速度計 – Wikipedia

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速度計(そくどけい)またはスピードメーター (speedometer[1]) とは、速度を計測するための計器のこと。鉄道車両、自動車、バイク、飛行機など多くの乗り物に速度計が装備されている。

速度計の種類は、車輪の角速度(単位時間あたりにどれだけ回ったか)から速度を求める速度計、空気や水といった流体との対物速度を測定するピトー管、軌道上の人工衛星から送られてくる信号を利用したGPS速度計、光や音の反射波との位相の違い、すなわちドップラー効果を利用したドップラー速度計などがある。

速度計の単位は、自動車やバイクや鉄道車両であれば時速、船舶はノット、航空機はノットまたはマッハ数で表されることが多い。

125cc超の自動二輪車については、速度計の設置根拠法である道路運送車輛法上は一般に言う自動車と同様の扱いとなるので、本項で言及する。道路交通法で自動車と同様の扱いを受ける第二種原動機付自転車については、#原動機付自転車の項目を参照のこと。

マイル毎時(外)とキロメートル毎時(内)が併記された速度計

日本における、国産小型自動車および普通自動車の速度計は大抵が160 – 180 km/h(日産の一部車種では190 km/h)まで目盛りが刻まれている。軽自動車やトラック・バスの場合は120 – 140 km/hまで刻まれているものが多い。125cc超の国産自動二輪車(オートバイ)は、たいていが180km/hまで目盛りが刻まれている。

ただし、日産・GT-Rや三菱・ランサーエボリューションなど、市販状態でサーキット走行や競技に対応する車種に関しては180 km/h以上の表示があり、これら以外でもチューニングカーなどではユーザーの必要に応じ、200km/hやそれ以上の表示のある速度計が取り付けられることもある。なお輸入車はメーカーによって様々であるので、表示に関しては一概には言えない。

国際的には速度無制限区間ある道路や130 km/h以上の最高速度が存在するが、日本の公道において指定できる自動車の最高速度の上限は、一般道においては80 km/h(法定速度の60 km/hを上回る標識による場合)、高速自動車国道および自動車専用道路では、大型および特定中型貨物自動車、また三輪の自動車が80 km/h、それ以外の自動車で120 km/hであり、新東名高速道路において最高速度140 km/hが要望されているが、これ以上の速度を出す事は道路交通法で禁じられている。そのため、法律上不必要な速度域まで刻まれている速度計を車輛に装備することについては否定的な意見もある。

なお、最高速度の上限を超える速度まで目盛りが刻まれている理由は諸説あるが、仮に最高速度の上限が80 km/hの大型貨物自動車などで、速度計の目盛りが80 km/hまでしか刻まれていないと、80 km/hでの走行時にメーターが振り切れてしまい著しく視認性が低下する、80 km/hを少しでも超えてしまうと現在の速度が表示できなくなってしまう、将来の最高速度引き上げに対応できなくなるという問題があり、普通自動車の場合も120 km/hまでしか刻まれていないと同様の問題がある他、サーキットでの走行で支障になる。また、輸入車への非関税障壁となる可能性があり、実際に速度警告音や大型車の速度表示灯が非関税障壁として保安基準から外された事例もある。

日本国内向けに販売されている国産車では表示の単位はキロメートル毎時 (km/h) であるが、マイル単位が主流の国ではマイル毎時 (MPH) で表されることも多く、キロメートル毎時とマイル毎時を併記した(デジタル表示の場合は単位を切り替え可能な)速度計もある。

取り付け位置は、大概の車種においてダッシュボードの運転席側上部か中央上部(センターメーター)、オートバイにおいてはハンドル中央部かカウル内に搭載されている。近年は、タコメーターや燃料計、水温計などの他計器類と一体化したコンビネーションメーターの形で搭載されている車種が多い。また、近年取り扱われている高級車や上級乗用車では速度計が機械からLEDを使用したデジタルメーターや液晶モニタ表示になったものもある(グラスコックピット参照)。

