不足角 – Wikipedia
不足角(ふそくかく)とは、ユークリッド幾何学においては、多面体のある頂点について、その頂点の周りの角度の和が360°に不足していることを言う。あるいはより一般に多胞体について、胞のピークの二面角が真円に足りないものを言う。
全ての面が正五角形からなる正十二面体を考える。各頂点について正五角形が3つずつ集まり、正五角形の内角は108°だから、不足角は 360° − (108° + 108° + 108°) = 36° である。また頂点は全部で20個あるから、不足角の総和は 36° × 20 = 720° である。
他の正多面体についても同じ考え方を適用すれば、以下の表を得る。
デカルトの定理[編集]
不足角におけるデカルトの定理(英: Descartes’ theorem on total angular defect)とは、球と位相同型な、つまり穴のない多面体において、不足角の総和は常に 720°(
4π{displaystyle 4pi })に等しいという定理である(上表も参照)[1]。
より一般には、多面体のオイラー標数
χ=2−2g{displaystyle chi =2-2g}(ここで g は「穴の数」を表す)を用いて、不足角の総和は
で表される。
これはガウス・ボネの定理においてリーマン多様体が多面体であるときの特殊なケースであり、不足角はその頂点におけるガウス曲率に一致する。このとき多面体中のガウス曲率は頂点に集中しており、辺や面におけるガウス曲率は 0 となっている。
非ユークリッド幾何学における不足角[編集]
双曲三角形において、その角度の総和を A とすれば、全不足角は
π−A{displaystyle pi -A}で表される。
また球面三角形において、その角度の総和を A とすれば、全不足角は
A−π{displaystyle A-pi }で表される。
特筆すべきこととして、これらの三角形の面積はその全不足角[2]に比例することが示される。
関連項目[編集]
- ^ Descartes, René, Progymnasmata de solidorum elementis, in Oeuvres de Descartes, vol. X, pp. 265–276
- ^ 球面三角形の場合は球過量 (Spherical Excess) と称され、この量が球面三角形の面積に関係している事実はアルベルト・ジラールが彼の著書 Invention nouvelle en l’algebre において述べている。
関連文献[編集]
- Richeson, D.; Euler’s Gem: The Polyhedron Formula and the Birth of Topology, Princeton (2008), Pages 220–225.
- デビッド・S.リッチェソン『世界で二番目に美しい数式(上)』『同(下)』根上生也訳、岩波書店、2014年、頁未確認。
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