をからくりと呼ぶのに倣うと、いわゆる「西洋からくり人形」に該当する。 概要と呼称[編集] オートマタは、言葉の原義としては「自動機械」のことであり、語源のギリシャ語「automatos」は「自らの意志で動くもの」というような意味合いを持つ言葉である。どういう条件を満たせばオートマタと呼ぶのにふさわしいかは、作られた時代背景や用途、特徴によっていろいろな種類があるがゆえに見解が分かれるところである。本項では主に、18世紀から19世紀にかけてのドイツやスイスの時計技術の革新と、ルネサンス以降のフランスが持っていたディレッタンティズムの複合によって作られた、動力がぜんまいばねによる人形状のものを中心に説明する。また、表記は「オートマトン」「オートマータ」などが同様の意味で用いられるが、学術用語との区別がつきやすく「人形」の意味で使うケースが多い「オートマタ」とする。 発祥と背景[編集] オートマタの起源は人形の起源にまでさかのぼる。娯楽のためだけではなく宗教的な儀式などに用いられた人形や仮面のなかには部分的に可動するものもあり、操作することにより伝承などの効果的な補助として使われていた形跡がある。こうした試みは、人間が自ら仮面をつけたり人形を操作するという動力によって動いていたが、機械的な仕掛けにより自動で動くという演出を付加することで、人形(ひとがた)信仰においてあたかも人形に魂が入っているかのように見せることができる。人形を作り、それが動く(動かす)というテーマはユダヤ教のゴーレムやギリシア神話のタロースでも明らかなように、人間にとっては根源的なテーマであり、創造主としての神への挑戦といった面も垣間見える。 一方、オートマタのもうひとつの要素である機械仕掛けは、単に人形の稼動部分を人間が直接動かすという段階を経た後、古代ギリシアにおいてより洗練される。アルキメデスの螺旋や同時期に発明されたといわれる歯車、サイフォン、水力、滑車などの技術が生まれる。アレクサンドリアのヘロンが作ったといわれるコインを入れると水が自動で出る装置やビザンチウムのフィロン[注釈 1]により、シンプルな仕掛けであるが自動装置と呼べるものが作られた。 ゼンマイとオルゴール[編集] 13世紀にはいるとオートマタの基本的な技術要素であるカムシャフトが文献に現れる。この時期には時計の製造技術も飛躍的に向上した。決められた時間に鐘を鳴らす仕組みが考えられ、その技術は教会に設けられた時計台の鐘を鳴らすオートマタに応用された。それまで時を知らせるのは鐘つき男の仕事だったが、鐘つき男を模したジャックマールと呼ばれる時計人形が代わりに鐘を鳴らした。この人形は人気を集め、動きや表情など多様化が見られた。14世紀末に作られたストラスブール大聖堂 の天文時計では高さ122センチメートルの雄鶏のオートマタが羽ばたいて時を告げた。1574年には第二の天文時計が作られ、ジャックマール以外にも天使や死神など宗教的なモチーフのオートマタが用いられた。 15世紀にはゼンマイによる蓄積できる動力が発展していく。これによって時計の小型化が可能となり、職人の増加や市場の拡大が進んだ。
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