一般的には、トランスミッション出力側に装備されるドリブンギアにより車速を検出し、速度計に数値を反映する方式が挙げられる。なお、これには大きく分けて機械式(ドリブンギアと速度計をワイヤーにより連結し、回転信号を計器に反映するもの)と電子式(ドリブンギアから得られた回転信号をパルス信号に変換し、計器に数値として反映するもの)の2種類がある。

法規制[編集]

速度計は道路運送車両法第41条17号(自動車の装置)および道路運送車両の保安基準 第46条第1項(速度計等)により定められているとおり、法律上日本では必須の装備である(ただし、最高速度20km/h未満の自動車や被牽引自動車は除く)。ただ装備されていればよいというものではなく、走行中に運転者が容易に確認できる位置に設置しなくてはならず、また平坦な舗装路面での走行時において実速度と著しい誤差があってはならないものとされている[2]

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ただし、最高速度が35km/h未満の大型特殊自動車及び農耕作業用小型特殊自動車(例・農耕用トラクター)については、原動機回転計が速度計の代わりとして認められているため、速度計自体は必須とはならない場合がある。

原動機付自転車[編集]

原動機付自転車の速度計

第一種原動機付自転車(50 cc以下)の速度計は、大抵が60 km/hまで刻まれている。ただし、第一種原動機付自転車の法定速度は30 km/hであり、これよりも高い最高速度が指定されていても法定速度が適用されるため、これが上限となっている。第二種原動機付自転車(小型自動二輪車)の場合は、車種にもよるが100 km/h辺りまで刻まれている。なお、第二種原動機付自転車の法定速度は60 km/hであり、一般道では最高速度80 km/hまで引き上げられることがあるが、第一種も第二種も、自動車の場合と同じく公道走行においては事実上不必要な速度域まで目盛りが刻まれていることになる。

原動機付自転車は法令上、自動車とは別に定義されるものであるため、速度計についても道路運送車両法 第44条11号(原動機付自転車の構造及び装置)および道路運送車両の保安基準 第65条の2(速度計)により自動車の場合とは別に定められているが、法規制自体は自動車の場合とほぼ同一である。

鉄道車両[編集]

鉄道車両の速度計は、信号・ポイント・曲線での制限速度の確認などの安全面、列車ダイヤを正確に守る定刻性などで重要な計器であり、運転台の正面の一番見やすい位置に設置される。形としては丸形のものが多いが、横形ものも見られる。また、速度の検知は、車軸に小型の速度発電機を取付けて発生する電圧や周波数を計測する方式と駆動装置の歯車を磁気誘導でカウントする方式がある。速度表示の刻みについては、在来線の電車や気動車においては、普通・快速列車向けの多くが120 – 140km/hまで、特急列車向けの多くが160 – 180km/hまで刻まれている。

山手線などの自動列車制御装置 (ATC) の区間を走る電車の場合は速度計の周りに環状の車内信号表示灯が付いている。

新幹線は高速で走ることから地上の信号の確認が困難な為、全てATCになっており(山形新幹線・秋田新幹線のような直通する在来線を除く)、全車に車内信号表示灯が付き、大抵300 – 400km/hまで刻まれている。

近年、営業開始した車両では速度計が機械からLEDを使用したデジタルメーターや液晶モニタ表示になったものもある(グラスコックピット参照)。

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アナログ式電気計器の場合110mm角の広角度指示計を採用している場合が多い。

従来形の路面電車や、以前の東京メトロ銀座線の車両には速度計が付いていない。

車両によっては乗客向けの速度計を装備したものがある(かつてのビュフェ車や修学旅行用車両、名古屋鉄道の特急形車両など)。

古くから現在に至るまで、対気速度計 (ASI, airspeed indicator) と呼ばれる航空計器が広く使われている。これはピトー管を利用して計測した全圧と静圧を、全圧から静圧を引いた動圧を測定することにより、対気速度を求めるもので、この時の計器の指示は、航空機の近くの気流の乱れや、速度・姿勢・フラップの位置などで変わる、全圧・静圧系統の誤差と速度計自体の誤差を含んだ指示対気速度 (IAS: indicated air speed) であり、IASから、その誤差を修正した CAS(calibrated air speed, 較正対気速度)、CASから空気の圧縮性の影響を排した値に直したEAS(equivallent air speed, 等価対気速度)、さらに高度や温度の変化により空気の密度が変化することで速度計の指示が変化する誤差を修正したTAS(true air speed, 真対気速度)、があり、一般的な対気速度計で表示されるのはIASである。翼に発生する揚力を考える際など、機体の操縦において問題となるのは対気速度であり、たとえば失速速度や超過禁止速度などは対気速度で指示され、単発機と多発機では速度計は異なる。また、真対気速度計もある。

