ニホンカナヘビ – Wikipedia

ニホンカナヘビ (Takydromus tachydromoides) は、爬虫綱有鱗目カナヘビ科カナヘビ属に分類されるトカゲ。

日本(北海道、本州、四国、九州および周辺の島嶼、壱岐、隠岐、佐渡島、種子島、屋久島、五島列島)固有種[1]

全長18 – 25センチメートル[4]。鼻先から尾の先端までの全長は16 – 25センチメートル程度。尾は全長の2/3以上を占める[4]。鱗には光沢がなく、表面はザラザラして乾いた感じに見える。背面の鱗は特に大きく一枚ごとに1本の強い稜線があり、その後端は尖っている。これらの鱗が前後に重なって配列するため、背面全体を前後に走る隆条が形成される。これら背面の鱗は通常6列に並ぶため隆条も6本あり、両外側の隆条が最も強い。体側面の鱗は小さく明瞭な隆条もないが腹面の鱗は背面同様の大きさで弱い隆条と尖った後端をもち、横8列で首から尾の付け根までは20数枚を数える。四肢の鱗もやや大きく稜線があり、尾の鱗も長方形で稜線をもつため全体に隆条を形成する。

背面は灰褐色 – 褐色で腹面は黄白色 – 黄褐色。通常側面には鼻孔の直上から始まり、目・耳を横切り尾の付け根まで達する黒褐色の色帯と目の下縁から始まり耳の下を通って後方に伸びる同色の色帯があり、これら2本の色帯の間は黄白色の帯となっている。しかし時にはこれらの色帯が前肢の付け根あたりまでしかないものもある。

頭部下面には咽頭板と呼ばれる大きな鱗が左右4対並び、最後方のものが最も大きい。これらは下唇の小さい鱗の腹側にあるのが側面からも見える。目も耳もよく発達しており特に耳はニホントカゲに比べて大きく、色も黒っぽいためよく目立つ。四肢はよく発達してそれぞれ5本の指をもち、後肢の第4指は特に長い。後肢の付け根にある鼠蹊孔(鼠蹊腺開口)と呼ばれる小孔は通常2対あるが、時に片側や両側が3個になっているものもある。

低地から低山地にかけての草原や藪地などに生息し、民家の庭などでみられることもある[4]。基本的に昼行性であるが、盛夏では炎天下を避けるため専ら木陰や草本の茂み、石や建築物の隙間、といった日照の遮蔽物下で過ごし、積極的に姿を見せる時間帯は早朝や夕刻に集中する。地表を中心とする低い場所を徘徊する。高さ2メートル程度までは木に登ることもある[4]。そのため都市近郊の住宅地がブロック塀などで細分化されるとニホントカゲは個体群が細かく分断されて絶滅しやすいのに対しニホンカナヘビはこうした障壁を乗り越えて遺伝子交流を維持することができ、生き残りやすい。体温調節のために陽の当たるところで静止している姿もよく見られるが人影に驚くとすぐに草木の間などに身を隠し、またすぐに静止して様子をうかがうような行動をとる。ニホントカゲが石や倒木の下に隠れるのに対し、本種は茂みに逃げ込むことが多い。捕まりそうになると尾を自切することがあり、切れた尾が動いている間に逃げる。冬季になると日当たりのよい斜面の地中などで、休眠する[1]

昆虫やクモなどを食べる[1]。食性はおもに動物食であり、捕食者として昆虫やクモ、ワラジムシなどといった、陸生小型節足動物を捕らえて食べている。ただ、時としてそれらの死骸や落下果実を摂食する等、若干ながらスカベンジャーの性質も備える。飼育下では餌付けされることにより人工配合飼料も食べるようになる。

尾は再生するが再生した尾には骨がなく、時に二又になったものが見つかることもある。夜は茂みや葉上で眠る。

成体は春から夏にかけ交尾し、その際に雄が雌の頭部から腹部にかけてを咬むため交尾した後の雌の体にはV字型の咬み跡が残ることがある。5 – 9月に1回に1 – 8個の卵を、年に1 – 6回に分けて産む[4]。産卵は草の根際などに5月から8月頃にかけ数回行われ、一回の産卵数は2 – 7個程度。卵は白く、産卵直後は長径1.0センチメートル、短径0.6センチメートルくらいの楕球型。ニホントカゲとは違い卵の保護は行わない。卵は発生に必要な水分を周囲の土壌などから吸水して約1.5倍の大きさまで膨らみ約2ヶ月で全長5 – 6センチメートルくらいの幼体が孵化し、ほぼ1年で成体となる。幼体には色帯はなく、全身が黒褐色である。地方にもよるが、11月頃に地中に潜り越冬する。

捕食者としては小型の哺乳類や鳥類、ヘビ類などがある。モズの「はやにえ」にも本種が見られるほか、特にトカゲ類を好むヘビであるシロマダラは本種もよく捕食すると言われる。また幼体のうちはカマキリなどの肉食性昆虫にも捕食されるほか、まれに成体に共食いされることも確認されている。飼育下では冬眠中の個体がワラジムシに食われたケースもあるという。

人間との関係[編集]

分布は広く、種として絶滅のおそれは低いと考えられている[1]

関連項目[編集]