真珠母雲(しんじゅぼぐも、Mother-of-pearl clouds)は高度20~30km付近の成層圏にできる特殊な雲。極や高緯度地方で冬によく見られる雲である。非常に高高度にある雲のため、日没後も太陽の光を受けて輝く姿を見ることがある。真珠母雲の名は、その色彩が真珠母貝であるアコヤガイの内側に似た虹色をしていることより付けられた。ちなみに、 夜光雲とは生成過程も生成場所も異なる。 オゾン層の破壊に深く関連している雲であり、オゾンの生成や破壊のメカニズムを考える上での研究対象となっている。学術的には極成層圏雲(きょくせいそうけんうん、英語: polar stratospheric clouds, PSC)、極成層雲とも呼ぶ。 極成層圏雲とオゾン層[編集] 極成層圏雲は、低温であるほど発生しやすい。大気圏では、高度が高くなるほど紫外線が強いため、フロンやハロンが紫外線によって分解された塩素原子の量も、高度とともに増える。-70℃から-80℃にもなるような極地方の成層圏上空では、塩素原子や硫酸エアロゾルがラジカル反応によって硝酸塩や塩化水素を作り、固体(氷)となって凝結し極成層圏雲をつくる。この生成は冬季にピークを迎え、冬至を過ぎて太陽高度が上がり始め、気温が上昇してくると、今度は融解し始める。融解の際に、太陽光によって化学反応を起こし、硝酸に変わるとともに塩素原子ができる。この塩素原子がオゾンを破壊する直接の原因となる[1]。 極成層圏雲の組成[編集] 極成層圏雲には大きく分けて3種類の雲粒がある。霜点より2~6K高い温度でできる非球形の固体、霜点より2~6K高い温度でできる球形の液体、霜点より低い温度でできる半径1μm以上の固体に分けられる。 極成層圏雲を構成する主な物質は、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、水(H2O)の3つである。これらが硝酸エアロゾル(H2SO4・H2O)、液滴エアロゾル(H2SO4・HNO3・H2O)、氷(H2O)、硝酸三水和物(HNO3・3H2O)、硫酸四水和物(H2SO4・4H2O)となって存在している。 鮮やかな色に見える理由[編集] 鮮やかな色の真珠母雲 極成層圏雲がアコヤガイのように鮮やかな色をする理由として、雲を構成する雲粒の大きさが均一であることが考えられている。分かりやすく説明すれば、極成層圏雲は透明ガラス、普通の雲は曇りガラスに喩えることができる。 透明ガラスはどの部分でも光の反射のしかたは同じであり、反射角は入射角だけに関係するため、うっすらと鏡のように反射して写った像を見ることができる。曇りガラスはガラスを構成するそれぞれの粒子でそれぞれ光の反射のしかたが異なり、反射角はそれぞれの粒子の角度にも関係するため、鏡のように像を見ることができない。 極成層雲は雲粒の大きさが均一であるため、透明ガラスのような役割を果たし、加えて雲粒が粒であるため写真レンズのような役割も果たし、ニュートンリングのように色が並んだ模様を見ることができる。一方、普通の雲は雲粒の大きさがそろっていないため、彩雲などをのぞけば普段鮮やかに色づくことはない。 ^ 南極でオゾンホールが発生するメカニズム 気象庁
Continue reading
Recent Comments