また、対気速度計には、目盛板の周辺にカラー・マークが付いており、その航空機のいろいろな速度限界を、共通の色標識で表示することにより、飛行中での安全の確認が簡単に分かるようにしている。

色標識の意味は以下の4つあり

  • 赤色放射線:運用禁止限界
  • 緑色弧線:常用運用範囲(フラップを上げて格納した飛行状態での常用運用範囲)
  • 黄色弧線:警戒範囲
  • 白色弧線:フラップ操作範囲(フラップが操作できる速度範囲) 

高高度や音速付近やそれを超える高速で飛行する場合の航空機では、高高度では温度の低下により音速が低下し、対気速度が音速に接近すると、機体の一部が音速以上となって衝撃波が発生する危険があるため、飛行中において、音速に対してどの程度の速さを知るマッハ計 (w:machmeter) を装備して対気速度計と別に持つか、あるいは、PFD (primary flight display) のような統合計器に集約されているか、または、対気速度計に高度により変化する音速に応じて、その航空機の最大運用限界速度を変えて指示する、赤白の斜縞に塗られた指針(Barber Pole)を装備した、最大運用限界速度計を装備している。また、飛行中でのエア・データ(気圧高度・対気速度・外気温度など)の計測が複雑になるため、計測した全圧と静圧や静圧の誤差を修正するセンサーからの電気信号をエア・データ・コンピュータに入力して計算された対気速度や最大運用限界速度を対気速度計に電気信号を送り出して指示している。

一方、航法(ナビゲーション)の際には地上に対する移動速度である対地速度 (GS, ground speed) が問題となる。周囲の空気自体が動いている場合、すなわち風が吹く中を飛行する際には、対気速度と対地速度とは異なる。特に、乱気流やジェット気流のような強い気流の中を飛ぶ場合には差が大きくなる。一般に長時間飛行すると対気速度で計算した距離と実際の飛行距離との誤差が大きくなる。この誤差を補正するために、古くからディレクショナル・ジャイロ(DG, 定針儀)による自立飛行技術が使われてきたが、近年では慣性航法装置が使用されたり、さらに現在ではグローバル・ポジショニング・システム (GPS) の一般化・低価格化により、ジャイロスコープよりもGPS速度計を搭載した航空機が多くなっている。

現在の多くの航空機はピトー管を利用した対気速度計と対地速度計との両方が搭載されているか、両者の機能を兼ね備える統合計器をもつ。

船舶の場合は航空機と同じように、接する水(流体)との速度差であればピトー管やドップラー速度計が使われるが、対流体と対地とでは速度表示に差が出るため、古くは星を観測し、方位磁針・海図などを駆使した航海術で自船の位置を割り出して速度を得ていた。現在では航空機と同じようにGPSで位置と速度を割り出す。

特に大型船舶の場合、接岸速度計と呼ばれる、港での接岸専用の速度計を持っているものがある。これはレーザーが反射する際のドップラー効果を使うもの、すなわちドップラー速度計が主流である。

かつては機械式の速度計もあったが、現在は磁石とセンサーを使用した電子式のものが主流で、サイクルコンピュータと呼ばれる。速度だけでなく、オドメーターなどの機能も兼ねる。

参考文献[編集]

青木晋、友田三八二「最新電力機器 電気計器」修教社書院、1938年。(p403 第十六章 速度測定器)

  1. ^ speed meterと記される場合もあるが、正しい英字表記はspeedometerである。
  2. ^ 道路運送車両法では、125cc以下の原動機付自転車以外の車両は自動車に含まれる。したがって、この法規制は一般にいう自動車だけではなく、125cc超の二輪自動車についても当てはまる。

関連項目[編集]

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